68 殲滅の炎は熱いようです
今回も戦闘回です。フレデリック君、かなりチートに無双します。
次の村の手前で、敵の本隊を見つけた。その数、およそ1600騎、きちんとした騎士の装備の者もいるが、ほとんどが野盗のような風体と装備だ。さすがに、襲撃した村の女達を連れているようなことは無かった。しかし、空の荷馬車が数台あったので、次の街か村でも同様に女達をさらうつもりなのだろう。
私は、上空からナフサが入った樽、いわゆる焼夷弾をばらまいた。引火材に衝撃が喰わって樽が次々に爆発炎上していく。水魔法では消すことができない高温の炎が敵部隊の上から広範囲に降り注いでいく。敵部隊は、縦に長い隊列だが、後ろから攻撃をはじめ、前まで焼夷弾をまいた後は、生き残った者達を狙っての各個攻撃だ。不発弾も、高熱で誘爆されていく。2往復したら、地上で動くものはなく、馬まで完全に炭になってしまった。真っ黒な油煙がひどく、何も見えないが、気配探知では生存する者はいないだろう。
さあ、あとは敵の先遣隊だ。おそらく、300騎程度だろう。ここから10キロ程先に大きな街があるが、さすがに街の城壁を突破することは300騎程度では難しいと思う。本隊が来るまで、城門の外で待機している筈だ。
奴らの後方、1キロ位の地点に着陸する。ここからは、歩いて行こう。ホワイトとシュナちゃんは、ここで留守番だ。そう思っていたが、シュナちゃんが異様に吠えている。どうやらバスケットから出してくれと言っているみたいだ。
「おとなしくしているんだよ。」
そう言いながら、バスケットから出してあげたところ、急に走り始めてしまった。
「あ、シュナちゃん!」
物凄い速度で走りながら、敵のいる方向に走っていく。まずい、このままではシュナちゃんが一番最初に接敵してしまう。そう思って、追いかけたが、なんと、シュナちゃんが白く光り始めた。光りながら、どうも大きくなっているような気がする。え、大きくなっている?そんな、バカな。シュナちゃんは2年以上飼っていても全然大きくならないとスザンナさんが嘆いていたが、急に大きくなるなんて。しかも、その大きさたるや、ホワイトいや普通の馬位の大きさはありそうだ。あ、飛んだ。大きくジャンプしたかと思うと、敵陣の中に飛び込んで行った。
突然のファングウルフのような犬?に飛び込まれた敵部隊は、大混乱だったが、かまうことなくシュナちゃんは、敵兵たちをその鋭い牙で殲滅していった。私は唯々驚いてみているだけだった。10分もしないうちに、敵の部隊でまともに動けるものがいなくなった。シュナちゃん、大きく遠吠えしてから、こちらに戻ってきたが、こちらに向かっている途中でどんどん小さくなり、私の傍まで来た時には、もとの生まれて間もない位の大きさのワンコに戻っていた。口の周りが真っ赤で汚かったので、水魔法できれいにしてあげて、その後、温かい風魔法で毛を乾かしてあげた。
シュナちゃん、やっぱり『魔物』だったんだよね。でも、大きさを自由に変える魔物なんか知らないんですけど。
敵部隊がほぼ壊滅したのを見た街の守備隊の人達が城門を開いて出てきた。うん、あとは生き残った敵を捕縛するだけですね。私は、ホワイトに乗って、ボッコリボッコリと街に近づいて行った。
私に気が付いた守備隊の方の一人が、騎士の礼をしてくれた。私もホワイトを降りて、貴族の礼で答礼をし、自分の身分を明らかにした。
この街の名前は、ビート市、騎士さんの名前は、ハインさんと言って、この街の守備隊長をしている方だった。ハインさんに事情を聞いたら、通常は80名位でこの街を守備していたのだが、ツーリ王国が侵攻してきたので、30名の部隊を国境守備部隊に拠出していたそうだ。うん、この手前の村の惨状を教えてあげるとともに、今後もこの街の防護をお願いして、さらに西に向かおうとしたら、ハインさん、今日はこの街に泊まっていって欲しいと言ってくれた。時間的にも、これから西に向かっては中途半端になりそうだったので、お言葉に甘えることにした。そう言えば、まだ昼食も食べていなかったな。ホワイトもシュナちゃんも文句を言わないけど、きっとお腹が減っているだろう。ビート市はある程度大きな都市なので、大きなホテルもあり、その中からハインさんに紹介して貰ったホテルに泊まることにした。やはり、一番良いスイートルームが予約されていたけど、まあ、貴族の義務としてしょうがないよね。
ホワイトは厩なので、厩務員のおじさんに、豆類を多めにした飼葉をお願いしたが、シュナちゃんは、レストランで食べさせるわけにもいかないので、生のお肉を部屋に持ってきてもらった。シュナちゃん、今日は一体どうしたのかな。いつもかわいいシュナちゃんなのに。鑑定をしてみたら
犬のような魔物(たぶん精霊)
名称:シュナ
称号:フレデリックの従魔
うん、殆ど表示が変わっていない。前回、どんな表示か忘れたけど、犬でないのだけははっきりしたみたい。でも、あの強さは通常では考えられない。騎士も含めて300名の部隊をあっという間に殲滅なんて、ほぼ災害級『SS』ランク以上と言うことじゃないかな。そんな魔物っていたかな。うーん、考えても分からないから、もう寝よう。
次の日、ハインさんが、ブロンコ辺境伯に後方の憂いがなくなったことを知らせる鳩を飛ばしたらしい。これで、領都守備に回していた部隊を、国境警備に戻せるだろう。でも、目前の危機が去ったわけではないので、部隊が返ってくるのは未だ先になるだろう。もう、ついでだから、王都の先まで行ってしまいます。
◆
国境の山岳地帯は、まさしく戦場となっていた。敵味方乱れての殺し合いが行われている。後方の本陣には、ブロンコ辺境伯が陣を張っていた。大きな旗が見えている。私は、ホワイトから降りて、手綱を引いて、本陣に近づいて行った。すぐに警備の騎士に誰何されたが、ウエスタン侯爵であることを明らかにすると、テントの中からブロンコ辺境伯が出てきた。中年だが、体格が良く、武を貴ぶ偉丈夫という感じの方だった。私のことは、ハインさんからの鳩で知らされていたらしく、大変に歓待されたが、ゆっくりお茶を飲む暇もなく、テントの中での作戦会議となってしまった。
ツーリ王国部隊2000名が山を下りて来ているが、迎え討つブロンコ軍は、僅か600名、本来なら鎧袖一触、勝負にならずに負けてしまうところだが、狭い山道を下りて来る敵の戦力が分断されていることが幸いし、今まで戦い続けることができていたようだ。
しかし、敵の高いところからの弓矢の攻撃が効果を上げていて味方は苦戦を強いられているそうだ。大盾を有効に使って、何とか肉弾戦に持って行っているが、弓手の格好の的になっており、相手との戦いの合間に飛んでくる矢が厄介だとのことだった。テントの前に並べられている矢盾の隙間から見ると、確かに山の斜面の上の方からビュンビュン矢が飛んできている。うん、あれじゃあ防戦も大変そうだな。
「あの、矢の攻撃を何とかしましょうか。」
「え、フレデリック卿は、魔法でも使えるのか?」
「ええ、少しは。本当は剣の方が得意なんですが、とりあえず、矢の攻撃を何とかしてみましょう。」
私は、残っていた油樽を持って、テントの外にでた。樽を宙に浮かし、山の上の弓手が隠れている付近の上空まで念動で移動させる。あとは、魔力を切るだけだ。次々に落下する油樽は、着地とともに樽が割れてナフサがばらまかれ、それに着火剤の黄燐の炎が引火する。もう、斜面の中腹は地獄絵図の様だ。油を浴びた兵士が火だるまになって坂を転がり落ちてくる。落ちた先では、わが軍の兵士の槍衾の餌食になっている。後方からの弓矢の援護がなくなった敵兵が浮足立つ。もう、こうなったら勝負の趨勢はこちらのものだ。
「失礼。」
そういって、本陣から最前線へ徒歩で移動する。というか普通に見たら、全速力で走るよりも早い速度で歩いているのだから、誰が見てもおかしいと思うだろう。接敵したと同時に2斤の木刀を横なぎか上段振り下ろしで叩きのめす。特に魔力は込めていないが、どうしても勢いが凄まじいようだ。
バキッ! ボキッ! ゴキッ!
敵兵の体のどこかに当たると、確実に陥没するか絶対に曲がらない方向に曲がってしまう。頭にあたった時には、兜ごと陥没してしまった。目前のほとんどの敵が戦闘能力を失った頃、敵方の方から声が掛かった。
「おめえ、変わった武器を使ってるな。そんなぶってえ木刀、よく振り回せるよな。」
背の高い銀髪オールバックの男だ。その男は、強者独特の雰囲気を持っていたが、一番変わっているのは、手に持っているロングソードだ。異様に長い。通常のロングソードは刃体の長さが長くても120センチ程度だが、男の持っているロングソードは160センチ以上ありそうだった。あの剣豪『佐々木小次郎』が使っていた『物干し竿』もかくやと思える程の長さだった。
なんとなく、中盤のボスキャラという感じで男が登場しました。
次話は、明日6:00に投稿いたします。
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