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64 久しぶりの魔物のようです。

 今回は、新しい出会いがあります。

 ネオ・ディオール市を出てから、次の町で1泊して、翌朝、早朝に次の宿泊先であるラークヒル村に向かう。『ラークヒル』絶対『ひばりが丘』だ。どこの世界も、名付けなんて似たようなもんなんだね。


 お昼を、街道沿いの野営地で取ることにした。昨日の宿泊先でサンドイッチを作って貰っていたので、ここで食べることにしたのだ。私は、ホワイトに乗って結構早く進めるので、お昼にここまで来れたが、徒歩だとここが野営場所になるのだろう。乗合馬車だと、前の町の出発時間にもよるが、ここで野営するかどうか微妙なところだろう。野営地として切り開いているだけあって、井戸もあり、炊事もできるようになっている。でもウオーターが使える私は、井戸の水ではなく温かい紅茶を淹れて食事をしていた。野営セットは、一応一通り『ストレージ』の中に入れているので困ることはなかった。


 食事中、不穏な気配を感じた。100m位離れた場所から近づいて来ているのだが、魔物と人間の気配だ。音を完全に消して接近するなど、普通の魔物ではないようだ。まあ、気配からして、それ程危険はなさそうなので、食事を続けていたが、あと30mで接敵と言う位置まで接近した時、その辺の小石を人差し指で弾いて、魔物に警告をしようとした。


  「痛!」


 思いがけず人間の声がした。人間がいたのは知っていたが、人間と同じ位置というのはおかしい。


 あ、なるほど。人間が魔物の背中に乗っているのか。どおりで位置が一緒だったしね。もう少し近付くのを待とうかと思ったけど、このまま去ってくれるかも知れないので、声を掛けることにした。


   「それ以上近づくと、敵意ありと認定するよ。そのまま立ち去ってくれないかな。」


 30m近く離れているが、私たち以外に誰もいないので、普通の声でも聞き取れるはずだ。しばらく待っていると、変な音が聞こえた。


    グーッ!


 なんか聞いた事がある音だなあと思ったら、もう一度聞こえた。


    ググーッ!


 あ、この音は、あれだ。お腹が空いた時になる音だ。これだけ距離が離れていると、普通なら聞こえないだろうが、私の気配察知能力の獲得のための基礎能力として高めていたお陰でハッキリと聞こえた。続いて、若い女の子の声が聞こえた。


   「ご飯食べたい。」


   「君だけゆっくり来なさい。」


  魔物の気配から、人間の気配が離れるのが分かった。気配の方向を見ると、木々の間から女の子が現れた。金色だろう髪の毛は黒ずんで伸び放題、顔は泥と何かで汚れ切っていて、肌が何色か分からない。見た感じ、10歳位だろうか。


 私は、聴覚のみならず嗅覚も人並み以上に効くので、この子が物凄く臭い事が分かった。鼻が曲がるとよく言うが、できる事なら鼻を取り外したい位だ。


   「悪いけど、それ以上近づかないでくれる。」


 つい、鼻を手で覆ってしまった。それに気がついたのか、


   「私、臭い?」


   「うん、少しね。」


   「その井戸、使わせてくれる?」


   「うん、いいけど。冷たいよ!」


   「平気、いつもやってる。」


   「ちょっと待って!」


 私は、『ウオーター』で、温かいお湯のシャワーを出してあげる。石鹸とタオルを『ストレージ』から出して渡すと、後ろを向いてあげる。幾ら私が7歳児でも、裸を見られるのは嫌だろう。


   「ありがとう。これ、魔法?」


   「うん、後で乾かしてあげるね。」


   「君、小さいのにすごいね。」


 しばらく待っていると、『終わったよ。』と言う声がした。振り返ると、確かに女の子だろうと分かるけど、微妙な姿の子がいた。取り敢えず匂いは薄くなったみたいで、我慢できるレベルだ。


   「君、魔物と一緒だったよね。從魔なの?」


   「え、クロは從魔じゃないよ。友達。」


   「じゃあ、ここに呼んであげなよ。一緒にご飯食べよ。」


   「いいの?」


   「うん、構わないよ」


   「ありがとう。『クロ』おいで。」


   木の陰から大きな猫が現れた。いや、猫じゃない。ブラックパンサー、黒豹に似ているが、額のツノが魔物であることを物語っている。この子達のご飯は、干し肉と黒パンそれとチーズだ。黒豹は、何も食べようとはしなかった。聞くと、『クロ』は、普通に森で狩りをして、猪や鹿を食べているらしいのだが、この子、名前がジュリというらしいが、ジュリちゃんは生肉が食べられないので、いつもお腹を空かしているらしいのだ。この野営地で、旅人が火の始末をしないで立ち去った時だけ、生肉に火を通して食べるが、普通は水をかけられるので、期待はずれで終わってしまうとのことだった。


 そもそも、ジュリちゃんは、この街道を北に外れた小さな村に両親と共に暮らしていたのだが、2年前の不作の時に年貢が納められず、ジュリちゃんが何処かに売られそうになったらしいのだ。それで両親と共に、どこかの街へ行こうとこの森に逃げて来たのだが、ゴブリンの群れに襲われ、自分だけ何とか逃げて来たらしい。それで森の中で迷って泣いている時にクロに助けられたらしい。それからは、村にも帰れず、この森で暮らしていたらしい。


 クロは、魔物だが初めて見る魔物だ。鑑定してみることにした。


   「鑑定」


   猫型魔物

   シャドウパンサー

   HP 367

   MP 153

   スキル:隠密

       影渡り


名称:『クロ』 シャドウパンサー特殊個体

   種別:猫型魔物(可愛い)

   危険度ランク 『S』

   攻撃力  367

   防御力  153

   特殊攻撃 隠密

        影渡り


 シャドウパンサーは、魔物でも森に普通にいる。しかし隠密スキルのみで危険度レベルも『A-』の筈だ。『影渡り』スキルがランクを上げているのだろう。ついでにジュリちゃんも鑑定してみる事にした。


   「鑑定」


   ジュリ

   アスラン暦455年7月30日生まれ(9歳)

   人間族 女性

   レベル 2

   HP     36

   MP      7

   攻撃力     5

   防御力     8

   魔法適性    光

   称号:クロの主

   スキル:テイム(初級)

   状態:栄養失調


 うん、極めて普通の女の子だね。ただ、クロと出会えて『テイム』が生えたみたい。年齢も間もなく10歳になるみたい。でも、それにしては身体が小さいね。栄養状態が、極悪だったため成長が十分にできなかったみたい。


 昼食が終わり、次の村、ラークヒルズ村へ向かうことにした。ジュリちゃんは、ホワイトに乗って貰って、私は歩くことにした。と言うか、ジュリちゃん、靴を履いてないし、それに鞍は一人乗りだし。あと、未だ少し匂うし。


 ジュリちゃん、初めて馬に乗るらしく大はしゃぎだったけど、私が手綱を引いて走り始めると、黙り込んでしまった。かなり怖いんだろうけど、早く村に着いて、ジュリちゃんのお洋服を買わないと。ホワイトに乗る時、スカートが捲れて色々見えてしまっているし。


 本当は夕方に到着予定だったけど、午後3時には村の入り口に到着した。フレイズさんが発行してくれた通行証を見せて村に入ったが、クロは村の手前の森の中で待機して貰った。そのうち從魔登録をしてあげるから、それまでの辛抱だね。


 村の宿屋で一番いい部屋を2部屋お願いして、女将さんにジュリの服と下着、それと靴を買って来て貰うようお願いしたら、この村には洋服屋はないので、体つきが似ている女の子のいる家で古着を買ってくるそうだ。金貨1枚を渡したら多すぎると言っていたが余ったらチップとして受け取って貰いたいと言っておいた。


 部屋に入ったら直ぐにお風呂を沸かして貰い、宿屋の女の子にジュリを綺麗に洗ってくれるようにお願いした。自分の部屋に戻ってのんびりしていたら、村長が挨拶をしに訪ねて来た。


 村長に、ジュリちゃんのことを尋ねたら、3年前の酷い凶作の時は、カインズ領から逃げてくる農民が多かったがその殆どはダメンズ侯爵の命令を受けた衛士達に捕まってどこかへ連れ去られたそうだ。ジュリちゃんのような子供は、隣町の孤児院に預けるくらいしか出来ないそうだ。


 ジュリちゃんの意向も確認しなければならないが、王都のランカスター邸に引き取ろうかと思っている。孤児院では、クロちゃんを手放さなければいけないし、それに孤児院に行っても2年間位しかいる事ができない。それなら、いっそ我が家で行儀見習いとして15歳位まで働いて貰ってもいいだろう。それから先は自分で考えて貰えば良いのだから。

 ジュリちゃん、まだ戦力にはなりません。


 次話は、明日6:00に投稿します。

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