63 組織が殲滅されたようです
今回はチート盛り沢山です。
事態の異常さは、暴力に生きてきた連中だけに、すぐに気がついたようだ。
怯えて武器を捨てる奴もいれば、逃げ出そうとする奴もいたが、今日の目的は捕縛でも組の解散でも無い。反省だけなら猿でも出来る。ここは丁度良い機会だ。『瞬動』を連続使用して殲滅していこう。それからは、彼らにはきっと何が起きているか分からなかったろう。一瞬私が見えたかと思うと、すぐに消えて、残ったのは膝を抱えた男達だったからだ。
バキッ!ボキッ!べキッ!ガキッ!!
ドガッ!ボクン!バガン!ドゴン!ボキリ!
最後の男の膝を打ち砕いてから、ゆっくりと階段の方に近づく。階段の上から数人の男達が抜き身のショートソードを持って降りて来た。流石に、狭い階段で木刀は触れない。左手を指鉄砲の形にして狙い撃つ。
バン!バン!バン!バン!!
9ミリ弾が正確に男達の右膝を撃ち抜く。階段を転がり落ちて来る男達。下敷きになっては堪らないので、『浮遊』で浮かび上がって躱しておく。そのまま2階に上がると、いくつかの部屋がある。部屋のドアが閉まっているが、ドアの向こうにロングソードを振りかぶって待ち構えているのが気配で丸わかりだ。
ここは、木刀に魔力を纏わせて強化してから、壁の向こうの男の両膝を目掛けて壁ごと切り払う。
ドガーーーーーン!
壁ごと切り裂いたが、木刀の先から斬撃波が飛んだらしく、室内に正常に動けるものは居なくなっていた。
次の部屋は、流石に待ち構えてはいないようだったが、タンスやソファーをドアの前にバリケードにしていた。しょうがない。木刀を『ストレージ』にしまい、普段使いのショートソードを出すと、水魔法のウオーターカッターをショートソードに纏わせて、ドアの蝶番とドアのノブ部のところを切り裂いた。木刀でも出来るが、やはり金属製の方が魔力が伝わりやすい様だ。
ドアを退けるとタンスなどが邪魔をしていたが、そのまま『ストレージ』にしまい込んだ。後で何が入っているか楽しみだな。
部屋の中には、5人の男がいたが、組長はいなさそうだった。
「てめえ、あ!あなた様はどなたですか?」
流石に自分たちの置かれている立場が分かっているようだ。身なりや髪を伸ばしているところを見ると、どうやら幹部のようだ。
「私はフィレ、ゾリゲン団長の知り合いだよ。」
「フィレ?フィレ、フィレ。あ、もしかするとフレデリックとか言うガキ、いや、今度ダメンズ様の後任に着任するウエスタン侯爵?」
あ、バレてるね。まあ、構わないけど。私は、右手に持ったショートソードに『ファイア』を纏わせて男達の両足を切断しておく。切った瞬間に血管の切り口が焼き付いて塞がれるので、殆ど出血が無かった。まあ、その分、接合手術が難しいんだけどね。
最後の部屋にはご丁寧にも『組長室』と言う金文字の札が掛けられている。ドアには鍵が掛かっていたが、グイッと捻ったら鍵ごとドアノブが引きちぎられた。ドアを開けると、顔目掛けて矢が飛んで来た。避けてもよかったが、圧倒的な実力差を見せつけるためにも、右手でキャッチする。ポンと上に投げ上げて、念動で半回転させて弓を構えたまま呆けている組長の頭の皮を削ぐように発射しておく。別に狙う必要なんかない。自動追尾機能を付加するだけだ。
ズバン!
組長の後ろの壁に深々と矢が刺さった。組長の前には、いかにもその手の女性が体育座りをしていたが、腰の辺りの床に水溜りが出来ていた。
「その女性を退かしてくれないかな。」
「フ、フレデリック侯爵様、どう、どうかご慈悲を。」
組長は、弓矢を放り投げ、その場で跪いて両手を合わせている。
「その女性を解放してあげて。」
再度、組長に命じると、その女性の背中を蹴り飛ばして遠くに追いやった。
「えーと、貴方がジャクムシ組長ということで、もう組織は壊滅状況だけど、最後の仕上げで、貴方には一生不自由な生活をして頂きます。
ショートソードを水平に薙ぎ払った。斬撃が、組長の両目の上を通り過ぎていく。破壊された眼球は、通常の『ヒール』では再建出来ない。組長には、マッサージ師か楽器演奏でもして貰おう。才能が有ればだけど。
組長室の奥には、大きな金庫が置いてあった。私の身長よりも大きいけど、中身は何だろう。取り敢えず『ストレージ』の中に入れておこう。あ、忘れていた。さっき収納したタンスなどを取り出した。タンスの中には、剣や鎧がしまってあったが、普及品の安物ばかりだった。ちょっとがっかりしている時、下で騒がしい声が聞こえた。
「全員、捕縛しろ。出血している者もそのままだ。死んでも構わん。」
あ、酷いこと言ってる。でも、長年の恨みつらみが有るのだろう。どっちみち、コイツらは罪に応じて処罰される筈だ。罪が立証出来ずとも無罪放免はないだろう。犯罪者を匿ったというだけで、犯罪奴隷5年は確定だ。片足が不自由での鉱山労働は辛いだろうな。
衛士隊長は私の前まで来て跪き、臣下の礼をした。あのう、私、貴方の上司でも何でもないのですが。
「ウェスタン侯爵閣下に臣ベロンが申し上げます。この度の武勲、しかと確認いたしました。この無頼どもは必ずや厳罰に処することをお誓い申し上げます。」
まあ、いいけどね。ゾリゲン団長、この人達に何を言ったのですか?その時、行政官のフレイズさんがやって来た。こんな修羅場には似合わない人だけど、この人には相談することがある。組長室に誰もいなくなってから、あの金庫を取り出して、中身の確認をしてもらう。中身によっては、正当な持ち主と主張する者も出て来るだろうし、犯罪没収品として処理できるかどうか分からなかったからだ。フレイズさんと一緒に中を確認する。大量の金貨は、市の収益として処理できるそうだ。問題は、借金の証文多数だ。大半は、月に5割の暴利を貪る効力無効の違法契約だ。
あと重要な事が判明した。借金の方に、男は鉱山労働者として、女は娼館に売り飛ばしていたのだ。買い手は、ダメンズ元侯爵の配下の商会だった。売られた者達は、おそらくツーリ王国の奴隷商に買われていったのだろう。今更買い戻す訳にもいかないだろう。
それとガンズ伯爵が、こいつらから毎月上納金を受け取る代わりに、人身売買などの違法行為に目をつぶるという念書も出て来た。これでガンズ伯爵の処分が決まっただろう。
コイツらの処刑は決まったも同然だ。この日、ネオ・ディオール市は大興奮だった。今まで苦しめられ続けて来た反社会集団が壊滅したのだ。後は、衛士隊が弱小の下部組織を一つずつ潰してゆけば良いだろう。
この日の夜、衛士隊の皆さんと行政庁の皆さんと一緒に打ち上げを行った。場所は、ゾリゲン団長には申し訳ないが、男爵邸の大広間を使わせて貰った。まあ、後で綺麗に掃除をすればいいでしょう。この屋敷は、ガンズ(豚)伯爵の本邸だったが、伯爵の領地を取り上げる際に、この屋敷も接収したらしい。家財道具については、伯爵が業者に売り払おうとしたらしいが、フレイズさんが業者と結託して安く買い叩き、ある程度の家具はそのままにして貰ったそうだ。趣味の悪い家具が多いのは我慢して貰うつもりだそうだ。
次の日、皆さんとお別れの挨拶をして西へ向かう事にする。次の目的地は、シュリンガー団長の領地になった男爵領だ。シュリンガー団長は平民出身で、未だ騎士爵を叙爵してなかったので家名がなく、名付けを頼まれてしまった。『カルチェ』と名付けたのだが、どうも前世の知識が邪魔をしていると言うか、他に思いつかなかった。そのカルチェ領だが、シュリンガー団長も独身だったが、弟夫婦がいたので領地経営を手伝って貰っているそうだ。一度、ランカスター家に挨拶に来たが、弟さんはセガルカさんと言っていたので、今は、
セガルカ・フォン・カルチェさん
となる訳だ。因みに私は、
フレデリック・ランカスター・フォン・ウエスタン
となる訳だ。基本的に、領地の運営は行政を司る役所が実施するのだが、ありとあらゆる事が領主の承認がないと進められない。ディオール領はフレイズさんがいるので、何とかなっているが、新たに独立領となったカルチェ領は、領都さえ決めなければならないのだ。
セガルカさんが領内の各地を回って領都に相応しい市町村を選定しなければならないのだが、きっと難航しているんだろうな。我が街こそ領都に相応しいと自薦・他薦が凄まじい事が容易に予想できるからね。
ここネオ・ディオール市からウェスタン領境まで2町3村がある。そのうち1町1村がディオール領なので、2泊3日でカルチェ領に入る筈だ。
フレデリック君は、やる時はやる子でした。
次話は、明日の6:00に投稿予定です。




