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57 国外駐屯地は危機のようです

 国境での戦いが始まります。


 総アクセス数が、50000PVを超えました。これも、皆様のご支援のおかげです。ありがとうございました。

 エイボン皇国とルース帝国の国境線は、流れの速い川になっており、周辺は深い森になっている。長い国境線で、川を渡ることが出来るのはたった1か所、ここウインチェスター砦がある場所だ。幅200mもの川の両岸から石作りの橋が伸びており、真ん中の20m位が跳ね橋になっている。


 ここはエイボン皇国領だが、国境を守備しているのはアスラン王国の国外派遣騎士団だ。所属は、王都守備騎士団だが、各侯爵騎士団と領地持ち伯爵家の自警騎士団から拠出している混成部隊だ。侯爵家から100騎ずつで700騎、16伯爵家から各30騎で480騎、そして王家から20騎と補給兵站班として200名が派遣されている。


 皇都からウインチェスター砦まで馬車で2泊3日の旅程なので、距離にして240キロ程度だろう。私は、勿論『飛翔』スキルで行くので1時間弱と言うところかな。この『飛翔』、魔力纏と風魔法の応用技だと思っていたら、スキルだったようだ。どおりで、ダンドール主任教授がやろうとして上手くいかない筈だ。


 砦の責任者は、父上の部下でサイモン子爵と言う年配の男性だ。領地は持っていない所謂法衣貴族の方で、外務省勤務一筋の文官だが、若い頃、冒険者をやっていたと言う変わり者だ。


 私が砦に到着すると、いつもの騎士さんが城門に立っていた。最初に私が訪問した時は、迷子だと思っらしいのだ。自分がランカスター家の者で、この砦に派遣されているバルルカ騎士に面会に来たと言うと、バルルカさんがすぐに迎えに来てくれた。


 バルルカさんは、2か月ほど前に前任の騎士隊長と交代した方で、王都屋敷ではずっと打ち込み稽古の相手をしてくれた人だ。


 バルルカさんといろいろ話しているうちに、この砦の騎士さん達と稽古をすることになってしまった。最初はランカスター家から派遣されている方たちだけと稽古していたんですけど、そのうち、どんどん増えてしまって。大体、2週間に一度、訪問して稽古をしているんですが、12名のお相手を決めるのに、選抜戦をしているんだとかいっていました。当時、まだ5歳だったんですよ、私。


 それから1年半、いろいろな人たちと稽古をさせていただきました。小型の盾を持った片手剣の騎士、長いロングソードを振ります騎士、大きい大きい大剣を一度だけ振り下ろすのに全力を尽くす騎士、そして2本のショートソードを旋風のごとく振り回す双剣使いの騎士などいろいろです。あと、槍使いやバルハート使いの方もおりました。それぞれに特徴があるのだが、圧倒的に足りないなと思うのが速度だった。私の動体視力が特別に良いのかどうか分からないが、相手が打突部位を定めて、そこに向かって剣を振り下ろしたり振り上げたりするのがしっかりと見えているのだ。それは双剣使いの『旋風剣』でも同じことだった。相手がどこを打ってくるのが予め分かっていれば、対応は簡単だ。避ける。躱す。返す。抜く。摺り上げる。とにかく応じ技のオンパレードだ。あと、出端を狙っての小手や面が面白いように決まる。相手は、何故私の剣だけが当たるのか不思議だろうが、それが分るまでには長い年月の鍛錬が必要であろう。






 今日は、いつもの通り、砦のちょっと手前で着陸して、テクテクと砦の方に歩いていくと、何やら砦の中が騒がしい。仲良くなった門番のシロウさんに聞くと、橋の向こうでルース帝国軍が終結しているらしいのだ。え、なに、それ?今までも、そんなことがあったのか聞くと、ルース帝国と不可侵条約を締結して以来、初めてのことらしい。急いで砦の中に入ると、中では戦闘準備でテンヤワンヤの騒ぎだった。砦の上に備え付けられたバリスタの矢を運んでいたり、煮え立った油を砦の防壁の上に運んだり、皆、殺気だっている。


 ようやく、バルルカさんを見つけて、声をかけた。


   「フレデリック坊ちゃん、早くここからお逃げなさい。ここは、持ちそうもない。奴ら、魔物の軍団を先頭にして、橋を渡るつもりだ。橋は落とされないように、もう、渡し板が渡されてしまった。」


   「うん、危なくなったら逃げるね。でも、ちょっとだけ、ちょっとだけ手伝っていい。危ないことは絶対にしないから。」


 私が今まで何をしてきたか、十分過ぎる程知っているバルルカさんは、


   「分かりました。でも、絶対にけがをしちゃいけやせんぜ。もし、怪我しそうだったら、あの得意の空飛ぶ魔法で逃げてください。それで、国王陛下に至急応援をお願いします。」


   「うん、分かった。屋上に行ってみるね。」


 バルルカさんと別れた私は、その足で、屋上に向かった。屋上に上がると、周囲が良く見える。橋の方では、なるほど工兵たちが橋の切れ目に渡した板を補強している。向こう岸には魔物だろうか。熊や猪、それに狼の姿が見える。屋上にはすでにサイモン子爵が伝令を連れて上がっていたが、文官なのに全くおびえる素振りがない。さすが、元冒険者だ。


   「フレデリック卿、間の悪い時に来られましたな。」


   「そうですか、グッドタイミングの気がしますが。」


   「それが何か分かりませんが、早くお逃げなさい。これから、この砦は戦闘になりますが、私の見立てでは1週間持つかどうか。」


 向こう岸には、魔物の群れの他、冒険者か野盗のような者たちが500名、あきらかに傭兵と思われるものが2000名位いそうだ。ルース帝国の旗が立っていないところを見ると、荒くれ冒険者と流れの傭兵が襲ってきたと偽装していそうだ。しかし、魔物の強さを考慮すると、砦の守備隊の2倍近い戦力が布陣していることになるだろう。それに、あの大型バリスタが馬鹿にできない。肉弾戦になる前に、あのバリスタで火矢を打ち込まれたら、この砦ではひとたまりもないだろう。どうやってあんな大型バリスタを音もたてずにセットできたのだろうか。その時、ふと、戦勝祝賀会場で見た魔石を思い出した。あの魔石が、空間転移の魔石なら、あの大型バリスタだって一瞬で転移させられるかもしれない。と言うことは、敵は無尽蔵に武器・弾薬・兵員を増強させることができるということになるだろう。


 敵のバリスタだけでも無力化しておかなければいけないだろう。総数は12基、結構多い。無力化するには『ファイアボール』で爆発させてもいいが、ここは、中心の機械部分を破壊すれば十分で、修理に時間さえかけていただければ目的は達成できるだろう。距離は、ここからだと300~350mと言うところか。ロングレンジライフルなら至近距離ともいえる距離だ。9mパラベラム弾を12発準備して、空気抵抗が少なくなるようにプルーフ加工をしておく。さあ、まずは回転を与えて、毎秒5000回転で安定させる。そして初速1200m/秒で打ち出した。それぞれ空気中の水蒸気を巻き込みながら薄い雲を引いて飛んでいく。すべての大型バリスタの機関部に射角30度で命中した。バリスタの傍にいた砲兵達は、突然、轟音とともに破裂した機関部に何が起きたか分からない様子が手に取るように見えた。


 さあ、次は魔物達だ。広域殲滅魔法でも良いが、それでは勿体ない。え、何が勿体ないかって。えーと。


 私は、橋の味方陣地側に飛び降り、普段使いのショートソードを抜き放つ。あ、いけない、鎧や兜を装備するのを忘れていた。いつもの紺色の貴族服の子供がショートソードを持ったって怖くなんかないですよね。まあ、鎧、兜を装備しても怖くはないでしょうが・・・。


 私は、ショートソードを右手片手剣に持ち、そのまま橋の向こう側に向け走りこんだ。橋の中央では、工兵たちが橋に渡した板を固定するために釘や鋲を打ち込んでいるが、その頭上を大ジャンプで飛び越す。そのまま、橋の袂でたむろしている魔物の群れに突っ込んでいく。戦闘にいたのは熊の魔物、『鑑定』では、『フローズンベア:防御力198』だ。喉元を切り裂いて絶命させ、返り血を浴びる前に通り過ぎる。次は猪だ。『ビッグファングボア:防御力187』だ。もちろん、両断してしまう。狼達はファングウルフだ。こいつらの防御力は68だということは知っている。2頭まとめて切り裂いてしまう。あとは、単に処理作業のようだ。なるべく返り血を浴びないような位置を取りながら切り裂いていく。段々切れ味が悪くなってくる。まあ、しょうがない。生き物を切ると油と血痕といろいろなものが刃に付着する。これは『聖剣グラム』以外の剣では避けて通れないだろう。でも、まあ切れないことはないので、そのまま切り続ける。きっとドワンゴさんが知ったら目の玉が飛び出るほど叱るだろうな。


 何体の魔物を切っただろうか。ようやく魔物の姿がなくなった。傭兵達は、かなり遠くに下がっている。というか、撤退を始めている。大型バリスタが壊れてしまったし、頼みの魔物達も完全殲滅されてしまったし。いわゆる戦意喪失ですね。ということは、私達?が撃退したってことでいいんですよね。


 うーん、これからどうしようか。もう、戦闘はないだろうし。そうだ。帰ろう。


 そのままエイボン市内の皇居まで帰ることにした。

 えーと、圧勝でした。というか、まともな戦いになりませんでした。

 次話は、明日6:00に投稿予定です。


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