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44 緒戦はなんとか勝ったようです

 メタルバレットは強力です。連射モードでは、マシンガン以上の威力になります。

 ゾリゲン団長とのお約束だったので、うかつに谷には近づかないようにしていたが、ワイバーンが襲ってきた。


   「弓隊、前へ。」


 号令に従い、弓隊が頭上のワイバーンを狙い撃つが圧倒的に威力が足りない。それどころか、ワイバーンどもは上空から毒液をまき散らしてきた。この毒液、酸性の液体のため、身体に触れると煙が立ち上ってくる。これじゃあたまらないと、盾を頭上に掲げて避けているが、有効な手立てがないままにジリジリと下がり始めてしまう。あれだけの大きさのワイバーンをしとめるには、大型のバリスタが必要だろうが、準備してなかったのでどうしようもない。


   「魔導小隊、前へ。」


 魔導小隊の攻撃魔法が上空へ放たれる。ファイヤボールやウインドカッターなどだ。しかし、今度は速度が足りない。当たれば威力はあるのだろうが、上空へ向けて放っているので、速度がかなりゆっくりなのだ。あれじゃあ。機敏なワイバーンは余裕で避けてしまうだろう。そうこうしている間に、谷に渡したロープを伝って、アーマードリザードたちが次々とこちら岸に渡ってくる。前衛部隊では肉弾戦が始まっていたが、ワイバーンの支援を受けたアーマードリザードは、勢いを増して我々の部隊を押してきた。ダンドール教授が、かなり長い魔法詠唱の末、大きな火柱が上空へ放たれた。中級広域魔法の『ファイアストリーム』だ。あ、3体のワイバーンが火柱に触れて地面に墜落してくる。ダンドール教授、顔色が青い。かなり、無理をしているみたいだ。


 前衛に対し、シュリンガー団長が1個大隊の応援を送り込む。しかし、敵のアーマードリザードの皮膚はかなり硬いようで、致命傷を与えるのに苦労しているみたいだ。推測だが1対1の絶対的な戦闘力ではアーマードリザードの方が上なのだろう。敵の武器はこん棒位なのだが、膂力がすごく、ブンブン振り回していてなかなか近づくことができないのが現状のようだ。


 戦線が乱れ切ってしまった段階で、シュリンガー団長が私の方に近づいて、敵が谷を渡ってくる箇所付近の敵を殲滅してもらえないかと依頼してきた。え、もう私の出番ですか。シュリンガー団長の考えとしては、今の段階で戦力を損耗するのはできるだけ避けたいらしいのだ。ゾリゲン団長の顔を見ると、黙って頷いている。しょうがない、やるか。


 騎馬から降りて、前方を見る。乱戦になっていて、谷の方まで見通すことができない。これから私がやることについて、皆さん、見なかったことにしてくださいね。あ、それと谷からはなるべく離れていてください。


 私は、魔力を纏い、『浮遊』の魔法を発動する。スルスルッと地上10m位の高さまで浮かび上がった。この高さなら、前方、谷の向こうまで見渡せる。私の存在に気が付いたのか、ワイバーンが迫ってくる。なんか嘴から毒液が滴って臭そうだったので、近づく前に、メタルバレットでワイバーンの翼の根元を破壊する。もちろん、誘導機能付きにしているので、精密射撃である必要はない。


  一度に40発位連射したので、空中を飛翔していたワイバーン全てが両翼を損傷して落下し、地面に激突している。さあ、うるさいのがいなくなった。


   「ファイアボール」


 単純な初級魔法だ。直径3m位の火球が空中に3個浮かび上がる。アーマードリザードが谷を渡ってくる場所が3箇所あったので、それぞれに火球をぶつけるつもりだ。特に、速度は必要ないが、威力が必要なので、少し、ほんの少しだけ圧縮しておいた。最初は赤かった火球が白っぽくなっている。


 ユラユラと揺れながら、火球が目的場所まで飛翔していき、谷のこちら側、目的の箇所で地面に触れた。と、同時に大爆発が起きた。あ、ちょっとやり過ぎましたか?単なる『ファイアボール』に過ぎないはずだが、威力が半端なかった。威力だけはぶつけてみないと分からないし、なんて言ったって、今回、初めて実戦で使うんですから。


 谷のこちら側、3か所が大きく溶けて崩れ落ちてしまった。周囲にいたアーマードリザードも無事なものはいなさそうだ。まあ、威力は限定的になるようにしたんだけど、こればかりは経験を積まないと分かりませんよね。


 自分たちの巣に帰れなくなったことを悟ったアーマードリザード達の勢いが目に見えて衰えてきた。あとは、騎士達の殲滅の対象に過ぎない。戦闘開始から約1時間、戦闘が終了した。騎士団の損耗は、死者68名、重傷者106名とのことだった。思ったよりも被害が大きかった。これは、ワイバーンに対する有効な攻撃方法がなかったことと、アーマードリザードの戦闘力、防御力がかなり高かったことが原因だろう。


 重傷者の方々については、1か所に集まって貰った。106名ともなると、かなりの数なので、大型テント6張に分散して貰った。シュリンガー団長に、これからやることは絶対に内緒にしていただきたいと申し入れて、『治癒』をすることにした。テントに入ると、騎士さん達が横たわっている。苦しんでいる者、意識を失っている者いろいろだ。魔力を練る。けが人一人ひとりを確認する。別に診断しているわけではない。単に見て、所在を確認しただけだ。よし。


   「エリア・ヒール」


 上位レベルの広域治癒魔法を発動する。テント内が黄金色の光に包まれる。光が消えた時、テント内にはケガ人はいなかった。









 地竜の討伐は翌日にし、今日は、負傷者の治療と休養に当てることにした。私たちの泊まるテントは王族用だが、外見は、他のテントと全く変わらないような感じだ。これは、敵から攻撃を受けた際に、指揮官の所在を分かりにくくするためらしい。


 夕食を食べているときから、ダンドール主任教授の視線がウザかったんだけど、食事が終わったら、私の隣に座り込んでしまった。


   「まず、最初に聞きたいんじゃが、今回、空を飛んだろう。あの魔法の属性はなんじゃ。」


   「えーと、あれは飛んだのではなく、浮かんだだけです。それに浮かぶのに属性は必要ありません。魔力で、自分の体を浮かしただけです。」


   「なんと、魔力で浮かび上がれるのか?」


   「はい、魔力ってエネルギーなので、厚い空気の層を作るみたいに魔力の層を作って、その上にのって上に移動するような感じですか?」


 物凄く自信がない。しかし、魔力が見える自分には、浮かび上がるときに自分を支えている魔力がしっかり見えているので、当たらずとも遠からずだろう。


 ダンドール主任教授は、何かぶつぶつ言いながら何かをメモしていたが、まあ、放っておこう。


   「次に、次にじゃ。あの、ワイバーンを落とした魔法だが、あれはストーンバレットだと思うんじゃが。」


   「その通りです。ただ、あれは予め作成していた鉛の弾を飛ばしましたが。」


   「しかし、一度に何発を発射したんじゃ。しかも、全て命中していたじゃろう。」


   「はい、連射で40発位は撃ったと思います。もっと撃てるんですが、一度に制御するのが面倒だったので。あと、全弾命中したのは、自動誘導機能を付加したからです。1匹1匹を狙うんではなく、あの辺に飛んで、翼の根元に当たれって思って発射したら、自動で追尾してくれるんです。」


 これも、正確な表現ではない。本当は思考の並列処理で、超高速の演算処理をして誘導しているのだが、それを意識していないだけだ。多弾頭のミサイルをすべて精密誘導するスーパーコンピューターのようなことを私の脳がやっているらしいのだが、転生特典と言うことで、深く考えないことにしている。


   「最後に、あの谷にぶち込んだ『スーパーノヴァ』じゃが、あれも一度に3発を発射したのう。」


 え、何ですか?そのカッコいい呼称。あれって、そんなカッコいい魔法ではありません。単なる『ファイアボール』です。


   「教授、あれ、その『スーパーノヴァ』とか言う格好いい名前の魔法じゃありませんよ。大きな『ファイアボール』です。それを一度に3発撃っただけですよ。」


   「あんな威力の『ファイアボール』などあるものか。まあ、いい、魔法のやり方は『ファイアボール』と一緒なのじゃな。しかし、それだけか。何か変わったことはしなかったか。」


   「そういえば、威力をマシマシにするために、作り上げた『ファイアボール』を少しだけ圧縮しました。聞くところによると、それも普通にはできないらしいですね。」


   ダンドール教授、その場でファイアボールを作り、うんうん唸って圧縮しようとしていたが、全く圧縮されずにユラユラと空中で揺れているだけだった。このままでは危ないので、すぐに魔力を吸収して消してしまったが、時と場所を考えて魔法を使って下さいね。これで、私への聴取は終わりの様だ。まあ、大したことはしていないので、こんなものだろう。


   「明日の対池竜戦は、どんな魔法を使うのじゃ?」


   「え、明日は魔法を使いませんよ。剣で勝負するつもりです。あ、谷底に降りるときは魔法を使うかな。」


   「明日は魔法を使うつもりがないじゃと。何じゃ、そりゃ。勿体ないじゃろ。」


 何が勿体ないのか良く分からないが、これは国王陛下との約束というか裁可を得ていることなので、変更するつもりはない。黙って聞いていたシュリンガー団長が、ウムウムと頷いていたが、


   「それで、その地竜戦には儂も一緒なのだろうな。」


 え、そんなつもり無かったんですが。


   「坊、俺だって一緒だからな。」


   「僕だって、一緒に行きたい。」


   「魔法は使わなくても、儂が行かなければならないじゃろう。」


 皆さん、完全に見学モードなのですよね。まあ、いいですけど。今日は疲れたので、もう寝ます。

 緒戦はなんとか勝ったようですが、騎士の被害は避けられませんでした。

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