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43 ミンチ村が大変なようです

壊滅した村は悲惨な状況でした。5~6歳の子には刺激が強すぎます。

 今回購入した防具セット、装着しても違和感はないみたいだ。まあ、30年間以上、剣道の防具を付けていたわけで、今更、違和感などある訳がない。それよりも、この防具、異様に軽いんですけど。兜以外の金属部分が魔鋼とミスリル合金のハイブリッドとなっているとは言え、こんなに軽くて防御力大丈夫かな。さっき、防御力を鑑定したら、この防具セット、防御力が『+256』と示していた。と言うことは、総合防御力は、『1,425』となる訳で、思ったよりも防御力が上がらなかった。おかしいと思ったけど、平均的な防御力を知らないので、まあ、しょうがないよね。


 今回の遠征部隊、ブルーム殿下と側近騎士、直轄近衛連隊で80騎、王城警備騎士団から派遣された2個大隊250騎、王都守備騎士団から派遣された3個大隊380騎、それと各公爵家からの60騎、私達ランカスター騎士団50騎の合計760騎だ。他の公爵家や伯爵家からも遠征部隊に加勢したいとの申し込みが殺到したらしいのだが、それらの加勢には、後ほど経費を精算しなければならず、王家の出費が大変なことになるので、とりあえず、手持ちの部隊だけで対応をすることにしたみたいだ。あ、ランカスター家騎士団は、私の警護と言う名目で経費は我が家持ち出し、公爵家は王家一族ということで、当然に経費の請求はないらしい。


 しかし、これだけの部隊を長期間拘束し、3食を賄うだけでも膨大な軍費がかかるだろうに、それで地竜1頭では大赤字なのではないだろうか?





 1日目の夜は、野営になった。私は、ブルーム殿下と一緒のテントで寝るのだが、いやあ、殿下の鎧、素晴らしい細工ですね。もう、芸術品です。でも、この細工、戦闘には全く役に立たないですよね。そう、スザンヌさんが無理して付けさせた兜の羽飾りのようなものです。


 また国王陛下からブルーム殿下に授与された宝剣、これも国宝級です。美術品として。刃体はミスリル銀、つくりは、基本、黄金製で一部ミスリル銀を使用しているのですが、黄金の柄など、重いだけで強度も不安だし、こんな剣を持って喜んでいるの、王族くらいだよね。あ、ブルーム殿下、王族でしたよね。兎に角、バランスが悪い。ミスリル銀の比重って分からないけど、軽くて硬いのが売りの金属、刃体に使ったらダメでしょ。もう、柄だけで振る感じです。


 ブルーム殿下の鎧セットを脱がすのは、随行従者をしている騎士さんですが、いたるところに金や白金の飾りがしてあって、傷をつけてはいけないと気を使いながらの脱着、結構大変そう。私は、チャッチャッと外して、『ストレージ』にしまってしまった。ストレージに入っているのは、


   素振り用木刀2本(2斤と3斤)

   稽古用模擬剣

   聖剣グラム

   メタルバレット 鉛製9ミリ弾 300発

   ワールド・グリモアール

   なんちゃって冒険者セット(服のみ)

   替えの下着と靴下

   洗面セット

   お菓子(バナナはお菓子じゃない)

   果実水


となっている。まあ、子供の携行品なんてこんなもんかな。メタルバレットは、あらかじめ生成しておけば、連射の時、便利かなあと思って作り置きしておいた。あ、聖剣は平素はしまっておくことにして、普段使いは、父上に買って貰ったショートソードにしている。失くしたら大変だもんね。


 食事は、部隊に随行の輜重班が準備してくれた。ボリュームは十分だが、味が塩辛いだけで子供にはきついものだった。特に干し肉を戻してのスープは、喉がヒリヒリしそうな味で、これって、柔らかく戻す時の水、そのまま使ってますね。食後、早速甘いお菓子を食べて口直しをしたのは言うまでもない。もちろん、ブルーム殿下も一緒だよ。



 


 2日目の夕方、ミンチ村に到着した。この村は、農業もそれなりだが、森に最も近い村として、冒険者たちの拠点となっている村だ。そのため、村の規模から考えても旅館や食堂が多いとのことだった。しかし、村に到着してみると、ゴーストタウンのようだった。いたるところに死体が転がっている。


 え、何があったの?


 斥候の方の話では、ここは昨日、魔物の群れに襲われ、村民と冒険者のほとんどが殺されてしまったらしい。転がっている死体は、老人が多く、食べるところがあまりなかったので放置されたらしいとのことだった。


 生き残った者も、老人が多いようなのは、戦わずにいち早く村の外へ逃げたことが幸いしたらしい。それでも、女、子供は執拗に追いかけられ餌食にされたらしい。もともとは300人程度の村だったが、生き残ったのは僅か8名だけだった。


 ブルーム殿下は、どこかに消えている。きっと惨たらしい死体を見て、吐いているのだろう。私は、これでも元警察官、実務の経験が少ないとは言え、腐乱死体を扱ったこともあるし、死体を見て動揺するようなことはない。でも、5歳児が凄惨な死体を見て平気というのも、少しシュールかも知れない。


 この日は、厳戒体制で宿泊となった。死体を片付ける音が深夜まで響きわたり、なかなか寝付けないが、明日のためにも早く寝なくっちゃ。


 あ、ブルーム殿下がべそをかいている。仕方がない。一緒のベッドに寝てあげよう。ブルーム殿下が、


   「フレデリック、僕も死んだら魔物に食われちゃうのかな?きっと痛いよね。」


 と聞いてきた。『死』というものを間近に見た子供の当たり前の反応だろう。


   「ブルーム様は死にませんよ。私が必ず守りますから。」


 ブルーム殿下、しっかり私を抱きしめて寝入ってしまった。


 翌朝、森の入り口までは馬で進軍し、それからは森の中を徒歩で行軍だ。結構、樹々が密集しており、スライムや角ウサギ、それに小さなファイアリザードなどがいたが、小さいと言っても、元の世界のグリーンイグアナの成体位はあるんだけど。大型の魔獣や人型の魔物は見られなかった。さすがにこれだけの人数の部隊が森を進軍するのだ。普通の魔物なら逃げだすだろう。そう、普通の魔物なら。


 昼食後、前方から警告の笛の音が聞こえた。短く3度だ。これは魔物と接敵した時の合図だ。伝令が私達の方に駆け寄ってきた。


   「コボルトとオークの集団です。その数、約60体。」


 異様に多いな。シュリンガー団長が、先鋒の中隊に応援の1個中隊を出して対処させているが、Eランクの魔物と言えども、数が揃えば脅威となりえる。ましてや、遠距離攻撃がし難い森の中だ。不測の事態がないとも限らない。部隊の編制は、3人1組の分隊、3分隊で1小隊、3小隊で1中隊、つまり1中隊は30名強と隊長、伝令が基本となる。4中隊で1大隊、2大隊以上で1連隊となる。今回の討伐規模は、6大隊以上なので、連隊規模か師団規模となるわけだ。


 前方で暫く干戈の音がしたと思ったら静かになった。おそらく殲滅したのだろう。私たちは、そのまま前進を続けた。先程の戦いの現場だろうか、コボルトやオークから魔石を取り出す作業をしている騎士さん達の脇を通り過ぎる。


 森を出るまでに、小規模の戦闘が十数回あったが、後半はサイクロプスやケルベロスなどの大型の魔物が増えてきた。それと、火を噴くファイアーリザードは、イグアナ程度の小型のものから中型のものに変わり、丁度イノシシ位の大きさのトカゲが、口から火を噴いてくる。こんな樹木の多い場所で火を吹いたら、火事になってしまうのに、何も考えずに火を噴いてくるなんて、やはりトカゲだ。部隊も、トカゲを殲滅する班と消火する班に分かれ、消火班は、水魔法使いで臨時編成した。本当、魔力の無駄遣いだね。


 早朝に出発して、夕方、ようやく森を抜け出ることができた。前方には、高い山岳地帯がそびえているが、その手前には結構深い谷が横たわっている。斥候の調査では、この谷の底に地竜が潜んでいるそうだ。それよりも上空には飛竜、ワイバーンが十数羽飛び回っており、我々の隙を狙っている。また、谷の向こうには大型のトカゲが徘徊しており、小さな翼をもっている奴もいるところから、ある程度は飛べるのではないかと思われる。あと、人型のトカゲ、つまりアーマードリザードが200体位、谷の向こうでこちらを見ていた。彼らの武器を見ると、ほとんどはこん棒だが、簡単な弓矢を装備しているものもいる。

 今回は、フレデリックの活躍はありませんでした。次回は大活躍だと思います。

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