40 地竜討伐をするようです
今日の会議、ブルーム殿下の護衛として呼ばれているはずですが。
私は、これだけは質問しなければと思い、目立つのは嫌だったけど、手を挙げて質問した。
「一つ、質問してもよろしいでしょうか。私は、ブルーム王子殿下の護衛を務めるフレデリックと申します。」
国王陛下が、無言で頷く。父上が私を指して許可をくれた。
「想定される魔物の種類と規模について教えていただきたいのですが。また、その魔物の危険度ランクについてと、特殊個体の有無もできれば知りたいのですが。」
この質問は、とても大事なのだが、とても答えが難しい。出現する魔物も全てが把握されている訳ではない。また、特殊個体の有無など、遭遇してみなければ分からないからだ。しかし、知らないままで敵と遭遇した場合、部隊の全滅も覚悟しなければならないから、決して軽視はできない情報である。
「その質問には、儂が答えよう。」
聞いたことがある声の男性が声を上げた。確か、王都冒険者ギルドのマスター、ギルベルト伯爵だ。
「儂は、冒険者ギルドの総本部長であるギルベルトだ。フレデリック卿、なかなか核心を突いた質問じゃ。確かに、その情報が不明なままでは、部隊は全滅しかねんからのう。簡単に言うと、今回、出現する最強の魔物はSランクの地竜だ。しかも炎のブレスを噴く特殊個体だ。あと、Aランクのワイバーンが十数頭、B+ランクのアーマードリザードが数十匹、ケルベロスやサイクロプスなどのBやC+ランクは無数ともいえるほどいるじゃろう。もう、何十人もの調査隊が全滅しておる。半端な遠征隊では全滅するぞい。」
皆、黙ってしまった。ブルーム殿下は、内容が理解できないのか、固まったままだが、ギルベルト総本部長の言っていることの本当の意味を知れば、気を失ってしまってもおかしくないだろう。でも、そんな危険な討伐にブルーム殿下を総指揮官にするなんて、国王陛下は何を考えているんだろう。ブルーム殿下は、まだ6歳だというのに。
これからは、大人の討議時間だ。私は黙って、会議を聞いていることにしよう。そう思っている時がありました。そう、約10分程は。父上が、作戦を発表し始めた。
「と言う訳で、通常戦力のままで進行した場合、全滅の危険性があるということがお分かりいただけたでしょうか。我が精鋭騎士団1万騎を向けたとしてもです。ここで、キーとなるのは、広域殲滅魔法の使い手です。我が国で、敵を殲滅し得る広域殲滅魔法の使い手は2名しかおりません。」
会議室内がどよめいた。中には勝った気になって笑い出す者もいる。父上の話は続く。
「その魔法の使い手の1名は、皆も良く知っているダンドール魔導士学院主任教授です。」
国王陛下をはじめ、会議室内の皆が頷いている。あのう、ダンドール主任教授ってそんなにすごい人なんですか?なんか、ちょっと残念な人なんですけど。父上の話は続く。
「しかしながら、ダンドール卿は、最近、魔力が減少気味で、打てる広域殲滅魔法は1発のみと聞いております。そこでダンドール卿から優秀な弟子を紹介して貰ったのです。」
当代一の魔法使いの弟子とは、きっと、すごい人なんだろうな。広域殲滅魔法なんかバンバン打って、あっという間に敵を殲滅してしまうくらいなんだろう。一体どんな人なんだろう。
「その弟子と言うのは、未だ5歳の少年で、ブルーム殿下のご学友をされている方です。」
ほうほう、未だ5歳ですか。ご学友ですか。え?ちょっと待ってよ。それ、どう考えても私なんですけど。
「フレデリック、前へ。」
もう、完全にあきらめムードの私は、父上の前に進んだ。
「お前、あの『インフェルノ・プロミネンス』を撃てるな。?」
「はい、撃てると思います。」
「お前、あの伝説の大魔法『メテオ・ストライク』はどうだ?」
「はい、術式は知っています。」
「最後に、あの『サイクロン・ストリーム』はどうだ?」
「はい、大丈夫だと思います。」
ワールド・グリモワールに書かれている広域殲滅魔法、SSクラスの魔法までなら確かに撃つことができる。でも打ったのは『インフェルノ・プロミネンス』だけで、あれだって途中で怖くなって消したんだけど。でも、魔術式と魔力量から、かなりの高確率で撃てることは分かっている。でも、私、5歳ですよ。元の世界じゃ幼稚園児ですよ。そんな子供に何をさせようというのですか。
「ちょっと、ちょっと待った~~~!」
あのダメンズ侯爵がだみ声を張り上げた。
「そんなガキにこの国の未来を託すのか?気は確かか?」
そうです。気は確かですか?絶対に、誰が考えてもおかしいでしょう。『ガキ』呼ばわりは置いといて、ダメンズ侯爵の仰ることは正論です。
「儂が答えよう。」
聞きなれた声がした。ダンドール主任教授だ。最近は、ダンドール主任教授とともに、ワールド・グリモワールの研究をしている。ダンドール主任教授にはグリモワールに書いてあることは読めないので、私が読んだり、魔法陣を書いてあげたりしているんだ。でも、不思議なことに何回書いても、魔法陣はすぐに消えてしまう。きっと、私が理解するためだけに図解が記載されているのだろう。その研究の中で、広域殲滅魔法の種類、性格、相手に与えるダメージ、必要とされる魔力総量などが明らかになってきたのだ。ダンドール主任教授はガッカリしていた。自分が広域殲滅魔法と思い込んでいた魔法は、その1ランク下の中域殲滅魔法に過ぎないという事が分かったからだ。
話が飛んでしまったが、そういう訳で、こと広域殲滅魔法に関しては、私の方が使いこなせるし、おそらく連続して放つことも可能だろう。だから、地竜に対しても効果的な攻撃ができると思う。思うんだけど。
「あのう・・・。」
「なんだ、言いたいことがあれば言ってみろ。」
父上、言い方が怖いんですけど。泣いちゃいますよ。
「その地竜という魔物、魔法で討伐しなければならないのでしょうか?」
「はあ?お前、何を言っているんだ。魔法で討伐しようとしているから、お前を呼んだんだろ。」
「そうなんですけど、そのう、剣で討伐って無理なんでしょうか?」
会場中が凍ってしまった。5歳の子供が、剣で地竜を討伐したいなんて、どう考えても気が狂っているとしか言いようがない。
「いや、無理ではないかもしれない。竜には逆鱗というい急所があって、そこを的確に突き刺せば致命傷を与えられるだろう。しかし、あの巨大な地竜に1か所しかない逆鱗を攻撃するなど、遠く離れた針の穴に糸を通すようなものだぞ。」
「いや、坊主、そりゃおもしれえ、おめえ、やってみりゃ良いじゃねえか。」
シュリンガー団長のドラ声が響く。この人達って、どうしてこんなに声が大きいんだろう。地声だっていうけど、耳が痛いんですけど。
会議が終わって、国王陛下の執務室を訪れた。何か用事があるらしいのだ。
初めて国王執務室に入ったが、広いなんてもんじゃない。入り口のドアから陛下の座っている席まで50m位はある。途中で、ソファやらミーティング用の机が並んでいて、両脇には、警護と思われる近衛騎士さん達が3m間隔で立っている。これで大きなハルバートを持って、フルアーマーなら、よくお城で見る鎧の飾りのようだ。
執務机の前のソファに国王陛下、女王陛下、ブルーム殿下そして父上が座り、私は、国王陛下の正面に立っている。ソファの間には、通常置かれているテーブルが片付けられているので、国王陛下と私の間をさえぎるものはない。
「フレデリック・フォン・ランカスター。」
「はい。」
「これをやろう。」
国王陛下の脇から、トレイに乗せた短剣を持った侍従が跪く。おもむろにその短剣を持った国王陛下は、グイッと、短剣を私の方に差し出す。私は、跪いて両手でその短剣を受け取った。短剣といっても刃渡りの長さが50センチくらいはありそうだ。日本刀の脇差し位の長さだ。私にとっては結構長く感じる。その時の国王陛下のニヤリと笑った顔が気になったが、貰える物は貰っておこう。
「これは王家に伝わる宝剣だ。伝承は知らん。だが、切れ味は抜群らしい。この剣で地竜など切り裂いてしまえ。」
「はい、必ずやご期待に添えますように。」
ブルーム殿下がうらやましそうに見ていたのに気が付いた国王陛下が、
「ブルーム、そちには皆の前で遠征将軍の印綬と宝剣を与える。それまで待つのじゃ。」
うん、そうだと思った。私だけもらえるのって片手落ちだもんね。
「それで討伐遠征に当たって何か望みはないか。」
えーと、何も思いつかないのですが。
あ、そうだ。あれにしよう。
何故か、討伐のメイン火力になっています。5歳の子にさせることではありません。
次話は、明日6:00に掲載予定です。
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