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27 婚約者が遊びに来たようです

 総合アクセス数が8000PVを超えました。これも皆様のご支援のおかげです。ありがとうごじゃいます。


 ベス嬢は、フレデリックが王都に帰ってしまってさみしいようです。

 アスラン暦462年の暮れも押し詰まったころ、ベス嬢が王都屋敷に遊びに来た。王城内の公爵邸に父と一緒に来て、そのまま我が家まで来たようだ。今日は12月24日、元の世界ではクリスマスイブだ。もちろん、この世界ではそんな信仰はないが、何故か今日は男性から愛を告白する日だというのだ。解せぬ。


 応接室で、ベス嬢が、さっきからソワソワしている。何かしたいのだろうか。あ、もしかして。


   「トイレは、向こうだよ。」


   「違います。レディはそんな下品な所へは行かないのです。」


 さすが、3歳半にもなれば、幼児言葉は卒業だろうけど、なんか変な喋り方を覚えたみたい。


   「そうか。それじゃあ、お腹減ってるの?何か、食べる?」


   「お腹は減ってないですけど、何かって何ですの?」


   「うーん、マシュマロ?」


   「マシュマロって、今、王都で流行っているあれですの?食べるです。」


   「スザンナ、昨日、母上から貰ったマシュマロ、まだあったかな?」


   「はい、少しですけどありますので、お茶の準備をしますね。」


   「少し待ってね。それで、今日は何の用なの?」


   「私はフィレ君の婚約者なのです。用が無くても会いに来て良いのです。」


  「そりゃそうだけど。王都に来るのに、途中1泊しなければいけないでしょ。それに冬の旅は危険だし。」


 そう、冬の旅は危険なのだ。日は早く沈むし、寒くて身体の動きが緩慢になるし。それに急に天候が変わって吹雪になることもあるし。


   「でも、フィレ君、全然遊びに来ないですわ。それって変ですわ。」


   「だって、11月末だよ。こっちに来たの。まだ1月しか経ってないし。」


   「1月もですの。1月も会ってないですの。」


 ちょうどスザンヌさんがお茶の準備をして部屋に入って来た。今日のお茶は体が温まるように、レモンと蜂蜜がたっぷり入っていた。それとマシュマロ。前の世界でもたまに食べたが、この世界では高級スイーツらしい。砂糖と新鮮な卵白が入手しにくいし、バニラエッセンスやゼラチンも新しい食材らしい。


 ベス嬢は、しっかりと全部食べてから、


   「それで、フィレ君は、私に伝えたいことがあるでしゅ。あ、すです。」


 うん、まだ『さ』行に自信がないみたい。それより伝えたいって何の事だろう。


   「あれです。モフモフのフワフワです。」


   「ああ、シュナちゃんか。2階の私の部屋にいるよ。』


   「見たいです。モフモフしたいです。」


   「今、連れてくるよ。」


 2階からシュナちゃんを連れて来ると、もう大変。目がハートマークになり、


   「はじめまちて、ベシュちゃんでしゅよ。」


 あっという間に幼児語になってしまった。それからは、モフモフするわ、ひっくり返してお腹をさするわで、犬なのに猫可愛がりだ。シュナちゃんも、嫌がるでもなく、なすがまま、されるがままになっている。


   「ねえ、シュナちゃんてワンコだよね。」


   「うん、そうだよ。」


   「その割に目の色が赤いのは何故なのです。」


   「え?赤いの?気が付かなかったな。いつもは、ちゃんと黒いよ。」


   「えーと、目の色が赤いのって魔物特有らしいですのよ。でも、どう見てもワンコよねえ。」


 シュナちゃんは、我関せずで、ベス嬢の手に戯れている。まあ、可愛らしいワンコだし、性格も良さそうだし、別に狩猟とか魔物討伐に使う気もないので、特に不満はない。


   「ねえ、シュナちゃんって、どこで見つけたのです?」


   「うん?川のそばの葦原の中だよ。」


   「親犬はどこでしたの?」


   「そう言えばいなかったな。」


   「それって絶対におかしいです。こんな仔犬が1匹でいたなんて。」


   「でも、ポイズンベアに襲われたみたいだし。」


 謎が深まるばかりだが、どんなに考えても分からないので、ワンコはワンコという事で良しとしよう。


 スザンナさんが、私を手招きで呼んだ。何だろうと思って側まで行くと、小さな紙包を渡してくれた。


   「今日は、告白の日ですので。これを渡して、今年1年のお礼を仰って下さい。」


 スザンナさん、お茶の時間に、誰かに買いに行かせたのだろう。私が受け取ったら、グーを上下させて『ファイト』って、何をファイトなんだろう。


 私は、ベス嬢のところに戻って、そっとプレゼントを差し出す。


   「ベス嬢、今年は婚約してくれてありがとう。来年も宜しくね。」


 ベス嬢は、顔を赤くして、『告白の日のプレゼント!告白の日のプレゼント!』と呟いている。


   「中を開けてごらんよ。」


 ベス嬢が、包み紙を開けて見ると、中にはピンク色の綺麗なリボンがあった。ベス嬢の髪の色と合わせたようだ。それを、うっとりと見ていたベス嬢は、急に立ち上がると、


   「私、帰りますわ。」


   「えー、今、来たばかりだよね。もう、帰るの?」


   「用事を思い出したのですわ。それでは、良いお年を。」


 私は、慌ただしく帰って行くベス嬢を見送りながら、なんか気に触るような事をしたかなと考えてしまった。


 年末も30日になった。リバーシの制作販売を任せている商人のバートさんが訪問してきた。現在は、注文を受けて製作しているが、貴族から注文が殺到して生産が間に合わないと言っていた。


 それで年内の売り上げ報告に来たらしい。リバーシは、1セット大銀貨3枚半、つまり35000ジェルで売り出したようだ。メルボルン領都と王都の店だけの限定販売だが、既に120セット売れたそうだ。販売価格の20%が考案料なので、1セットで7000ジェルが私の取り分だ。と言う事は、84万ジェルが私の取り分で、商業ギルドに作った私の口座に入れてくれたそうだ。あ、臨時ボーナスだね。来年は、丸が1つ増える位売れるだろうと言っていたけど、私みたいな幼児には多すぎるのではないですか?







 年が明けて、アスラン暦463年の元旦を迎えた。今年の誕生日で5歳となる私は、貴族の子息として恥ずかしくないようにと習い事が始まる。まあ、ジョルジュ兄ほどではないが、それでも午前中一杯は習い事に潰され、自分の鍛錬が出来なくなるだろう。社交ダンスと音楽は必須科目だ。その他にマナーや貴族礼式も学ばされる。


 午後は、街に出て孤児院や診療所の慰問に派閥貴族の子女とのお茶会、観劇や音楽会など貴族としての嗜みを学ばされる。楽しみなのは、剣術と魔法、それと乗馬くらいかな。兎に角、全ては決められた通りのスケジュールで進められる。


 それでもジョルジュ兄みたいに、王政や領地経営の勉強がないだけマシだろう。考えただけで、ため息が出てしまう。


 自己鍛錬メニューを変えなければ。まず朝5時に起きて、駆け足だ。1時間で15キロ走り込む。それから木刀の素振りを500本。それからショートソードでの型の練習だ。仕太刀、打太刀をそれぞれやるが、相手は魔法で制御している模擬剣だ。朝食後は、家庭教師が来るまで魔力操作だ。空中浮遊した自分自身に風魔法を吹きつけて、いろいろな方向に移動する。本当に微風で動かすが、繊細な魔力操作が必要だ。後は夕食後、午後9時に就寝するまで、素振り500本と腕立て、腹筋をやり続ける。よし、頑張るぞ。


   フレデリック・フォン・ランカスター

   アスラン暦458年2月14日生まれ(4歳10か月)

   人間族 男性

   レベル 5

   HP   698

   MP 3,978

   魔法適性 全て

   称号:日本からの転生者

      神童

   スキル:剣道錬士6段

   逮捕術上級

   高校教諭(体育)

   中学教諭(体育)

   瞬動(中級)

   鑑定(初級)

   神の加護

   錬金術(上級)


 今日の夕食は、家族全員が揃っての食事だ。アリスちゃんもディナーデビューで、母上と私の間に座っている。アリスちゃんの担当侍女は15〜6歳位の若くて可愛らしい娘さんで、うちの騎士団出身の騎士爵の娘さんらしい。スザンヌさんだって、若い時は、もっとすらっとして可愛い顔をしていたと思うんだけど。ゲホ、ゴホ。何かいやな視線を感じた。このことを、これ以上考えるのは危険だ。


 アリスちゃん、ナイフとフォークを使っているが、まだお肉やお魚は綺麗に切れないみたい。私が、最初に全部切ってあげると、


   「フレお兄様、ありがとう。」


 って、可愛い。尊い。爆死しそう。そんな私達を見て、父上が


   「アリスには、未だ早かったかな。」


 と言ったが、誰でも、必ずできるようになるから、少しくらいは大目に見てほしい。食事後のティータイムでは、恒例の新年の抱負を述べるのだが、私は、勿論、今年から始まる貴族教育の習得だ。全ての科目で父上の満足するレベルを達成したい。そのために、自己研鑽を怠りなく実践する所存だと申し上げたら、父上が呆れた目で私を見ていた。解せぬ。


 何か欲しいものは無いかと聞かれたので、素振り用の木刀が欲しいと答えた。今、使っているものより少し重いものが欲しいと答えたところ、それ位ならとすぐに了解して貰った。正月明けに、ガンスさんの店に行かなくっちゃ。そう言えば、オーナーのドワンゴさんってどんな人だろう。今度、工房を見せてもらおう。別に鍛治に興味があるわけじゃあないけど、もしかすると錬金術の参考になることがあるかも知れない。それに『日本刀』。この世界に日本は無いが、玉鋼から打ち出される日本刀と同様の剣があるかも知れない。あれば是非一振り持ちたいと思っている。

 いよいよ、地獄の鍛錬が始まります。あ、フレデリックにとっては地獄でも何でもありません。通常の範囲です。

 午後5時に本日2回目の投稿をする予定です。

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