14 魔法にも適性があるようです
今回は、魔法についての考察です。4属性については妖精がいるようですが、光と闇の妖精って。
あの魔導書には、簡単な生活魔法の公式も書かれていた。公式といっても、すべての生活魔法の根本は同じらしいのだ。ただ、その属性が有るか無いかで使える生活魔法の種類が決まるらしいのだ。そして初級魔法の呪文も、公式の後に書かれていた。
火魔法:火の精霊よ。その力を我に示したまえ。大いなる力をもって、我がもとに顕現せよ。ファイア。
水魔法:水の精霊よ。その力を我に示したまえ。大いなる力をもって、我がもとに顕現せよ。ウオーター。
風魔法:風の精霊よ。その力を我に示したまえ。大いなる力をもって、我がもとに顕現せよ。ウインド。
土魔法:大地の精霊よ。その力を我に示したまえ。大いなる力をもって、我がもとに顕現せよ。アース。
光魔法:光を司りし者よ。その力を我に示したまえ。大いなる力をもって、我がもとに顕現せよ。ライト。
闇魔法:闇を司りし者よ。その力を我に示したまえ。大いなる力をもって、我がもとに顕現せよ。ダーク。
しかし、ライトやファイアは、媒体に作用させるだけの生活魔法だから、こんな長い詠唱はいらないはずだ。自分の体内マナを媒体に伝達して発動させるだけだから。その証拠に、今では、私はランプに向かって手を指さし、『ライト』と言うだけでランプに火が灯る。スザンヌさんは、ワンドが必要らしいが、それは魔力と魔力操作の差なのかも知れない。
私は、実験としてすべての生活魔法を使ってみた。場所は、朝の鍛錬場だ。魔力コントロールにより、手の平から放出される魔力は最小にして呪文を詠唱してみると、すべての属性魔法が使えた。
『ファイア』では、高さ1m位の火柱が生じた。
『ウオータ』では、直径1m位の水球が空中に現れた。地面に落ちて水びたしになってしまったので、次の『ウインド』と『ファイア』で乾かしたが、ウインドをドライヤ程度の風量にコントロールするのはかなり難しかった。
『アース』では、地面から1m位の高さの土塁が盛り上がってきたが、元の平らな地面に戻すのは少しだけ苦労をした。それよりも、剥げてしまった芝生を元に戻す魔法を知らないため、ちょっと反省する結果になってしまった。
『ライト』は、媒体がなくても50センチくらいの光球が高さ1m位のところに浮かんでいた。ランプもないのに光り続けるなんて、便利以外の何物でもない。
最後の『ダーク』は、私の周り1m位の範囲が暗闇に覆われた。これがなんの役に立つのかわからないが、日中、屋外で休憩するときに使おうかな。
と言うわけで、私には全属性の魔法適性があることが判明した。これも転生特典なのだろうか。まあ、これらの魔法も段々強化していけばいいかな。それよりも、私の当初の目標は、『鑑定魔法』についてだ。これが習得できれば自分の実力を正確に把握でき、伸長すべきところは伸長し、克服すべき欠点は克服するという、まさに合理的な能力強化ができるはずだ。『魔導書』にも『鑑定魔術』について、記載があったが、鑑定魔術を使うためには、まず、魔力感知と気配感知それから物事に関する知識が必要だと書かれていた。いくら鑑定技術を会得していたとしても、見たことも聞いたこともないものを見て、これが何かわかるはずがない。あの青い猫がおなかのポケットから出す『鑑定メガネ』は、アニメの世界だから可能なのであって、知識がないものを鑑定できるわけがないのだ。ただし、その組成成分を分析したり、他人が名付けたものであるならば鑑定魔術で判明することがあるらしい。まあ、魔力感知と気配感知があるのだから、ある程度の『鑑定』はできるのではないだろうか。
もう少し、鑑定魔術の項目を読んでみる。鑑定とは、その物質もしくは生物の本質を見極めることであり、その第1歩は、自分の魔力を対象に流し込み、魔力で相互の存在を共有するところから始まるらしい。そうして、魔力で収集した情報の中から必要な情報のみを取捨選択して、ある一定の規則に従い、術者にわかる情報としてフィードバックするらしいのだ。うーん、どうしようか。とりあえず、自分がよく知っているもの、この木刀を鑑定してみよう。
鑑定魔術の魔法陣をよく見て、術式を覚える。結構複雑だが覚えられないほどではない。文字にして覚えるのは不可能だが、絵柄と文字のセットならば覚えるのも可能なレベルだ。
・・・・よし、覚えた。早速、木刀を鑑定してみよう。鑑定魔法陣をイメージして、
「鑑定。」
木刀の近くに魔法陣が浮かび、その魔法陣の中心に私の魔力が流れ込んで、その先の木刀を包み込む。使用する魔力量は大したことはない。暫くすると、魔力を通じて情報が自分の意識の中に流れ込んでくる。
木刀
紫檀でできている
長さ50.12センチ
重さ586グラム
太さ 計測不能
うん、この情報は正確だと思う。太さが計測不能なのは、柄から剣先まで太さが一定しないので、そういう風に出たのだろう。握りの太さと思いながら、もう一度魔力を流すと
太さ(握り部)直径28ミリ
なるほど、やはり細かく計測するためには細かく指定しなければならないみたいだ。さあ、それでは自分自身を計測してみよう。
鑑定魔法陣をイメージし、対象を自分自身にしてみる。自分の頭上に魔法陣が現れた。魔力が自分自身から流れ込み、また自分自身に流れ込んでくる。不思議な感覚だ。あ、情報が取れた。
フレデリック・フォン・ランカスター
アスラン暦458年2月14日生(3歳)
人間族 男性
レベル 1
魔法適性 全て
称号:日本からの転生者
随分とサッパリした鑑定結果だ。これではほとんど役に立たない。次に魔導書を鑑定してみる。
「鑑定」
魔導書の情報が頭の中に入ってくる。
ワールド・グリモワール(世界魔導書)
ページ数不定
内容 判読不能(所有者のみ判読可)
所有者 フレデリック・フォン・ランカスター
え、これだけですか。世界魔導書って、なんか物凄い名前なんですが。それにページ数不定って、増えたり減ったりするんですか?あと、所有者って、私、いつ所有者になったのかな。あ、父に欲しいものを聞かれたとき、絵本って答えたけど、この本って絵本なの。魔法陣が書かれているから、絵本に見えなくはないけど。まあ、私が読めるから特に問題はないけど。
魔導書の中の『鑑定魔術』の欄を読むと、鑑定レベルというものがあって、レベルが上がると、鑑定できる項目が増えるらしいのだ。でも、どうやってレベルを上げるのだろうか。そこまでは魔導書に書いてないので、試行錯誤をしていくしかないかな。うん、しかし、何となく楽しくなってきた。これで、これからの目標が増えたぞ。
◆
3月になって、ベス嬢の実家に行くことになった。メルボルン公爵家は未だ王弟殿下が現役の公爵なので、ベス嬢の父君バーン卿は、王都北部に接している公爵領の領都にお住まいになっているそうだ。平素はベス嬢も公爵領のお城に住んでいるのだが、今回は、ベス嬢のお爺様つまりメルボルン公爵にご挨拶をしてから公爵領へ向かうことになっている。
王都にある公爵邸に行ってみて驚いた。ほとんど王城の中である。王城は、深い堀と高い塀に囲まれており、簡単には侵入できないようになっているが、その正門から王城内に入り、しばらくまっすぐ行った先の分かれ道を右に行った先に公爵邸がある。と言うことは、自宅の警備が必要ないということで、合理的ではあるが、町に出入りするのにいちいち正門を通らなければいけないのも不便な気がする。
私は、母上と一緒に公爵邸を訪問したのだが、母はあの性格だ。全く物怖じすることなく、『あらあら、立派ねえ。』とピントのずれたことを言っている。公爵邸に到着すると、すぐに執事と馬丁が出てきて、馬車から降りるための踏み台をセットしてくれる。
「どうも。」
それだけ言って母上は、軽やかに馬車から降りたが、最後にピョンと跳ねて降りる癖はやめてもらいたい。完全にレディの行いではありませんから。母上は、当然に気にすることなく、執事の案内で邸内に入っていく。私は、その後ろから小さくなって(最初から小さいけど)付いていく。
応接室は、玄関大広間の奥にあり、20人くらいのお客様が一度に来ても大丈夫なくらいの広さだ。テーブルが3卓あり、私たちは中央の一番豪華なテーブルセットの中央に隣り合って座った。
メイドさんが、お茶の準備をしてくれたが、母上は茶菓子のクッキーをポリポリ齧りながら主の入室を待っていた。当然、私などはお茶ものどを通らない。暫くすると、奥の扉が開き、50前の背の高い男性が入ってきた。後ろからベス嬢が付いてきているところを見ると、この人物がメルボルン公爵閣下なのだろう。公爵閣下が入ってくると同時に母上は立ち上がり、ソファの脇に移動して、公爵閣下に挨拶をする。綺麗なカーテシーを決めてから、
「お久しぶりです。メルボルン公爵閣下。本日は、息子フレデリックのためにお時間をいただきありがとうございます。」
「うむ、久しいのう。確か、昨年の王室園遊会以来かのう。息災であったか?」
「ええ、おかげさまで。閣下もお変りもなく。」
「うむ、まずは座るがよい。」
私は、何も言えずに黙ってソファに座った。ベス嬢は、目の前のクッキーをポリポリ食べ始めている。絶対、母上と同類だな。この子は。公爵閣下は、座るとジッと私の方を見ている。何か緊張するというか、黙っているのが悪い気がしてきた。私は立ち上がり、
「ご挨拶が遅れました。王室軍務卿ヘンリー・フォン・ランカスター侯爵が3男、フレデリック・フォン・ランカスターと申します。以後、お見知りおきの程、よろしくお願い申し上げます。」
と挨拶をした。座ってよいという許可がないので、立ち続けていると、
「フィレ君、ちゅわったら。」
と、ベス嬢が助け舟を出してくれた。公爵閣下も『うむ。』とうなずいていたので、遠慮せずに座ることにした。暫く沈黙がつづいていたが、突然、母上が、
「で、どうですか。うちのフレデリックちゃんは?」
いきなり、本質を突いてくる。貴族らしさとか奥ゆかしさなんて全く関係ない、ド直球を投げ込んでいく。
「まだ分らんが、うちのエリザベスが随分気に入ってな、毎日、フィレ君、フィレ君とうるさいのじゃ。」
突然の爆弾発言に、ベス嬢は顔を真っ赤にして
「じいじ、いや。はじゅかちいでちょ。」
「ハハハ、何を恥ずかしがっておるんじゃ、ベスの夫になる男を気に入っておるのじゃ。恥ずかしいことがあるか。」
えと、私は一体どこにいるんでしょうか。
ベス嬢の幼さが目立っています。
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