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100 ブルーム殿下は汽車に夢中のようです

 あっという間に100話です。本当は、学園編に入っているはずでしたが、どんどん長くなってしまって。でももうすぐ、少年期編は終える予定です。

 王城に近い高級レストランの個室を予約していた。今まで入った事がなかったが、最近、シェフが変わって新作が話題になっているらしいのだ。勿論、今日は、その新作をメインにしたおまかせフルコースだ。


 そして料理が進んでいく中、いよいよ新作が出てきた。新作は、シェフがテーブル脇まで来て、牛肉の薄切りをお鍋のお湯に潜らせて、白っぽくなったら取り出してスープに漬けてからお皿の上に乗せてくれる料理だった。これって『しゃぶしゃぶ』ですよね。お肉は、クセもなく適度に脂の乗った、いわゆる5等級の牛肉だったが、私はこの料理の発案者が気になって仕方がない。シェフに聞くと遠い海の彼方の大陸の古い神殿の棺の中から見つかったレシピで、最近、解読ができたようだとのことだった。


 おそらく、この世界の古代に転生した日本人がいたのだろう。この世界、地球の文化や風俗が色濃く残っている気がするが、最近の事象を聞かないところを見ると、全て過去においての転生だったのだろう。


 楽しい食事が終わり、スイーツを食べながらプレゼントをそっとテーブルの上、ベス嬢の前に置く。


   「これは、いつも世話になっているベスちゃんへのプレゼント。受け取ってくれるかな。」


   「まあ、嬉しいのですわ。私からは、これをどうぞ。」


 そう言って、バッグから出したのはドラゴンのぬいぐるみのようなアクセサリーだ。うーん、トカゲ?えーと、ワニじゃないよね。


   「これは、私が作りましたの。ドラゴンはウエスタン家のシンボルですもの。」


   「ありがとう。大事にするよ。ベスちゃんと同じくらい。」


 あ、ベス嬢、真っ赤になっちゃった。


 次の日、王城第二離宮を訪ねた。ブルーム殿下に会うためだ。ブルーム殿下は、何故か私より10センチ位大きくなっていた。私は、132センチと9歳男子の平均身長くらいだが、ブルーム殿下は10歳児にしてはかなり大きい方だ。まあ、食事も改善されたし、毎日の鍛錬も欠かさないようだから、父君の国王陛下並に大きくなるのだろう。あ、国王陛下、2m越えの大男ですから。謁見の間では遠くてそれ程とは思わないけど、執務室なんかだと大きさが実感できるようだ。


 丁度、午前の勉強が終わったばかりだった。ブルーム殿下、私に会うたびに泣くのはやめて下さい。まあ、久しぶりなのは久しぶりなんですが。殿下達が食事をしている間に、大広間の一角にレールをセットしておく。このレール、前世の鉄道模型を参考に土魔法と錬金術で作ったものだけど、電動ではないのでレールの繋ぎ目を通電する手間がないだけ簡単に作れた。


 模型といっても24分の1スケールなので、ドイツのGゲージよりも少し小さいくらいだ。しかし軌間は600mmと広軌仕様にしている。ストレートレールは長さが100センチ、カーブレールは半径300センチの巨大スケールだが、超広い大広間では、部屋の半分程度で済むようだ。予備のレールも持ってきたが、それは殿下が色々とレイアウトを考えれば良いだろう。


 初期セッティングでは、長径16m、短径6mのオーバルレイアウトだ。カーブレール8本、ストレートレール8本を使ったが、予備がそれぞれ8本ずつあるのでレイアウト次第では、かなり大きなものができるだろう。C62と、客車2両をレールの上にセットする。台車と連結器はオリジナルだが、簡単な構造にしておいた。台車にはサスペンション機構を付けていないので、このまま実写にすれば振動が酷くて、まともには乗っていられないだろう。


 動力は蒸気機関とは言え燃料は魔石なので煙は全く出ない。まあ、蒸気は出るけど、そこは勘弁してもらいたい。炭水車に水を入れ、ボイラーの下に火魔石をセットする。石炭代わりにクズ魔石を炭水車に入れて雰囲気を再現している。


 ブルーム殿下達が食事を終えて大広間に出てきた頃には、セッティングは終了していた。シュッー、シュッーと蒸気を吐き出しているC62にブルーム殿下は目が釘付けだ。


   「フレデリック、これは何?」


   「今度、我が領内で稼働する魔動汽車の模型です。お湯を沸かして動かすようにしています。」


   「えーと、お湯で動くの?でも、なんか格好いいね。」


   「もう、魔石でお湯を沸かしておりますので、すぐに動きますよ。」


   「うん、動かしてみて。」


 私は、運転席の横にあるバルブを開けて行く。これが速度調整バルブで、前部シリンダーの圧力を調整するのだ。それから、前進ギヤをオンにして、後は走り出すのを待つ。前進・後退は逆転機で行うのが普通の構造らしいのだが、残念な事によく分からなかったので、大きなギヤを噛ませて対応した。


 でも、プシューという音と共に走り始めたので、殿下は大きな目を見開いて見つめていた。カーブレールには、内側に傾くようにカントを付けているので、カーブで脱線する事はない。


 「これ、どうやって止めるの?」


   「運転席の脇のレバーを後ろに倒すと、蒸気圧が抜けて自然に止まります。まだブレーキが無いので、止まるのを待つだけですね。」


   「ねえ、やってみていい?」


   「どうぞ、やってみて下さい。」


 殿下は、走ってきたC62の圧力レバーを後ろに倒すと、半周先くらいで停止した。そこまで行って、恐る恐るレバーを前に倒すとゆっくりと走り始めた。何故か殿下が得意そうに笑っている。


 ガーゴトン!シュッシュッツ! ガーゴトン!シュッシュッツ! ガーゴトン!シュッシュッツ!


 うん、試運転は成功だね。10分位走行しても、パイプからの蒸気漏れ等もなさそうだし。シリンダーやクランクも異常なしだ。


 本当は、差し上げても良いんだけど、100キロ近くもあるC62では、扱いに困るだろう。48分の1スケール、いわゆるOゲージの弁慶号でも20キロ程度の重さだ。レールも作ってないし。新年になったら72分の1スケールのHOゲージを作ってみるから、その時にプレゼントするからね。


 その時、何か考え中だった殿下が、『ちょと待っててね。』と言ってどこかに消えてしまった。暫くすると、シンシア様が2階から降りてきた。お元気そうで何よりです。殿下が、得意そうに魔動汽車の説明を始めた。そして、最後にウエスタン領内に、この鉄道を敷設すると言う説明をしたところで、何か考え始めたご様子だ。あれ、少し不味いかも?


   「フレデリック卿、この模型、陛下に見せても良いですか?」


   「え?別に構いませんけど。」


   「それでは、少し待っていてね。」


 シンシア様は、簡単なメモを書いて、侍女に渡した。ここから王宮の本館までは歩いても30分以上かかるのに、暫く待つなんてどうするのだろうか?その疑問は、すぐ解けた。連絡用の伝書鸚鵡がいるのだ。鳩よりも頭が良く、大きな手紙を運べるし、近距離なら鳩よりも便利が良いらしい。


 40分後、第二王宮前に陛下の馬車が到着した。降りてきたのは、陛下の他にザイン宰相、軍務卿である父上、内務卿であるブレイン侯爵、財務卿のグリード伯爵だ。父上とは、3日前にお会いしたが、その時には魔動汽車の話はしなかった。あ、もしかして不味かったかな。えーと、ここは必殺知らんぷりだ。


 皆さん、大広間に設置されている巨大鉄道模型に驚くやら呆れるやら。まず、走らせてみる。陛下達を待っている間に、水と魔石は補給しておいたので、準備は万端だ。殿下が得意そうに操縦方法を説明しているが、国王陛下はろくすっぽ説明を聞いているようで、模型をガン見している。あ、この目、絶対『鉄ヲタ』しかも『模型鉄』の目だった。


 殿下が走行レバーを静かに前に倒すと、ゆっくりと動き始めたC62は、徐々に速度を増して周回速度に達した。3軸の動輪を回す連結棒の動きをじっと見つめる陛下、あのう、瞬きしないと目が痛くなりますよ。父上の呆れたような目線が怖いのは、気のせいでしょうか。


 走行中から、宰相や内務卿が、最高速度や走行距離、それと牽引車両数などを聞いてきた。まあ、完成品つまり実車が出来ていないのではっきりは言えないが、


   最高速度:時速60キロメートル


   牽引能力:60人乗り客車10両


   航続距離:魔石10キログラムで48時間2,880キロメートル


 魔石は、厨房のコンロ1つに30グラム程度の火魔石を使っていることを考えて、燃焼時間と火力を計算してみたが、勿論、石炭や薪を燃やしてもOKなのは言うまでもない。


 財務卿のグリード伯爵が、資金調達方法について聞いてきたので、鉄道債を発行する方法を説明したところ、半分いや3分の1を王国に出資させて貰えないかと頼んできた。勿論、公的資金が投入されれば債権の信用性もグンと上がるので、反対する理由などなかった。

転生チートといえば、やはり現代知識ですかね。


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