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99 クリスマスはないようです

フレデリック君は、趣味に走ってしまうようです。

 取り敢えず、試作機は大成功と思っていたけど、ベス嬢や使用人達は、あまり感動していないようだ。私的には、この世界の歴史を変える大発明(蒸気機関を発明したニューコメンさんやワットさん、ごめんなさい。)なのに、塩対応なのが解せないが、オートマトン兵に比べると、単に黒い機械がレールの上をグルグル回っているだけなんて、驚くに値しないと思いますよね。


 あと、客車や貨物車の台車や連結器を作らないといけないし、これは当分忙しいかもしれない。


 地下の作業場で、客車の試作品や、魔動機関車初号機の改良などをしていたら、あっという間に12月になってしまった。仕方がない。すべての工作道具や作成途中の模型を『ストレージ』に収納して、王都に戻ることにした。あ、周辺の貴族領を訪問するのは来年にした。やはり、喫緊の課題は、機関車や客車のプロトタイプを早く作って、鉄道会社に引き渡さなければね。あ、決して鉄道模型作りが男のロマンなんて思っていないからね。




 冬が駆け足で近づいてきた王都では、各家庭で冬支度をしている。薪や石炭の備蓄が始まっているのだ。大通りには、山のように薪を積み上げた馬車が何台も通っているし、裕福な家庭では、屋外の石炭ボイラー室でお湯を沸かし、蒸気を屋内に回しているようだ。もちろん、居間には、薪をくべる暖炉もあるが、それは暖房もさることながら、料理を温めたりにも使えるので、必ずあるようだ。王都屋敷では、玄関を入ってすぐの大広間に、巨大な暖炉が1つあり、あと、2階の執務室と主寝室に暖炉が設置されている。もちろん、ボイラーからのヒートパイプが回ってきていて、熱交換器が設置されているので、暖炉に火を入れる必要はないのだが、まあ、気分の問題かなとは思うんだけど。


 もちろん、我がウエスタン侯爵王都屋敷も屋外ボイラーで沸かした蒸気を各部屋に給気しているので、地下から屋根裏部屋までフル暖房となっている。朝5時に起きていくと、すでに今の暖炉には薪が燃えており、シュナちゃんが少し離れたところで丸くなって寝ている。そう言えば、シュナちゃん、拾ってきた時から殆ど大きさが変わらないのは、やはり魔物だからだろうか。魔物の寿命って誰も調べたことが無いみたいだけど、魔素だまりに長い間暮らしていた獣や虫が魔物化するのと、自然発生する魔物とはやはり生態も違うようだ。シュナちゃんは、狼のようだが、精霊?の特性があるようだ。


 私は、12分の1スケールの魔動機関車2号機を作り始めた。初号機が弁慶号になったのは、ボイラー室が短すぎたのが原因だ。同じ間違いはしない。今度は、まず自己流だが絵を描いてみる。描いてみて分かったのだが、私には絵のセンスがないのかも知れない。それでも何とかそれらしい形を描くことが出来たような気がする。後は、絵の縦横比を参考に、鉄のインゴットを錬成していく。


 ボイラー室の中を何本ものパイプが並んでおり、これなら、かなりの蒸気圧が得られる筈だ。ボイラーは燃料を燃やす火室と、火室の燃焼ガスが通る煙管、そして煙管を包み込む水タンクで構成されている。煙管に伝わった熱が周囲の水を沸騰させ、容器内は高圧になり、水の沸点は200度を超えます。発生した蒸気は、もう一度煙管の中に往復させて温度と圧力をさらに高め、より大きなパワーを効率的に得ている。熱を無駄にしない省エネ構造だ。


 出来上がりは、前世の『C62』にかなり似ており、満足のいく物だった。炭水車も入れると1m弱の全長になる大型模型だが、しばらく王都屋敷の玄関先に飾っておくことにした。でもスザンヌさんに『邪魔だ。』と言われてしまったのだ。黒い鉄の塊がドテッと置かれているだけで、美しくも何ともないと言うのだ。男のロマンを理解できないなんて。


 私は、試作2号機を『ストレージ』に収納して、ドワンゴ武道具店に向かった。武道具店では魔動汽車のような大きな工作物は作れないだろうが、鋼鉄や魔鉄などの精錬所を知っているだろうから、紹介して貰おうと思っている。


 ドワンゴ武道具店に行ってみると、ちょうどガンスさんが店番をしていたので、早速、裏庭で魔動汽車2号機を見せて相談をしてみた。ガンスさん、一眼見て、もう夢中になってしまい、暫くは会話が成立しなくなってしまった。うん、ガンスさん、このSL模型の素晴らしさ、分かってくれたみたい。


   「こ、これは、何かわからないけど、素晴らしさだけは伝わってきますぜ。見たことのない馬車のようだけど、魔道具ですかい。」


   「まあ、魔道具といえば魔道具だけど、魔力で動く訳ではないんだ。それで、これは実物の12分の1の大きさなんだけど、この模型の実物を作ることができる工房を知らないかな?」


   「この12倍の大きさですか?うーん、まず鉱山ギルドにお願いして鉄の精錬所を紹介してもらうのと、錬金ギルドで魔道具工房を紹介してもらうくらいかな。でも、これを作るなら、どこかの商会に工房建設からお願いした方がいいですぜ。」


 いえ、もう会社は立ち上げているんで大丈夫なんですけど。うーん、やはり工房建設から始めなければいけないのか。工房は、地元のウエスタン市に作るので、錬金術師も地元採用になるのかな。まあ、来年、ウエスタン市に戻ってからの作業としよう。ガンスさんの未練がましい視線を無視して、試作2号機を収納して店を後にした。


 年末までは、ブルーム殿下やメルボルン公爵にご挨拶に行く予定があったが、合間を見てアーサーにも会いに行った。アーサーが、巣穴からなかなか出てこなかったので心配したが、どうやら冬眠モードに入っていたようだ。竜種のような爬虫類系の魔物は、完全な冬眠とは違うが、3日寝ては1日起きて活動すると言うサイクルで餌の少ない冬を乗り切るらしいのだ。飛竜や古竜種が火山の上に巣穴を作るのは、冬眠しなくても済むかららしいのだ。でも餌場が雪に覆われている中で、餌を探すのもいやらしいので、なるべくエネルギー消費を少なくするため、冬眠モードに近い状態で眠り続けるらしいのだ。そう言えば、英雄譚の中で竜退治に向かうのは、必ず冬と決まっていた気がする。


 谷川は未だ凍ってはいないが、水量も少なくなっていて、アーサーの餌となる藻や水草も当然少ないようだ。私の持ってきた大量の野菜や魚を喜んで食べていたが、その姿を見ていたら、何だか可哀想に思えて仕方がなかった。


 そう言えば、アーサーはどこから来たのだろうか?以前、この川の上流に調べてみたことがあるが、狭い急流の先には高い滝があり、飛べないアーサーが、滝上からジャンプしたとは思えないので、上流から来た説はボツになった。となれば下流から来た訳だが、この川は大陸の東の果ての山脈から南の海に流れて行くイースト川の支流であり、どうやらそのイースト川のどこかがアーサーの生まれ故郷なのだろう。そのうち連れて行ってやるからね。





 12月14日、今日はベス嬢と夕食の予定が入っている。この世界では、クリスマスの習慣はないが、前世の記憶に従いデートをして何かプレゼントをする予定だ。昨日、王都1番の宝飾店に行って可愛らしい髪飾りを買っておいた。値段は金貨7枚程度とそれ程高くないが、真紅のルビーが3個あしらわれていて、ベス嬢の金髪に良く映える筈だ。あ、そう言えば、前の世界で別れた元妻には、婚約指輪以外に宝石のついた装飾品をプレゼントしたことが無かった事を思い出してしまった。まあ、あの当時、剣道バカだった私に、そんな事を考える余裕など無かったのだろうが、今世では、そんな事にならないように気を付けよう。


 午後5時、メルボルン公爵邸にベス嬢を迎えに行く。真っ赤なバラの花束を持っているのは、スザンヌさんの指示だ。応接間で待っていると、薄ピンク色のドレスを着たベス嬢が現れた。まだまだ幼児体型ではあるが、ドレスを着るといかにも令嬢と言う雰囲気たっぷりだ。スザンヌさんに言われていた通り、


   「今日のドレス、ベスちゃんの綺麗な瞳とマッチして、とても可愛いよ。」


 と褒めてあげた。スザンヌさんは、ベス嬢がどんな色のドレスを着ていても、同じ言葉で褒めるようにと言われていたが、効果覿面、ベス嬢、顔を真っ赤にして、

『あ、ありがとう。』とお礼を言ってくれた。チョロい。


 

クリスマスは、限定された宗教のイベントだそうです。

ストックがなくなってしまいました。これからは、出来次第アップします。

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