新機能を知りました。
「あ!タケルだ!!」
中庭に戻ってきた俺を、エッシェルが指差す。
「何かあったの?」
シエラが心配そうに問う。
「いや、大丈夫だ」
「やっぱタケル強いね!!!」
「思った通り相変わらすの圧勝だったね……」
「そ、そうだな」
正直俺は全然勝てると思ってなかったがな。
「ねえねえ!早く部屋に戻って紅茶淹れようよ!!」
「そういえば紅茶を淹れようとしてたんだったな」
「ボクもいいかな!」
「もちろんだ!」
そうして、俺たちは部屋に戻って来た。
「確か茶葉がここら辺に……」
俺が茶葉を探しながら、ティーポットが置いてある棚の扉を開けると。
そこには一枚の紙があった。
「なんだこれ」
こんな紙は俺たちが中庭に行く前には無かったはずーー
その紙には、こう書かれていた。
"今日の午後10時、一人でギルド本部前まで来い"
……!!
「タケル、茶葉あった?」
「あ、ああ」
紙をポケットに入れ、紙の奥にあった茶葉を取る。
恐らく、いや間違いなく今の紙は俺に向けてのメッセージだろう。
だがエッシェルやシエラが先に発見する可能性は考慮しなかったのか……?
いや、そんなはずはないだろう。
この紙を置いた人物は俺たちが紅茶を飲もうとしていて、そして俺が紅茶を淹れることを知っていた。
ということは、俺たちが部屋でしていた会話が聞こえていたということ。
……ということは監視されているのか?
だがこの部屋の中をどうやって監視したんだ……?
俺は紅茶を淹れながら、壁を見る。
そうか!!通信魔法で盗聴されたのか!!
ということは俺たちがこの部屋にいることを知っていて、通信魔法を利用できる城内の人物……
まさか王!?
……いや、それはないな。王は俺たちの試合を見ていた。
だとしたら俺たちを案内した兵士?
いや、兵士にそこまでの行動をできる権利はないし、他の兵士に気付かれる。
しかし俺たちがこの部屋にいる事を知っている人物なんてそう多くはいない。
ユティナ姫だって俺とずっと一緒にいたわけだし、そんな事をできる時間などない。
ということは俺たちが部屋に案内されたところを誰かが見ていた……?
俺が紅茶を淹れようとしていたのも、"聞いていた"からではなく"見ていた"から!?!?
ということは今も見られている!?
右の壁、左の壁、窓、扉、天井……
何か不審なものがないか見渡す。
監視カメラに当たるような魔法がある可能性だって存在する。
だが不審な点は…………
窓!!
俺たちを監視するには窓から覗くのが一番適している。だが、特に何も見当たらない。
……考えすぎだったか?
「あら、もしかしたら気付かれたんじゃないの?リリア」
「それはない。全部、ちゃんと私の思い通りに進んでる」
ある路地裏で、窓の外からある男が紅茶を淹れながら周りを警戒している映像が流れている水晶を眺めながら、二人のフードを被った魔人が会話する。
「もう大丈夫。あとは私一人でやる」
「リリアも一人で行動するのー?」
「ゼノアだってアザゼルだって一人でやるって言ってたし」
「むー、それは魔王をどう捕まえるかで二人が喧嘩したからでしょ?」
「もともと魔人は協力して何かをやることに向いてない」
「……分かったわ。私はここで引くわね」
背の高い方のフードを被った魔人が水晶を懐に入れ、路地裏を出て街並みに消えていった。
「あのヒューマン、どれだけ強いのかな」
フードを被った少女が、路地裏のさらに奥へと歩く。
「ああん?なんだテメェ!!」
「勝手に俺たちの縄張りに入って来てんじゃねえよ!!」
「命が惜しかったら金を置いて逃げな!!」
暗闇を歩く少女を、数人の男が取り囲む。
「…………」
しかし少女は無視して歩く。
「無視してんじゃーー」
次の瞬間、男達の頭が消えて無くなった。
ドサドサッ
男達の屍が地に倒れる。
「全てが私の、思い通りなんだから」
古代魔法を使えるというその少女が不気味な笑みを浮かべながら、闇に消えていった。
「紅茶淹れたぞー!!」
俺は紅茶を三人分淹れ終わり、二人を呼ぶ。
「わーい!!」
「やっぱり王城にある紅茶って美味しいのかな!」
二人が紅茶を持ち、テーブルのそばにある椅子に座り、紅茶を口に運ぶ。
「あのツンツンした姫の部屋にもあったから、きっと美味しいぞ」
俺も紅茶を持ち、椅子に座った瞬間。
「「ゲホッ!!」」
エッシェルとシエラが同時にむせた。
「どうした?」
「タケル、あの姫の部屋に行ったの!?」
エッシェルが勢い良く問い、シエラも勢い良く頷く。
「いや、ただ勘違いを弁解しようとしただけだが」
「変な事してない?」
「い、いや、してないぞ」
少し心当たりがあったがあれは何かの事故だ。
「なんだ、良かった」
エッシェル達が再び紅茶を口に運ぶ。
余計な心配だ。絶対俺あの姫に嫌われてるからな。
俺も紅茶を口に運ぶ。
「「熱っ!!!!」」
エッシェルとシエラが今度は同時に叫んだ。
今度は何だ。
「この紅茶熱くない!?」
「なんでタケルそんな簡単に飲めるの!?」
さっきむせた時はまだ紅茶が口についてすらいなかったのかよ。
というかそんなに熱くないぞ。
「俺は別にそこまで熱く感じないが」
「えー!?絶対熱いって!!」
「うーん、そんなにか」
「もしかして、タケルの防御力が高いからとか……」
シエラが言う。
「そういえば私の炎にも普通に耐えてたじゃん!!」
「あ、なるほど」
俺は自分のステータスウィンドウを開く。
だが、やはりそこに防御力や攻撃力といったステータスは見られない。
防御力とか攻撃力も、レベルが上がるに比例して強くなってるよう感じるが、HPによって勝手に決められたりするのだろうか。
そう考えながら気まぐれにステータスのHPやMPが書かれている場所を押す。
すると、ウィンドウの上にもう一つウィンドウが出て来た。
!?!?!?
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基礎ステータス
物理攻撃力:7613
魔法攻撃力:27698
速度:1291
物理防御力:1041
魔法防御力:19182
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なんか出て来た!?!?
なるほど、今までやってなかったからわからなかったがウィンドウって触れたのか。
なんか色々出て来たが、相変わらずこの数値がすごいのかが分からん。
今度は物理攻撃力の部分を触ってみる。
すると、さらにまた小さいウィンドウが出て来た。
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物理攻撃力
打撃や斬撃など、物理的な攻撃の強さを表した指標。
最大の力を込めた場合、この攻撃力が対象に与えるダメージとなる。
斬撃などの武器を伴った攻撃は、武器の攻撃力が加算された上でのダメージ
となる。
※パンチの重さをkgで表したものとほぼ同じ尺度で表されます。
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解説キターーーー!!!!!!!!!
俺は何故今までこの素晴らしい機能に気がつかなかったのだろう!!
まさか文字を押す事でその解説が見れたとは!!
てか俺のパンチ力やばすぎない!?!?7613kgあるんですけど!?!?
そうだ、紅茶が熱く感じなかったのはこの物理防御力のおかげなのかもしれないんだったな。
物理攻撃力についての解説が書かれているウィンドウを閉じ、今度は物理防御力の文字を押す。
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物理防御力
物理攻撃に対する耐性を表した指標。
物理防御力は攻撃をほぼ無効化できる物理攻撃力の最大値を表している。
この値を下回る物理攻撃のダメージ量は極端に下がる。
※物理攻撃力と同じ尺度で表されます。
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なるほど。紅茶の熱さによるダメージがかなり下がったおかげでちょうどいいくらいの熱さに感じたわけか。
それにしてもこの機能便利だな。どうしてもっと早く気付けなかったんだ。
そうだ、姫と戦う時にバフをかけた速度って奴も気になるな。
今度は速度の文字を押してみる。
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速度
動体視力や反応速度、そして移動速度や攻撃速度を表した指標。
この値が高ければ高いほど素早い動きを視認できたり、それに対応できたりする。
また、集中する事で速度の値に応じて時間の流れの感じ方が変化する。
移動速度や攻撃速度がこの値によって上がるのは集中時のみである。
この値が通常時の時間の流れや移動速度に変化を及ぼすことはない。
※速度の尺度を数値化するのは不可能に近いため、動体視力を目安として
数値化されている。移動するものを詳しく視認できる、そのものの最高速度が
時速何kmかで表したものが大まかな目安である。
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なるほど。だから姫の剣が普通に見えたり周りの時間が遅くなったりしたのか。
この解説の目安によると、俺は1291km/hで移動するものを捉える事ができるってことか。
……あれ、それって普段じゃ認知できないらしい姫の剣の速度は時速数千kmってことじゃね!?
うわ、余裕で音速超えてるじゃん。怖。
それにしてもこの機能便利だな。もしかしてこれってスキルにも使えたりするのか。
ちょうど今日の夜外に出るし、その時スキルとか魔法とかの実験も兼ねて見てみるか。
ニヤニヤしながら虚空を眺め、ときどき何もないところをつんつんする俺の奇怪な行為を見て、エッシェル達が唖然としていることを、俺はまだ知らなかった。
第50話突破しました!
いつも読んでくださり、ありがとうございます!!




