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ボンじぃ

 

 レインは宿屋から少し歩き、建物の間を通って裏通りに入っていく。

 人は減り、そこにいる人たちの雰囲気も表とは違ってどこかアウトローだ。


「こんな危なそうとこに連れ込んで、俺になるする気だ!」

「何馬鹿なこと言ってんの。いいからついてきなさい」


 ふざけたのに一蹴された。ちぇ。


「なんでこんなところの人と知り合いなんだ?」

「兄の事探してた時に色々とね」

「ふぅん」


 あんまりここら辺は触れられたくなさそうだな。まぁ別に俺もそこまで気にしてるわけじゃないし深入りはよそう。


「ここよ」


 そう言われた先にはこじんまりとした倉庫のような建物があった。


「ここが、鍛冶屋? 倉庫じゃなくて?」

「ま、見た目は倉庫だけどね。おーい、ボンじぃ」


 レインは閉められたシャッターを叩きながらボンじぃなる人物を呼ぶ。

 少しするとシャッターが開き、中から身長100センチ程度のおじいさんが出てきた。

 え、てか身長小さ過ぎない?


「やっほーボンじぃ」

「なんだ、お前さんか。ワシに何の用じゃ」

「こいつに武器を作って貰いたくて!」


 レインはぐいっと俺の手を引っ張ると俺を爺さんの目の前に突き出した。

 爺さんは俺をじろじろと見回すと、


「嫌じゃ」


 そういった。

 え? 俺の何がお気に召さなかったの?


「なんでよ。私の時はすぐ作ってくれたじゃない」

「お前さんはチチ触らせてくれたからのう」

「い、嫌なこと思い出させるわねこのジジイ」


 レインが珍しく憂鬱そうな顔をしている。


「ぷぷっ。なんだ、お前あんな爺さんにチチ触らせたのか。ビッチだったんだな」

「違うわよ! そうしなきゃ武器に魂が伝わらないっていうから!」

「そうなのか? 爺さん」

「魂? なんじゃそれ、知らん」

「このジジイーっ!」


 レインが今にもぶん殴ってしまいそうなので慌てて止める。

 なかなかとぼけた爺さんだな。


「作ってもらえないなら仕方ねぇ、帰ろうぜ」

「ふーっ、ふーっ。そ、そうね。ボンじぃなんかと喋ってるとストレスで死ぬわ」

「まぁ、待て。武器を作るにも素材が必要じゃからな。それを取ってきてくれたら作ってやるぞ」

「何よ素材って」

 

 あれ、なんかイベント発生しそうな感じだぞ。まためんどうごとが増えんのか?


「王都から少し東へ行ったところに森があるのは知ってるな? そこに出るファングボアから手に入るキバを取ってこい」

「ファングボアか……まぁいいわ。じゃ行くわよ大河」

「ああ。けどファングボアってどんなやつだ?」

「見ればわかるわ」

「そりゃそうだ」


 そう言われ、俺たちは森へと向かった。


「なぁ、あの爺さんっていくらなんでも身長小さすぎないか?」

「そりゃそうよ。あれは小人ドワーフ族だから」


 ドワーフ! なんか鍛冶とかが得意とか見たことあるな。

 なるほどなるほど。


「あれ? でもこの国って魔族は排斥してるんじゃなかったか?」

「基本的にはそうね。けどまぁ完全に追い出す事なんて無理ってことよ。彼が王都にいられるってことは彼を必要としている人物がいるってこと。王族も一枚岩ではないわ」


 ふーん。こっちの世界でもそういうところは変わらないんだな。


「じゃああの爺さん割とすげーのか?」

「噂では昔、世界七星剣と言われてる剣の一つをほとんどボロボロの状態から修繕したとか聞いたけど」

「世界七星剣ってなんだよ」

「知らないの? 歴史の中で明らかに人智を超えた完成度を誇る剣が七本あるのよ。それが世界七星剣」

「へぇ」


 人智を超えた完成度、ねぇ……。

 言われてもピンとこないな。


「話してるうちに着いたわよ」

「お、ここか」


 木々がうっそうと生い茂っている。生き物の呼吸音や鳴き声がそこかしこから聞こえるが姿は見えない。


「で、どうやって獣は見つけるんだ?」

「地道に探すしかないわ」

「なるほど」



 それから探すこと数十分、なかなかファングボアは見つからなかった。


「全然見つかんねーなー」

「しっ! あれ見て……」


 レインが指差す先には四足歩行のイノシシらしき巨大な獣がいた。


「お出ましか……」

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