武器をもらおう
「あれがファングボアか」
四足歩行で茶色の体表。下の口から立派に生えた二本のキバが白く光っていた。
ってかただのイノシシじゃねーか。とはいえ、大きさがイノシシの比じゃないな。1.5メートルはあるか?
「ブルル!」
「うわっ」
俺に気づいたらしく、奴が突進してきた。
動きは早いが直線的だ、避けれる。
俺はそれを避け、一発パンチをかましてやろうかと思ったが、すぐに奴は体勢を立て直し、突進してきた。
「大河! こっちに隠れなさい!」
「ちっ」
しょうがないのでまた避け、俺にだけ聞こえるように指示してきたレインに従い、草むらに隠れた。
「あまり足音を立てちゃダメよ。奴は獲物を見つけた途端襲ってくるから」
「んなこと言ったって、じゃあどうするんだよ」
「今のは武器を持たないあんただから言ったのよ。私には関係ないわ、見てなさい。サニーデイ!」
レインがそう言うと身の丈ほどの大剣が具現化する。
そのままレインはファングボアの前へと飛び出していった。
「ブルルルル!」
レインを見つけた途端、ファングボアは突進を仕掛けてきた。かなりの速さだ。
レインはその攻撃を避ける、
「やっ!」
わけではなく、大剣でなぎ払った。
圧倒的な衝撃がその場を襲う。
「ブヒィッ!」
ファングボアも巨体が吹き飛ぶ。
でもあれだけの威力なのに生きてる。やるなあいつ。
「ま、けど終わりね」
そう言ってレインはファングボアに剣を突き刺した。獣は断末魔をあげると、動かなくなった。
「やるなぁレイン。その剣重くないのか?」
「重くないわ、私はね。あんた持ってみなさい」
「おう……うおっ!」
レインから渡された剣をそのまま受け取った俺は思わず地面に膝をついてしまった。
それほどに重い。20〜30キロはありそうだ。
これをとてもじゃないが細身の女が持てるとは思えん。
「ね? 重いでしょ」
そう言うとレインは片手でヒョイっと俺の手元から剣を奪い取った。
「……お前って実はめちゃくちゃ中身ゴリラなのか?」
「何失礼なこと言ってんのよ!」
「おぶっ!」
思いっきり腹を殴られた。当たり前だが痛い。痛いけどやっぱりあの剣を持てるだけの力があるとは思えない。
「別に単純な話よ。これは私にだけ、重くないようになってるの。じゃなかったら実物の物を使えば良いだけでスキルの意味ないでしょ」
「言われればそうだな」
まぁ実物であんな大剣を振り回せる奴がいるのか疑問だけどな。
「ま、でもこれでわかったでしょ。間合いを取ったりするのにも武器は必要なのよ」
「お前は間合いとか関係なくぶっ飛ばしたけどな」
「うるさいわね」
けどレインのいうことにも一理ある。相手が武器を持ってる場合、相手は間合いを取れるが俺は取れない。それは戦闘においてかなりの痛手だ。
「じゃ、ちゃっちゃとキバを回収して持ってくわよ」
そして俺たちはキバを採取し、ドワーフの爺さんの元へと戻った。
「取ってきたわよ、ボンじぃ」
「うむ、ではこれがその小僧への剣じゃ」
「は?」
ボンじぃが渡してきたのは確かに剣。小ぶりだが使いやすそうだ。じゃなくて!
「なんじゃ? 何か不満か?」
「不満か? じゃなくて! 今から武器を作るんじゃなかったんですか⁉︎」
「そうよ! じゃなきゃなんのために私たち素材集めに行ったのよ!」
「何言ってんだお前さんら。あれは別に普通に他の剣を作る時に必要じゃから取ってきてもらっただけじゃ」
くっそーなんなんだこの爺さん。
「なんなのよもう! なんにせよ剣は貰っておくわ、ありがとね!」
「誰があげるなんて言った? 料金はきっかり貰うぞい」
「この爺さん殴っていいか?」
「良いわよ、私が許可するわ」
「なんじゃなんじゃ? 殴れるもんなら殴ってみぃ」
「おらぁ!」
やべ、煽られたので思わず拳を繰り出しちまった。
「あーらよっとー。遅いのう」
「えぇ⁉︎」
決して遅くはなく、避けれるはずのない近距離な俺のパンチを爺さんはまるで攻撃を読んでいたかのように避けた。
「気は済んだかのう。ま、わかったならさっさと金を出すんじゃな。少しはまけといてやる。300万ギルじゃ」
「さ、300万ギルーっ⁉︎ ありえないわよそんな金額! 伝説の名工じゃあるまいし。てか私の時はタダだったじゃない!」
「お前さんのは短刀だったし、何よりチチ触らせてくれたからの」
「どんだけそれ言うのよ! てか胸にそんなに価値あるの⁉︎」
「それはあるだろっ!」
「大河っ⁉︎」
思わず俺が突っ込んでしまった。
ボンじぃは、ふと俺を見つめると手を差し伸べてきた。俺はそれに応じ、無言の握手を交わす。
「……やるな、小僧」
「あんたこそ」
「意味わかんないんですけど」
これは男の世界だからな。
にしても300万ギルか、カジノで当ててよかったぜ。500万ギルはヤミがもしもの時のために持ってきてるからな。
「300万ギルは今手持ちにないから取ってくるわ」
「うむ、じゃあワシはレインちゃんと話して待っておるわ」
「ああ、じゃ待っててくれレイン」
「えっ、ちょ、大河! 待ちなさいよ! 大河ーっ!」
レインの叫びは放っておいて、俺はお金を取りにヤミの元へと向かった。




