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ヤンデレ腹黒王子と私  作者: モゴ
王宮編
16/18



ヘイリーと過ごす日中は穏やかだったし、色々な話をして笑い合ったが、日も暮れて事件以来部屋を移動した自室に戻るとあの夜の出来事が目に焼き付いていて、思い出したくもないのに急に頭に浮かび恐怖した、


襲われそうになった事よりも、大事な人が居なくなるかもしれない、それだけが一番、恐ろしく感じた


毎日、目を腫らして世話を焼くクレアに気付かないヘイリーではない


一ヶ月経った


起き上がれるようになってならは散歩程度は毎日、少しづつ距離を伸ばし体を動かしていたが、遂に本格的に政務に戻る事となった。


いつものように、身の回りのお世話を終えて、マクレーン家から大好きなクッキーが送られてきて、それを二人で向かい合ってソファーに腰を下ろし、お茶と共に楽しんでいた


「クー世話をありがとう、明日からは政務に戻る」

「そう...ですか、よかったです、お元気になって」


看病をしているうちに次第に会えなかった時間の壁は崩れて、二人は砕けた口調になっていた


「まだ...眠れない?」

「寝れています!全然!だい...じょうぶ...です」


尻つぼみになり、顔を俯いてしまった

ふふっとヘイリーは笑い


「嘘ついたらキスするよ、今度は口に」

「ふぇ?だっだめです!意地悪です!ヘイリー様は!」

「簡単だろ?嘘つかなければいい」

「...むぅ...」

「それで? 眠れてる?」

「はっ...いえ、眠れない日の方が多いです」

「目が真っ赤に腫れてるしね、知ってたけど...やっぱりあの時の事で?」

「そう...です、本当に...本当にごめんなさい...傷が」


ヘイリーの背中には刺された傷が大きく残ってしまった

事件から半月が過ぎた辺りに、エヴァン公爵から傷が残ってしまったと聞いたのだ、クレアは泣き出し、酷く落ち込んだ

ずっと言い出せず、クレアは心を痛めていた


「傷なんてどうとでもない、脱がなければ見れない」

「ですが...」

「そうか、クレアは脱いだ所を見たいわけか」


ニヤッと笑みを浮かべたヘイリーにクレアはたじろいで慌てて口を開いた


「見たくはありません!!」

「クーは傷を心配してくれてると思っていたが...違うのか」

「へ?もちろん!心配です!当然です...私のせいで」


ふっと笑うヘイリーだったが次第に真剣な顔つきになり、クレアは大好きな真剣な眼差しにドキドキとした


「クーの責任ではないよ、あれは元々俺とティモシーとの覇権争いからでた膿だ、殆どは抑えていたが、あのレバノン家だけが何故かティモシーの肩を持って...身から出た錆だ、クーは何も心配いらない、悪いのは全部俺だ」

「違います!気をつけてと言われたのに...」


「俺はクーを巻き込んでしまったのを後悔している...今もずっと、昔と変わらない優しいクーに舞い上がって、甘えて、気を抜いて...怖い思いをさせてすまなかった」

「謝らないで下さい!怪我をしたのはヘイリー様なのに!」

「もしクーが怪我をしたかと思うと...............とてもクーには言えない事をしてしまいそうだよ」



ヘイリーはゆっくりとクレアを怖がらせないように事件の話を切り出した



ティムと共にヘイリーと王宮で久しぶりに会った時、貴族達の中に、首謀者であったレバノン家の当主が居た。


二年前から公に動き出したティモシー派に、成人までに抑え込もうと奔走していた、元より殆どの貴族がヘイリー派であって、形勢はヘイリーに完全に向いていたが、何故が止まない派閥争い。そして何とか弱点を突こうと、ヘイリーのお気に入りをさぐり始めたティモシー派。


ヘイリーのお気に入り説はとても有名であった、その為、危険と判断したヘイリーとエヴァンは、二年前から完全にクレアへの連絡を絶った


しかし、二人の様子を見て、クレアがヘイリーのお気に入りであると判断し、間者を使い、クレアを亡きものにする計画を思い立ったそうだ


ヘイリーの想い人を大当たりさせたレバノンだったが、ヘイリーはその行動を事前に掴み、自体を起こす直前にレバノン当主に詰め寄り御用となった。レバノンから事の真相を聞き、クレアの元に駆け寄ったそうだ


事件の真相もそうだが、何より二年前の連絡が絶った理由も分かったクレアは少し放心した


(あんなに悩んだのに...全部私を心配してくれてたって事かしら...)


「ティム...ティモシー様は王になりたかったのですね…」

「いや、多分違う。他に理由があると思うが、あいつの考えはよく分からない。王にも向いていないし、なりより...あいつは変わってるからな」


え?っとクレアは思いっきりヘイリーに顔を向けた

変わってるのはお互いさ・・・ゴホン


「では何故このような行いを黙認したのでしょう」

「よく黙認と分かったな、ティモシーはレバノンをけしかけて黙認した。正直、ティモシーはクレアを気に入ってると思っていた、そこまではしないと踏んでいたんだ、俺が未熟だった...すまない」



黙認したティムだったが、事件には全く関与しておらず、ティムは以前と変わらない生活をしている




「そんな...ティモシー様はとてもお優しかったですよ...きっと何か特別な理由があるはずです」

「エヴァンが俺についているからな…」


ボソッと言った言葉はクレアには届かなかった


「へ?」

「そろそろティモシーの話は止めよう、クーの口から俺以外の名前を呼ぶのが耐えなれない」

「ッ!」


クレアは顔を真っ赤にして目を泳がせた

ヘイリーは目を細めて強めの口調で言った


「クーは何故ティモシーをティムと呼んでいたんだ?」

「まさかティムがティモシー様だとは知らずに...不敬でした...申し訳ございませんっ」


「そう、ならあいつで充分だな、これからはあいつと呼べばいい」

「出来ません!そんなティモシー様にむかって」

「呼ぶな!!今すぐにでも牢屋にぶち込みたいんだ、クーがティモシーを呼べば、余計許せなくなる...」

「そんな事いわれても...」


「クーを危険に晒して、愛称を呼ばせて...クーが初めて呼ぶ愛称は俺だと決めていたのに」

「初めてってどうして...知っているのですか?」


実はクレアは初めて愛称を呼ぶのはヘイリーがいいと決めていたので家族すら愛称で呼んでいなかった


「セバスチャンだよ、彼は俺と繋がってる、でも今はそんな事はどう「えーーーーー!!」......クー、驚きすぎだ」


「セッセバスチャン!?いつ?」

「別にセバスチャンはどうでもいい、そろそろ俺の愛称を呼んでもいいだろ?さぁ」

「セバスチャンがヘイリー様と繋がって......ひゃー!!」


クレアは立ち上がりその場で足をバタつかせた

ヘイリーの愛称の話をセバスチャンにしたのはクレア本人だった、まさか繋がってるとは思わずクレアは照れ笑いし、踊りだした


「ぷっ、アッハハ!ほんとにクーは見てて飽きないよ」


ヘイリーは立ち上がり、踊るクレアの目の前に立ち髪をひと房持ち上げ、愛おしそうに微笑んだ

クレアは顔を真っ赤にして体が固まった


「今度は静かになるのか?クーは忙しいな」

「ビックリしただけです!!」

「どうしてビックリする?」

「え?それは...それは...どうしてでしょう?」


ヘイリーはフッと微笑んだまま


「愛称は?」

「へ?」

「俺の事、愛称で呼んでくれるのだろ?ずっと楽しみにしていたんだ、早く呼んでほしい」

「もし...呼んだら引き返せなくなります。私は...ヘイリー様の前では決して呼びません。」


先程までにこやかに笑っていたヘイリーは

笑顔が一瞬にして消え、髪で遊んでいた手を離した


「まだ覚悟がつかない?まだ俺の愛が信じられない?」

「違います、ヘイリー様は国にとっても、わた私にとっても、大事な人です。ヘイリー様の結婚はもっときちんと、皆んなの意見を聞いて考えてするべきです!」


「まだそれを言うのか…、クーが俺と一緒にならないなら国はいらない、クーが俺と一緒にならないなら…俺は.........

生きていても意味がない」


「仰っている意味が...分かりません」


「分かっている癖に.....全くクーは...いつもそう言うね、本当に...ひどいよ…」


ポツっと床に何かが落ちる音がして、クレアは落ちてきたさきである、ヘイリーの顔を見た


「ヘイリー様?」

「クー以外いらない。国も家族も国民も。クーがいるから…クーが過ごす国だから頑張れたのに、クーは俺がいらないって…」


ヘイリーは泣いていた、目に涙を浮かべて必死に耐えていたが、大粒の涙が堪えきれず落ちていた。

失礼だと思ったが、ヘイリーの泣き顔は男性に言う言葉ではないが、とても美しかった。


今までと変わっていない、ヘイリーは実直で綺麗だ

いつもクレアには素直に嘘偽りなく接している、クレアを大事に思って


クレアは俯いた、ヘイリーはクレアに背をむけて涙を拭っていた


しばらく沈黙が続き、落ちつきを取り戻したヘイリーはクレアに向き合おうと振り返った


「つッッ」

「!! ヘイリー様?」


ヘイリーは刺された場所に手を当てて、片膝をついた

間髪入れずクレアは両膝をつき、傷の近くまで寄った


「痛みますか?すぐにお医者様を」

「大丈夫、冷えると少し痛むだけだ」


「名誉の負傷だな、クーを守れてよかった」


空いている方の手でクレアの手を握ったヘイリー



「これで最後にするよ、クーと呼ぶのも、会うのも」

「へ?」


「クレアは知らないだろうけど、こんな大きな傷がある王に嫁いでくれる人なんていないよ。体を悪くする可能性も高いし、何より、背中に出来た傷なんて、男として恥だ」

「そんな!!ヘイリー様は私を庇って下さったのです!私が国中に伝えます!」

「どうやって?結婚してくれないのに?庇った相手が俺を好いていない、それを負傷と言わず何と言う」


「私は...」

「気にしなくていい、きっと心優しい誰かが嫁いでくれるだろう」

「誰かが...」


クレアは知らない綺麗で完璧な淑女がヘイリーの横に並び仲睦まじく笑い合った姿を想像した


胸が締め付けられた、痛みが強くて、思わず手を胸に当てた、キリキリと痛む


(何て自分勝手なの、嫌だ、絶対に私はヘイリー様の隣にいたい、何でよ...私なんかがヘイリー様に隣に居たって足で纏なのに...誰かが横に立ってヘイリー様が私を忘れていく事に耐えられない...)



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