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バンカラ転生 ~番長の俺が姫だとっ!? 宿敵スケバンまで来やがって、正体バレたら末代までの恥! 切腹不可避!~  作者: くまひこ


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第37話 エピローグ

 戦いは終わった。


 王城は無残に崩壊し、地上部分は瓦礫の山と化した。


 そのわりに犠牲者が少なかったのは、セラフィーナや魔導騎士たちの奮戦によって、国王をはじめ、ほとんどの家臣たちが無事に脱出できたからだ。


 一方、魔女に加担した者たちの多くは、瓦礫に埋もれて命を落とすか、騎士たちに捕縛されて縄に繋がれた。


 王都では突然の王城崩壊に民衆がパニックを起こしていたが、すぐに戒厳令が敷かれ、城壁を越えることが禁じられた。


 その間、俺たちは地下通路を使って王都を脱出。騎士団本陣の天幕に無事帰還した。




「見事な大勝利、おめでとうございます」


 駆け寄ってきたのは、俺とともに王城に突入した両騎士団長と魔導騎士たちだ。


「みんなのおかげでメリザンドを倒すことができた。本当に恩に着るよ」


「こちらも間一髪。やつらはすでに必要な魔石を揃えており、いつでも発動できる状態でした。やはり我らの宣戦布告が効いたようで、発動のタイミングを計りかねてたようです」


「それで魔石は?」


「すべて回収しました。あちらです」


 アルヴェルト騎士団長が指さした先には、魔石が山積みにされていた。


 通常の魔石が大半だが、アルフォンスと同じ赤黒く脈打つ人体魔石がいくつも混じっている。


 俺はその一つに魔力を通してみた。


 すると――。


『この魔力……まさか、リリアナお姉様?』


「この声……マリアベルなのか!」


『ええ、そうですわ! やはりリリアナお姉様でしたのねっ!』


「永い眠りから目覚めて、たった今、魔女メリザンドを倒したところだ」


『あの魔女を倒したのですか!?』


 魔石が、嬉しそうに脈打つ。


『ああ……我らの復讐をお姉様が果たしてくださったのですね。本当によかった……』


 その声には、長い苦しみから解放された安堵が滲み出ていた。そして、


『早くこのことを、お父様にも!』


「え……?」


 俺は思わず聞き返す。


「お父様って……生きているのか?」


『もちろんです! お母様も、お兄様も、お姉様も、弟も、臣下のみんなも、すぐ近くにいますわ!』


「……そうか!」


 目の前にある魔石の山、その一つ一つに魔力を通していく。すると、マリアベルの言ったとおり、俺の家族がそこに居た。


『でかしたリリアナ、よくぞメリザンドを倒してくれた。そなたをメディオーラの森へ避難させて正解だったな』


「みんなも無事で本当に良かった。父王レオニード」


『魔石になってしまったので、無事とは言えないがな。だがしばらく見ない間に、そなたも随分と男勝りになったな』


「そうか? 昔から変わってないと思うが」


 すると母エレオノーラが俺を叱りつけた。


『陛下の言う通りです! 何ですかその言葉遣いは! 女の子なのにはしたない!』


「はしたないと言われても、俺はその……」


 すると姉セレスティアまで参戦する。


『口答えはなりません! お母様のおっしゃることは常に正しく、絶対なのです!』


「……そうだ思い出した。俺っていつもこんなふうに叱られてたっけ」


「俺とは何ですか! あなたは女の子なんだから、ちゃんと『わらわ』とおっしゃい!」


「アホかっ! そんなみっともねぇこと言えるわけねぇだろ!」


「親に向かってアホとはなんです! アホとはっ!」


 ついにおふくろと姉貴の怒りが爆発。二人のマシンガンのようなお小言が始まった。


 思わず別の魔石を掴むと、懐かしい声が聞こえた。


『姉上は相変わらずのお転婆ですね。僕はそんな姉上が大好きですが』


「お前はルシアンか! 懐かしいな……」


 そう。俺は弟と一番仲が良かった。


 幼い頃はいつもコイツとチャンバラごっこで遊び、大きくなってからは一緒に騎士団の訓練を受けていた。


 そのおかげで一通りの魔法を使えるようになり、今回のメリザンドとの戦いでも大いに役立った。


 当時はなぜ自分がこんな性格なのかが分からなかったが、今になって思えば前世の黒崎鉄也の魂がリリアナの人格に影響を与えていたのだ。


 姫として生まれ、姫として育てられた俺。


 それでも、ずっと「女である自分」に違和感があった。


 だから、エルヴァリア王国の後継者に指名されたときも、正直言っていい迷惑だった。


 女王として君臨し、王配を迎えて子供を産む。そんな未来を、俺はどうしても受け入れられなかった。


 だから兄アルフォンスを国王にして、自分は生涯その兄を支えると宣言したのも、独身を貫くための言い訳にすぎなかった。


 そんな俺に、父王レオニードがついにその言葉を言ってしまった。


『永い眠りから目覚め、名実ともにリリアナが我が王家唯一の生き残りとなり、怨敵メリザンドをそなたが見事討ち倒した。これで堂々と王位を譲ることができる』


「王位を譲る……だとっ!?」


『そうだ。今ここに、第十二代エルヴァリア王国国王――リリアナ・ディ・エルヴァリア女王が誕生した!』


「いや、ちょっと待てって!」


 だが俺の抗議をよそに、臣下たちから歓声が上がった。


『リリアナ殿下が、ついに女王に! これはめでたい!』


『『『リリアナ女王陛下、万歳!』』』


 次々と上がる歓喜の声。


 魔石の山が、まるで戴冠式の会場のような祝賀ムードに包まれた。


「いや、だから待ってくれ! 俺はまだ――」


『『『女王陛下、万歳! 万歳! 万歳!』』』


「人の話を聞けえええええっ!」


 こうして――魔女メリザンドとの戦いに勝利した俺は、本人の意思とは関係なく、エルヴァリア王国第十二代女王となってしまった。


 その一部始終を見ていた枢機卿が、俺の前に両膝をついて頭を下げた。


「我が教会の破門者、魔女メリザンドを倒していただき本当にありがとうございました。それでこそ聖女リリアナ猊下です」


「猊下って……俺は聖女になるつもりなんか1ミリもねえぞ」


「いいえ、その最高法衣に袖を通したが最後、生涯、我が教会の聖女を務めていただきます」


「アホかっ! これはメリザンドを倒すために借りた、ただの防具だ。アイツを倒したんだから今すぐ返すよ」


「いいえ、それはリリアナ様に差し上げたものです。返していただく必要はありません。これからは聖女として、我が教会を盛り上げていただきます!」


 ジリジリと迫ってくる枢機卿だったが、そこに侍従長が割って入った。


「かつて栄華を誇ったエルヴァリア王国こそサマトリア王国の前身だったに違いありません! つまりリリアナ様は、我が王家の始祖なのです!」


「え……? そ、そうなのか?」


「エルヴァリア王城は、まさに我がサマトリア王国の領土にあります。つまりサマトリア王国こそがエルヴァリア王国の正統なる後継国! さあ、これで我が国王陛下との婚姻に支障がなくなりました。すぐにご帰還を!」


「何を言っておる!」


 そこへ、アルヴェルト王国国王が割って入ってきた。


「そなたが申した遺跡は、我がアルヴェルト王国の領土。ならばアルヴェルト王国こそがエルヴァリア王国の後継国であり、リリアナ陛下は我が王家の始祖ということになる!」


「これはおかしなことを。先の戦争の結果、かの地は我が王国の領土となったはずだが」


「何だと貴様っ! 先の戦争は我が国の勝利だったではないか! したがって、あの地は我が領土に編入されたに決まっておろう!」


「今の言葉は聞き捨てなりませんな! 先の戦争の勝利は我が国で――」


 そこへサマトリア王国騎士団長まで加わり、陣幕の一角では領土をめぐる外交交渉が始まっていた。


「アホくさ……。あんな盗賊しか住んでねえ廃墟の取り合いなんて、大の大人がみっともねえぜ」


 呆れれ果ててそう呟くと、早乙女が俺に耳打ちした。


「そんなことよりアンタ、これからどうするつもりなん?」


「これからか……さてどうするかな」


 俺は言葉に詰まった。


 本当なら、男に戻って日本に帰るつもりだった。


 だが、エルヴァリア王国での記憶を取り戻した今、俺の帰るべき場所は日本ではなくなってしまった。


「お前はどうするつもりだ?」


「ウチは日本に帰って、黒崎に……その」


 早乙女は頬を染めてモジモジしている。


 ……コイツは俺と違ってまだ生きている。


 どういうカラクリかは知らんが、生きたままこの世界へ飛ばされたんだ。


 もしかすると、早乙女には日本に帰る方法があるのかもしれない。


 だが――もし帰れたとしても、そこにもう俺はいない。


 そのことを伝えようかと一瞬考えたが、俺が女に生まれ変わったなど口が裂けても言えなかった。


「ぐぬぬぬぬ……!」


「どないしたんやリリアナ? 分かった、アンタ便秘やな!」


「アホかっ! お前を心配して損したわ!」


「なんやの急に怒り出して。あ、分かった。さっきの魔法戦はやっぱりまぐれで、アンタ、アホの子やったんやな」


「もう黙れ、早乙女っ! だがマジでこの後どうしようか……」


 腕を組んで考えていると、アルフォンスが語りかけてきた。


『そなたのやるべきことは決まっている。エルヴァリア王国の復興だ』


「王国復興って……あの遺跡を元に戻せってか?」


『そうだ。あの地は我らが故郷。そこに王国を再興して、そなたが女王として君臨するのだ』


 アルフォンスの言葉に、他の魔石たちも拍手喝采。


『我らも故郷に帰りたい!』


『エルヴァリア王国を再び!』


『リリアナ殿下を真の女王に!』


 次々と声が上がり、魔石の山は大合唱に包まれた。


 すると、それまで黙って話を聞いていたセラフィーナが口を開いた。


「もしよろしければ、わたくしにもお手伝いをさせていただけませんか?」


「お手伝いって?」


「もちろんエルヴァリア王国の復興ですわ」


「あれ? 今気づいたけど、みんな魔石の声が聞こえたのか?」


 魔石の声は俺にしか聞こえないはずだったのに――。


「それも魔女の呪いだったのかもしれません。ですが彼女が死んだ今、魔石の声は全員に丸聞こえでしたよ」


「そうか……しかし、あの廃墟を建て直すって大仕事だぞ」


 俺がため息をつくと、早乙女が瞳をキラキラさせた。


「もし日本に帰られへんかったら、一生ウチがリリアナを支えたるわ」


「お前……」


「なあセラフィーナ。あんた、ええ作戦があるんやろ?」


 するとセラフィーナは、羽根扇を広げてドヤ顔を見せた。


「もちろんございますわ。わたくしの国には数多くの古代魔法がございます。エルヴァリア王国復興に必要な魔術具を、これから取りに行きませんか?」


「そりゃ、ありがたいが……お前の国はどこにあるんだ?」


「こことは別の大陸。赤道を挟んだ、はるか彼方にございます」


「そりゃまた随分と遠いな……だが、別の大陸かあ。船旅も悪くねえな!」


「ウチ、クルーズ船に憧れてたんや! 世界一周や!」


「その前に魔石をすべて回収しておきましょう。そして今夜こっそりと――」


「──作戦決行だな。おい枢機卿」


「はい、何でございましょうか?」


「俺たちはしばらく旅に出る。あそこで揉めてる重鎮たちに気づかれると厄介だし、お前が足止めしとけ」


「承知しました」


 枢機卿は深々と頭を下げた。


「では、聖女リリアナ猊下のご帰還を心よりお待ちしております」


「だから俺は聖女なんかやらねえよ!」




 こうして俺たちは、セラフィーナの国を目指すこととなった。


 ――そう、俺たちの冒険の物語は、ここから幕を開ける。


 〜 完 〜


挿絵(By みてみん)


 ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


 本作の続きは、別の作品に合流しますのでもし機会があれば、彼女たちの冒険譚をお楽しみ下さい。

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