エピローグ
エピローグ
魔神討伐の知らせが世界を走ったのは翌朝のことだった。
ナンパヒ島の守護者である翠のレフィスと琥珀のルッソが空を飛びフェルナン、カイト、ギプス、レオといった主要国に知らされた。
そして主要国から周辺の小国家へ伝令が走った。
魔法の出現により異世界アーリーは大きく変わるだろう。
[—ハリュフレシオ—]と唱えるだけで指さきに火がたつ。
魔法は人々の生活を豊かにする。
その急激な変化は「法魔の加護者」によって見守られていくのだ。
*
世界で一番大きな変化を求められたのはフェルナン国だ。
クリルの森には誇り高きエルフ族、最果ての山麓には少し頑固なドワーフ族が住む。
必要以上に干渉しない、それでいて良い塩梅で共存の道を模索しなければならない。
フェルナン国にはラヴィエ王女やアリアの剣士アコウがいる。
きっと大丈夫だろう。
彼らならば人間と新種族の懸け橋になってくれるに違いない。
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各国の首脳会談で、太陽の国レオは北にある魔獣の国シェクタ王国を監視する任務を負うことになった。
シェクタ王国には今では人間が住める場所はなくなっている。魔獣の国となっているのだ。
太陽の国レオは魔法に特化したラジス部隊を編成するとシェクタ国、及び周辺に出没する魔獣の討伐を始めた。この掃討作戦は周辺国家からも協力が得られた。
*
始まりの光鳥ハシル(現ドライアド)の3羽の子供はついに光鳥シドのみとなってしまった。
光鳥レイは魔界、魔人へその生命力を与え、光鳥クリルは人の魂が転生したエルフやドワーフといった新種族たちへ身体を与えるために生命力を使い果たした。
光鳥シドはレイとクリルを誇りに思うと異世界アーリーを見守ることを誓った。
*
さて、加護者たちはというと....
「秩序の加護者」リシュルとバンクは再び世界の孤児を助ける旅に出た。
白亜の元幹部である2人はそれが罪滅ぼしであるかのように旅をしていた。
だが、それは以前の話だ。
今はというと..
「リシュル様、休憩はいいのですか?」
「大丈夫よ、バンク。今も寂しい思いをしている子がいるかもしれない。世界には家族になれる私たちがいることを伝えなきゃ」
2人は各国を周ると孤児たちの為の施設を作ってほしいとお願いして周った。
リシュルは自分が「秩序の加護者」である事実を隠さなかった。
財政面においては、カイト国のクリスティアナ女王が尽力してくれた。
子を持たないクリスティアナはきっと居場所を失った子供たちに思うところがあったのかもしれない。
*
「法魔の加護者」ツグミは実際の年齢1歳となり。サオの診療所で暮らしていた。
ツグミの母はサオで父はジェラとなった。
ジェラは守護者役であるトパーズを解任されたが、魔素を創る能力だけは失っていなかった。
「法魔の加護者」に何かあった時は魔界より5大魔王が守護に来ることになっていた。
魔王たちはサオとジェラに大きな敬意をもっていた。
*
「運命の加護者」シャーレは王都フェルナンにいた。
そして、『永遠の凍結』の中のソルケとシェクタ国ブレス王子に会いに来ていた。
そこには私、「時の加護者」アカネもいた。
「アカネよ、私は運命とはそのまま受け入れるのが正しいと思っている。介入すれば歪みが生じることがあるからだ。私の使命は、きっと道しるべを示すだけなのだ」
「知ってるよ。シャーレはいつもそうしてきたじゃない」
「うん.. だけどな、私もやはり親なのだ.. アカネ、『時の加護者』アカネよ。私の最初で最後のお願いだ。今一度、私の娘ソルケに時を与えてくれないか? お願いだ」
「そう言うと思ってたよ。そして私もそのつもりだよ」
[ 時の懐中時計、気合い入れていくよ! ]
右手の時計が高速回転を始めた。
「じゃ、ちょっと行ってくるね」
『永遠の凍結』は誰の侵入も許さなかった。
しかし、「時の加護者」の侵入だけは拒むことはできなかった。
右手からゆっくりと凍結された空間に入る。
まるで自分の身体全てが『永遠の凍結』に溶けていく感覚だった。
『永遠の凍結』の中は意外にも普通の世界のようだった。
風も感じる?
空の雲も動いている?
大きな違いは距離感だ。近くに見える物がやけに遠いように感じた。
しばらく草原を歩くと、わかったのだ。
確かに時は止まっていた。
しかし、私が触れたもの、私が見たもの、「時の加護者」が干渉すれば時が動き始めるのだ。
私の足が一歩進めば、その足に触れた草が風に揺れていた。
その奇妙な様子は、外界のシャーレにはコマ撮りのアニメみたいに見えていたに違いない。
やがて丘に辿り着きソルケとブレスに話しかける。
「やぁ、ソルケ。迎えに来たよ」
「『時の加護者』アカネ様!! なぜこんなところへ!?」
「シャーレに頼まれたんだ」
「お、お母様が..」
ソルケの涙が地面に落ちた瞬間、『永遠の凍結』が砕け散った。
そして、時は動き始めた。
そこにはブレスの腕の中で幸せをかみしめるソルケがいた。
彼女の瞳は銀色から茶色へと変化していた。
そしてソルケはシャーレの姿に気が付くと『お母様』と呼んで抱きついた。
・・・・・・
・・
王都フェルナンで飲んで騒いで食べて、そしてラヴィエと一晩中話した。
私が再び現世に出発するのは翌朝になった。
別れ際、シャーレに改めてお礼を言われた。
「今回は世話になった『時の加護者』アカネよ」
「うん。親子仲良くね」
ソルケはギスギスした雰囲気がなくなり素敵なお姉さんになっていた。
驚いたことは、彼女がラヴィエからもらったドレスを着ている事だった。
「ありがとうございます、アカネ様。ブレスは今、エルフ族の丸薬を飲ませ、休ませております。この場に来られない事を悔やんでおりました」
「ソルケさん、凄く素敵になったね」
ソルケは耳まで真っ赤になって恥ずかしがっていた。昔のソルケからは想像できないことだった。
ラヴィエからは、王都フェルナンで流行っている匂い袋をたくさんもらった。
「今度、クリルの森でエルフのリズさんに香りのよい植物を教えてもらう約束してるんだ。アカネ、今度来たら一緒に行こうよ!」
「うん。今度はいっぱい遊ぼうね」
そう言っている私の脚にラインとソックスがしがみ付いてきた。
「もう行っちゃうの。おねえちゃん?」
「こっちで暮らせばいいじゃんか!」
「お前たちわがままは良くないぞ。でも、アカネ様がこちらで暮らすという提案には、このシエラも反対ではないな」
「シエラ.. またすぐ来るよ」
「そうですよ。あまり来ないようだったら僕からアカネ様の世界へ遊びにいっちゃいますよ。あの『ぱふぇ』というのも食べたいし」
「ふふふ、でもそれも楽しいね」
「はいっ」
皆に見送られながら『時の狭間』を開く。
私は大きく手を振ってお別れをした。
全ての色がなくなり、キャンバス上の線画となって、やがて消えた。
そして白いキャンバスに新しい線画が描かれると、色が塗られていった。
そこは不思議なことに初大駅のエスカレーター前だった。
そう、全てはここから始まったのだ。私の異世界アーリーへの旅は。
「さぁて、杏美ちゃんがバイトする喫茶店「真天珈」にケーキセットでも食べに行こうっと!」
—異世界アーリーの3主の力に創られた「現世」。
その現世に生まれ育った「一ノ瀬 茜」に異世界アーリーは救われた。
しかし新世界へ踏み出す異世界アーリー。
人類は新たな種族との共存に挑戦しなければならない。
また加護者の力を必要とすることもあるだろう。
でも、今は深く考える事はない。世界を楽しみ、未来に希望を持つんだ。
その時が来たら、また、仲間と一緒に立ち向かえばいいのだから。
【時の狭間の白い手をⅢ~闇を招く手 完】
『 ..ガ..ガガ.... こ..ら月を待つラズウェル.. ワム.. いや「時....護者」アカネ.. 応答せよ』
最期までお読みいただきありがとうございます。
どうぞ、コメントや評価をお願いいたします。
現在、新たな小説を執筆中です。
お楽しみに(*´ω`*)




