作戦と潜入
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ついこの間…[秘密の特訓場]で源造にアドバイスされたことを隼人は、仲間たちに伝えて作戦会議を行うことに決めた。
江戸川区にある。小さな喫茶店『コロンビア』の奥には近代的なコンピュータールームがあり、そこでは、悪の組織の行動を監視出来るシステムまで備え付けられていた。
【悪の秘密結社S】はもちろんのことだが、犯罪を犯すのは怪人たちとは決まっているわけでは無い。むしろ、普通の人間の方が不可解な凶悪犯罪を実行することが最近では、多発しているようだった。
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「それで? 隼人が相談したいことって何なの?」
「しばらくの間…【悪の秘密結社S】のブラック戦闘員になって潜入して、もっと奴らのことを突き止めたいんだ!」
「マジかよ!?」
「ああ、マジだ!!」
「オレ、オレも潜入する!」
隼人の話の内容に猛とレイナは、目を丸くしていたが…正人は隼人と一緒に潜入したいと言って笑っていた。
「だけど、もしも正体がバレたら…死ぬかもしれないんだよ!」
「そんな簡単にバレるようなヘマしねえっつうの!(笑)」
「それにオレたちが、殺られるわけねえだろ!?」
レイナに潜入することは、かなり危険だと忠告されても、正人も隼人も聞く耳を持たず…一緒に【悪の秘密結社S】に潜入する相談をさっそく始めていた。
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そして、数日後…。
作戦通り…ブラック戦闘員の採用試験に合格をして、日給アルバイトの登録を済ませた隼人と正人はブラック戦闘員の初級クラスへ上がるための研修が始まった。
「登録を済ませた方には、本日よりブラック戦闘員として働いて頂くために。まずは[初級クラス]の研修を1週間ほど、受けて頂きます。研修期間も日給は支払われますので、ご安心下さい!」
ひと通り古参の戦闘員から、研修の説明を受けた隼人と正人は、仕事をしていなくても日給が支払われるということにガッツポーズをしていた。
「何か戦闘員って、優遇されてんなー!」
「これだけ優遇されてちゃ…そりゃ、皆さん…戦闘員になっちゃうわけですよ!」
「正直、オレもヒーローやってんのがバカバカしくなってきたし…」
「あー!! 隼人さん!? ダメっすよ!! これは、任務なんですからね! 誰かに聞かれたらまずいっす!!」
リーダーの『レッド』である隼人が、帰宅途中の地下鉄の中で…遠い目をして本音を口にすると慌てて『イエロー』である正人が隼人の口を自分の手で塞いでキョロキョロしていた。
こうして、しばらくヒーローたちが活動を休止して『東京』に姿を現さなかったことによって、激しい戦闘もなくなり…街は平和を取り戻したかのように見えたのでした。