ヒーロー登場!
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「ちょっと、タイミング悪すぎだよね!」
「ああ、あれでしょ? 正義のヒーロー? 今さらだよね~!」
「ほんっとに、最悪のタイミングだよ! 空気読んで欲しいよね~」
「そうだよ! やっと普通に暮らせるようになって来たのに……台無しだわ!」
ここは、平日の昼食時の原宿。
そして、この会話は行き交う若者たちの会話のごく一部だ。本来なら、正義のヒーローの登場を誰もが喜ぶところなのかも知れないが…余りにもタイミングの悪すぎる登場に誰もが正義のヒーローを『空気の読めないヒーロー』と呼んでいた。
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そんなことを何もわかっていない正義のヒーローの中心人物であろう『レッド』とその仲間の『ブルー』と『イエロー』は、真っ昼間の渋谷のハチ公前でこの『東京』を取り戻すために…怪人たちと激しい戦闘を繰り広げていた。
「今さら正義の味方気取りで現れやがって!! この『東京』は、我々【悪の秘密結社S】の支配下にあるのが見てわからないのか? きっと、人間たちもお前たちなんぞに何も期待しておらぬわ!(笑)」
「うるせえ! 黙れ! このブタニワトリ野郎!! これでも喰らいやがれ!」
遅すぎるヒーローの登場を頭はブタで体がニワトリの怪人が全身真っ黒な姿をして「イー!! イー!!」掛け声をあげている大勢の手下をバックにブヒブヒと嘲笑うと、リーダーである『レッド』が大声で怒鳴りながら、手にしているレーザーガンを怪人たちに向けて連射してハチ公の銅像を粉々に破壊していた。
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激しい死闘の末、ブタニワトリ怪人に『レッド』と『ブルー』がとどめの一発をぶちかまそうとしたその時だった。
「暴力反対!! 消えろ!」
「やめて!! 怪人がかわいそう~!」
「そうだ!! ヒーローなんてオレたちに必要ねえぞ!」
「「帰れ! 帰れ! 帰れ!」」
ヒーローたちと怪人の戦闘を遠くから見ていた人々が、口々にヒーローたちを罵り怪人を助けようと石やペットボトルや空き缶をヒーロー目掛けて投げつけていた。
「ブヒブヒ~!(笑)だから、言っているだろう? もうこの『東京』には、お前たちヒーローは必要とされていないのだ!」
「嘘だ!? そんなはずは無い!」
「そうだ!! お前ら【悪の秘密結社S】が人々を洗脳してしまったに違いない!」
「今日のところは見逃しておいてやるが、必ずオレたちが人々の洗脳を解いてこの『東京』を取り戻す!! 今に見ていろ!」
こうして…正義のヒーローたちは、自分たちが「空気を読めないヒーロー」と呼ばれていることなど露知れず…人々を【悪の秘密結社S】が洗脳してしまったのだと勝手に思い込んで今後も怪人たちと死闘を繰り広げる気満々で去って行った。