第七章 25
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それから、二日の間、天気がよく空気もさわやかだったのに塚本は、午後の散歩を中止にした。カミクズが、動かないままだったためだ。
塚本が、午後の散歩に出たのは、カミクズが、帰って来てから三日目の午後だった。動いたからではない。自身の足が衰えるのを避けたかったためだ。
「君が、転がらないから、ひとりで行くよ」
塚本は、声を掛けて部屋を出たのだった。
すぐに塚本は表にふたりの男が立って外で建物を眺めているのに気付いた。
ふたりともがっちりした体格をしている。
刑事?
やはり、夕刊の記事を読んだ誰かが白い玩具のような物をリモコンで転がしている高齢者がいる、と警察に通報したのではないだろうか?
念のためにと、警察が、道路上の監視カメラを調べられていたなら、こちらの顔は覚えられているだろう。
自動ドアの入り口を出た途端、牧田昇絡みで何か聞いて来るかも知れない。ひるむな。自分にはアリバイがあり平田さんという証人もいるのだ。部屋に戻ったりしたら、却って疑われるというものだ。
塚本は、意識して、胸を張り入り口に向かった。
自動ドアが開き、表に出た塚本に男のひとりが「あの」と言った。
塚本は、一瞬、心臓がしめつけられるような感覚を覚えた。
「えっ」
塚本は、「あの」と言った男を見た。中年、日に焼けた肌をしている。だが、刑事にしては、視線が穏やかな気がした。
「素敵な建物ですね」
と、男は、笑みを浮かべて言った。
「住み心地もいいですよ」
塚本は、答えた。
「あれだ」
もうひとりの男が右側を見た。
白っぽい車が塚本達の前をゆっくりと過ぎて、止まった。
男ふたりは、ライナー不動産と書かれたその車に乗り込んだ。
刑事ではなかった。塚本は、安どの息を吐き、走り去る車を見送った。
びくびくするのは、やめよう。自分に言い聞かせ、午後の散歩に出発したのだが、カミクズがいない散歩は、味気なかった。
歩きながら「どうだ、今日の調子は?」と語り掛けることもできなければ、カミクズがアスファルトの上で奏でる音に耳を傾けることも出来ないのだ。
東三丁目公園に着いても、塚本に秋のさわやかな空気を味わうゆとりもなく、ベンチに座っていた時間はせいぜい五分だった。
帰ってもカミクズは、リビングで動かないままだった。このまま動かなくなってしまうのだろうか。そんなことを考える。
夕方の情報番組の中に組み込まれているニュースを塚本は、ソファに座って眺める。政治関連の話題に続いて、事件に発展しそうな出来事が報じられた。
「群馬県高崎市の私有地の裏山から白骨が見つかりました。先日の台風で、裏山の土砂が崩れ、人間の頭部や手足と推定される骨が現れたもようです」
ニュースを淡々と読み上げたのは、東三丁目公園でカミクズのパフォーマンスに歓声をあげた女性アナウンサーだった。




