32 繋がる縁
SIDE:ロザリンデ
お姉さまが私の寝室にいらっしゃいました。
次はいついらっしゃるのか……と、診察の時間が来るのを待ち焦がれていたので、とても嬉しいです。
私にかけられていた呪いを解いてくださった命の恩人であるメリアドール様は、私よりちょっと年上のお姉さまで……とても、と〜っても素敵な方です。
太陽のように光り輝く黄金の御髪に、青空のように透き通った青い瞳。
美しい花のような顔に浮かぶのは、女神のように優しげな微笑み……
始めてその麗しいお姿を拝見した時から、わたしはすっかりお姉さまの虜となりました。
そして美しいだけでなく、他に並ぶ者なき凄腕の薬師であり、優れた魔導師であり、戦士でもあると聞きました。
更には『魔女の森』を統べる女王様でいらっしゃるとか?
そのあたりのことはよくわかりませんけど……とにかく、凄いという言葉じゃ足りないくらいの凄い方ということです。
「……うん、特に問題なさそうね」
私の部屋着をはだけさせてから身体のあちこちを診察していたお姉さまは、最後に頷いてからそう言いました。
肌を見せるのはやっぱり、ちょっと恥ずかしかったですけど、もっとお姉さまの手で触れてほしい……と、不思議な気持ちにもなりました。
何だかドキドキします。
「それにしても……二〜三日は静養が必要と思ったけど、想像以上の回復力ね」
「はい。目が覚めたときは少し怠い感じがしましたけど、今はすっかり元気です!」
むん!と両腕に力こぶを作りながら(作れてない)応えると、お姉さまの笑みが深くなります。
私が元気になったのを喜んでくださるみたいでうれしです。
「本当に良かったわ。この様子なら、私も思ったより早く帰れるかしら」
「あ…………」
思わず声が漏れてしまいました。
そうでした…………お姉さまは私の治療のために、遠くから来てくださったのです。
私が元気になったのなら、長くここに留まる理由もありません。
もっとたくさんお話して、仲良くなりたかったのに……お礼もまだまだし足りません。
私は悲しくなって思わず涙が出そうになり、それを堪らえようと、お姉さまに見せまいと、俯いてしまいました。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
SIDE:メリア
ロザリンデ王女の回復力は大したもので、これなら私も思っていたよりも早く森に帰れる。
そんなことを彼女に言ったら、悲しげな表情をして顔を伏せてしまった。
「えっと……ロザリンデ王女……?」
「メリアお姉さま!私の事はどうかロサリーとお呼びください!」
戸惑いながら私が名前を呼ぶと、彼女はガバっと勢いよく顔を上げてそんなことを言った。
お、お姉さまって……?
「あ……その、ごめんなさい……私、お姉さまともっと仲良くなりたいと思って、つい……」
上目遣いでそんな事を言う。
くっ……可愛いじゃないか……!
……ふぅ。
私はある理由から、出来るだけ彼女と距離を置きたいと考えてたんだけど……
うん、ムリだわ。
こんな天使みたいな子を邪険にするなんて無理。
これも運命と諦めて覚悟を決めますか……
私は彼女を安心させるように微笑む。
そして……
「ありがとう、ロザリー。私もあなたと仲良くなりたいわ」
私がそう言ったとたん彼女は再び顔を上げ、花が咲いたように笑ってくれた。
これで私と彼女の縁は繋がった。
あるいは避け得ぬ運命だったのか。
これから先の未来、ロザリーには大きな試練が待ち受け……そこに私も関わっていく。
そして、その試練には幾つかの分岐点があり、運命の行き着く先の一つで私には……破滅が待ち受けている。
果たして、私はそれを避けることができるのか?
そんな不安が頭の中に沸き起こってくる。
でも後悔はしていないわ。
こうなる事が分かってても、例えそれが運命だとしても……結局のところ、こうしてここにいるのは自分自身で選んだ結果なのだから。
それに……
「お姉さま……!」
こんなにも眩しい彼女の笑顔を見ることができたのだから。




