27 推測
SIDE:メリア
さて、姫様…こと、ロザリンデ王女が狙われた理由に心当たりがないか?
などと聞いてみたけど……実は私には心当たりが一つある。
ゼノン王も薄々気づいているのではないだろうか?
「ゼノン王は……最近世間で囁かれている神々の噂についてご存知ですか?」
「……ああ。いやでも耳に入ってくる。神々がこの地上から去る……という話だろう?」
「ええ。……では、その続きは?」
「……神々は地上を去る代わりに、自身の力の一部を人間たちに託そうとしてる、か?」
「はい」
遠からず神々はこの地上を去り……自らが選んだ、志と資質と立場を持つ人間に力を託す事になる……それはまだ、あくまでも噂に過ぎないが、私はそれが事実であることを知っている。
「これは私の推測ですけど……ロザリンデ王女は、神々が力を託すのに相応しい資質を持った人間である……と思われてるのではないでしょうか?」
「……仮に、その『噂』を知る者がいて、自分こそが神の力を継ぐに相応しいと考えた……神の啓示を受けた聖女であるロザリンデは邪魔になる……と?」
「可能性の一つです」
「……」
あくまでも推測に過ぎないことを強調するが、ここまで言っておけば十分でしょう。
詳しい捜査はデルフィアの騎士団にお任せするわ。
と、そんな事を思ってると……突然扉が開いて何者かが入ってきた。
にもかからず、扉の側に控えていた騎士たちは動こうともしない。
「その推測は正しいと思うぞ」
「あれ?あなたは……確か、厩舎でお会いした……」
レヴィの様子を見に行ったときに、あの子の相手をしてくれたお爺さんだ。
「父上……盗み聞きとは感心しませんよ」
「父上?じゃあ……」
「ふぉふぉ……如何にも。儂はそやつの父親で、先代のデルフィア王じゃよ。まぁ、先に言った通り今は唯の隠居ジジィじゃがな」
「は、はぁ……」
何か元王様と言う割には随分フランクな感じよね……
ゼノン王も「やれやれ……」といった感じで首を振りながら溜息をついてる。
「父上、その仰りよう……何か心当たりがお有りで?」
「ふむ……儂もな、引退した身なれど孫娘の命が危ういとあっては黙っておられんかったからの。まだそれなりに昔の伝手もあるし、独自に調査をしておったのじゃよ」
なるほどね……どうにも食えない感じのお爺さんだな……って思ったけど、その印象は間違ってないみたい。
「……伝手、とは?」
「古い友人じゃよ」
「!?エメリリア様とお会いしたのですか!?」
……エメリリア。
この世界に存在する神々のうちの一柱。
人間たちにとって脅威となる魔獣魔神の類を打倒し、魔境を切り拓くためにずっと力を貸してきてくれた、人とは隔絶した力を持つ存在だ。
しかし近年、あまりにも神々の力を頼りにし過ぎたのか……人間たちの自立を促すために地上を離れると言われているのは、先にゼノン王と話ていた通り。
私は神々に会ったことはないけど、それが事実であることは知っている。
「エメリリア様は……何と申されたのです?」
「お嬢ちゃんの推測と同じことを言っておった。そして、ロザリーには勝利の運気がある。ここで死ぬような運命ではない……ともな。全くもってその通りじゃったの」
「何と……」
……ある意味では私もだけど、未来を見通すなんて流石は女神様ね。
「その線で考えれば、ある程度は犯人像も浮かび上がってくるじゃろ?」
「……思い当たるのは何人か。しかし、証拠が無ければ如何ともし難い」
「ロザリーの呪殺が失敗に終わったのだ。また何か次の手を打ってくるじゃろ。その時は必ず尻尾を掴んでやれ。無論、今現状での捜査も力を入れてやらねばならぬ」
「はぁ……つくづく暗殺者を死なせてしまったのが惜しいわね」
私を狙ってきた暗殺者は数少ない手がかりだった。
自殺を防げなかったのが悔やまれるわ。
……いや、待って。
あの呪いはどうやってかけられたのか?
直接的に呪法を施すか……あるいは、それが難しければ何か起点になるモノがあったはず。
それを調べれば何か犯人の手がかりが見つかる……かも?




