26 狙われた理由
SIDE:メリア
謁見の間を出た私は、グレンに応接室へと案内される。
護衛してくれてるイェニーも一緒だ。
部屋に向かう途中、グレンは先の一件もあってか遠慮がちに話しかけてくる。
「メリア……いえ、メリアドール……様?」
「別に今までの通りで良いわ。あの場ではああ言うふうに名乗らざるを得なかったけど……こっちが素だから」
「……分かりました」
「で、でも!女王様……って事なんでしょう?」
「まあ、そうだけど。でも、王とは言っても形だけよ。古い盟約でそうなってるだけ。ああ言う正式な場に立ったら、それなりに振舞わなければならないけどね」
「しかし流石に肝が冷えましたよ。事前に教えて貰えれば……」
まあ、そう言いたくなるのも尤もだと思うわ。
でも、私は最初から『森の魔女の後継者』だと名乗っていたし。
『全て』を受け継いでいるとも。
それを聞く人が聞けば分かるはずだし、実際ゼノン王も理解した上で試してきた。
だから、文句は彼に言って欲しいところよ。
でも、グレンやイェニーには伝えても良かったかも、とも思ったり。
信じてもらえない可能性もあったから何とも言えないけど。
そして、応接室に着いたわたしはソファに座ってゼノン王が来るのを待つ。
私を先に行かせたのは……多分あの場にいた人達に、もう少し説明しておくためだろう。
そして、暫く部屋で寛いでいるとゼノン王もやって来る。
「メリア殿、待たせたな」
「ゆっくり寛がせてもらいましたよ」
私の対面に座ったゼノン王。
彼を護衛してきた近衛騎士は扉の外側に待機し、グレンとイェニーは扉の内側に立つ。
「さて……先ずは先程の謁見の間では失礼した」
「いえ、意図は分かりましたので。……まぁ、もうちょっと早く声をかけてくれたら、とは思いましたけど」
「ははは!いや、本当にすまなかったな。だが、あの中であなたが堂々とされてる姿を見たからこそ、確信できたのも事実」
「ええ、分かってますよ」
すまないとか言ってるけど、あんまり悪びれた様子もないわね〜。
まあ、気さくな感じだし別に良いのだけど。
だが、ゼノン王は表情を引き締めて、居住まいを正す。
そして……
「この度は、我が娘を……ロザリンデを救っていただき感謝申し上げる。本当に、ありがとう……!」
謁見の間の時よりも更に気持ちを込めて、深々と頭を下げながら礼を言う。
飾らない言葉は、むしろ彼の深い感謝の念がこもっているように感じられるのだった。
「私の力がお役に立ててよかったです。しかし……彼女を害そうとした者を何とかしなければ……。犯人の目星はついているのでしょうか?」
「いや……今のところはさっぱりだ。だが、我が娘を狙うのは……メリア殿は、『聖女』の事をどこまでご存知か?」
「婆ちゃん……先代から少し話に聞いたくらいですね。聖なる力……即ち『破邪』の力をその身に宿す女性を『聖女』と呼ぶ、と」
「うむ、その通りだ。そして、娘はその聖女の資質を持つ……と、かつて神より啓示を受けたのだ」
「神……」
この大陸の人々を護り導いてくれると言う、実在する十二柱の神々だ。
だけど、噂によれば……
「メリア殿は神々にお会いしたことはおありか?」
「いえ、生憎と私はお会いしたことは無いですね。先代はかなり昔に会ったことがあるらしいですけど」
婆ちゃんの『かなり昔』だから、数十年……下手したら100年前とかもあり得る。
何でもウィラー大森林に住み着いていた邪竜を討伐する時に一緒に戦ったとかなんとか……話のスケールが大きすぎて、いまいちピンとこない。
「そうか。私も直接お会いしたことはないのだがな……私の父、つまり先代のデルフィア王が会ったらしいのだ。啓示を受けたというのはその時の話でな……まぁ、啓示と言うか予言だったわけだが」
へぇ……
流石は神様だね。
実際に娘さん……ロザリンデが聖なる力を持っているのは確かだし、その予言は当たってたわけだ。
「……つまり、娘さんが狙われたのは、彼女が『聖女』であることが関係している……と?」
「確証は無いが……何か狙われる要因があるとすれば、それくらいしか思いつかない」
ふむ……なるほどね。
何れにしても、あんな小さな女の子を殺そうとするなんて……絶対に許すことなど出来ない。
そう、私は思うのだった。




