01:おはようございます①
第一話
「お兄ちゃん、私の事、好き?」
目の前にいる究極的に愛らしい少女がそう言った。上目遣いでこっちの様子を伺いながら、両手を腰の後ろで組んだり握ったりしながら、モジモジと不安そうに体を揺らしている。
照れて赤くなった顔がひどく可憐だった。
「当たり前だああああああ!愛してる!愛してるぞ!」
西院豪京は一瞬の迷いもなく叫んだ。言葉だけではまったく足らず、そのまま少女を抱きしめた。
「嬉しい!私も好きだよ、お兄ちゃん!」
少女も京の背に手を回し、抱きしめ返してくれた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
少女の回答に、京のテンションは突き抜けた。そのまま少女を抱えて三回転くらいした。
「これからもずっと、好きでいてくれる?」
少女が可愛すぎる瞳を不安げに揺らしながら聞いてきた。京の答えは聞かれるまえから決まっていた。
「当たり前だろ!?死ぬまで、いや死んでもずっと愛してるぞ!!」
京は少女の瞳を力強く見つめながら答えた。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
面々の笑みを咲かせて、少女はそっと目を閉じた。
「忘れないでね、その言葉。だから約束の、キス……」
少女の唇が京の唇にそっと重なるその瞬間、爆発した。
「ぬわーーーーーーー!?」
チュンチュン。チュン。
小鳥が鳴いていた。
冷たい朝の風が吹き込んで、めくれたカーテンから陽の光が差し込んでいた。開け放たれた窓からは青い爽やかな空が覗いている。
「……朝、か」
どんな体勢で寝ていたのか、京はベッドから落ち、頭で床に着地していた。両腕は大切なモノを守るかのようにギュっと枕を抱きしめていた。男の汗の匂いがする。京自身の寝汗の匂いだが。
ジリリリリリリリリリリリ!!
頭上から耳障りな音が続いていた。
ベッドの脇に置かれたテーブルの上で、目覚ましが元気に鳴っていた。時刻は08:23分。
京はバチンと力任せに目覚ましのアラームを止めると、そのまま窓の外へと放り投げた。それを空中でトビムカデがキャッチ。鋭い顎でバリバリ食べていた。
「全く、誰だ!こんな時間に目覚ましをかけたアホウは!?」
せっかくの奇跡的に素敵な夢が終わってしまった。京は勢い良く窓を閉めると、即座に体を丸めて布団に潜り込んだ。夢の世界に帰りたい。なんとか続きを見たかった。
「起きちゃダメだ。起きちゃダメだ。起きちゃダメだ……!」
潰れそうなくらいに強く目を閉じて呪文を唱えたが、一度冴えてしまった頭は中々眠気を思い出してくれない。
「…………良い夢だった。はぁ」
京は夢の続きを諦めて、今度こそ起きることにした。
「まだ8時か……」
京にしては早い起床だった。というより早すぎる。
夜勤明けで帰ってきたのが朝の五時半ごろ。シャワーを浴びて着替えてと寝る準備をして、ベッドにつく頃には六時を過ぎていた気がする。
まぁ、良い。目が覚めてしまったのだから仕方がない。
京は部屋を出て階段を降りた。
妹はもう学校へ行っている時間だ。つまらない。テキトーに朝食を取って、それからその後を考えよう。




