1話 名前がない
このお話は全年齢向けの作品です。
気軽に読んでいただけたらうれしいです。
春のあさ。
今日は、新しいクラスの発表がある。
自分の名前がどこのクラスにあるか、はやく見たくて、みんないつもより足が速かった。
うっけも、ランドセルをしょいなおして、学校へ来た。
体育館の前の広い場所に、掲示板があった。
名前を見つけて笑う子。
まだ見つからなくて、前へ出ようとする子。
うっけは、四年生のところを見た。
四年一組。
四年二組。
四年三組。
四年四組。
うっけの名前は、なかった。
もう一回見た。
やっぱり、なかった。
そのとき、すぐとなりで、だれかが言った。
「ない」
女の子が、掲示板にかおを近づけていた。
「なにが」
「わたしの名前」
「ぼくもない」
女の子が、ぱっとふりむいた。
目が、まんまるだった。
「あは。わたしだけじゃないんだ」
「わらえないだろ」
「うん。わらえない」
でも、まるみは、もう一回だけうっけを見た。
二人とも、また掲示板を見た。
「わたし、まるみ」
「ぼく、うっけ」
まるみは、うっけをじっと見た。
「……うっけって、へんな名前」
「へんって言うなよ」
「よびやすいけど」
「じゃあ、へんじゃないだろ」
まるみは、口をゆるめた。
「うっけ」
「なに」
「二人ともないって、へんじゃない?」
「……うん。へんだ」
うっけは、掲示板から目をはなして、職員室のほうを見た。
「先生に聞く」
「え、聞きに行くの?」
「まるみの名前も、ないだろ」
まるみは、すこしだけ口をひらいた。
でも、なにも言わなかった。
「先生、わかるかな」
「わかるだろ」
そのとき、すぐうしろで、だれかがこえをだした。
「……ご」
二人とも、そっちを見た。
白いかおの男の子が、立っていた。
近かった。
「うわ」
うっけは、うしろによろけた。
まるみは、あわてて手をのばした。
「え、いつからいたの」
男の子は、こたえなかった。
掲示板を見ていた。
「なに見てるんだよ」
男の子の口が、動いた。
「……五組」
「五組はないよ」
「四組までしかないだろ」
まるみが、男の子と同じところを見た。
それから、止まった。
「うっけ」
「なに」
「ある」
うっけも、そこを見た。
なんども見た、四年四組。
その下には、さっき、なにもなかった。
四年五組。
うっけ。
まるみ。
カサネ。
名前が、あった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
2話は5月1日 1:00に更新予定です。
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