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婚活相手が推しのエロゲ声優だった。気づいているとは言えないのに、隠し事ができない彼女がポンコツすぎる。  作者: 速水つばくろ


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プロローグ 婚活はじめまして

 ――氏名:大倉陽彦(おおくらはるひこ)

 ――年齢:30歳

 ――性別:男

 ――職業:WEBデザイナー

 ――年収:500万


 ――趣味:グルメ旅・読書


 これはマッチング婚活サイトに登録した俺のプロフィール。


 婚活では案外(あんがい)年収とかこっそり盛(も)って書くものらしいけど敢えてそのまま書いた。


 だが趣味に関しては大嘘を書いてある。グルメ旅? やったことないわ。


 本当は結婚なんて考えてない。母親にせっつかれて嫌々登録しただけだ。適当に誰かと会って「手酷(てひど)く失敗して人間不信になった」とでも言えば、流石に強くは言ってこなくなるだろう。


 だとしても本当の趣味を書くのは憚(はばか)られた。


 ――趣味:エロゲーをプレイすること。


 誰が書ける?


 いくら「失敗してもいい。むしろ失敗しろ」と思っていても、流石に羞恥心(しゅうちしん)の方が勝つ。それに一応「まず会う」ところまで漕ぎ着けないと失敗すらできない。


 外面が大事だというのは社会に出て学んだことの一つだ。


 実際、登録してから数日でマッチングすることとなり……そして休みの日の今日、レストランで食事をする約束をしたわけだ。


 何事も早い方が良い。先延ばしにしても長引くのは心労だけ。俺はまだ……いや一生、好きなことして推したいキャラを推しながら自由でいたいのだ。



 ◯◯は俺の嫁——なんて言葉がひと昔前に流行ったらしいけど、今はもう死語(しご)。


 オタクだって今はリアル嫁を貰う時代だ。画面の向こうのなんとかちゃんさえ居ればいいなんて綺麗事は言っていられない。


 それでも俺は、結婚したいとは思えなかった。


 何故なら……二次ロリコンだからだ。推しのエロゲキャラは殆どがロリキャラ。


 現実の女性に興味を持ったことはない(念のため言っておくが現実の子どもにも興味はない)。


 まぁ……強いていうなら。


「雛坂(ひなさか)日奈子(ひなこ)」という名前の声優には興味がある。


 何故か?


 俺の推しキャラのボイスが全て「雛坂日奈子」だからだ。


 彼女は声質の良さはもちろん、演技の幅が凄い。テンション高いキャラからクーデレまで何でもこなす。テキストがない部分で吐息(といき)などのアドリブを入れたり、早口や奇声(きせい)までこなせるまさにロリキャラのスペシャリスト(俺調べ)なのである。もちろんロリキャラ以外もカバーしているぞ。声はかわいいけどな!


 ……別に昔から声優オタクだったわけじゃない。好きなキャラの声優が「雛坂日奈子」だった。


 それが幾度(いくど)もあっただけだ。


 それだけ好きになったわけだから声優をプライベートでも何かしら支えてみたいなんてことは、もちろん俺も妄想したことがある。


 ただ、どうせ結婚するなら支えがいのある人間が良いと思っただけだ。邪(よこしま)なことは考えていない。……断じて。


 と言っても、一般人が声優とお近づきになれる機会なんてそうそう無い。


 エロゲ声優なんて、ほとんどが顔出ししてないからな。彼女も例外なく。だからあくまで妄想の範囲内。



 ——そう思っていたんだけどな。今日の夜までは。

初めまして。速水つばくろと申します。

この作品は

ヒロインは隠し事をしている。

主人公も隠し事をしている。

だけど主人公はヒロインの隠し事を知っている。

そんな認知格差を愉しむドラマティック・アイロニーです。

主人公はオタクですが誠実な男です。

そんな男の少しズレた思考を楽しんでいただけると幸いです。

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