第十九話 キング雪だるま
「さて帰るかな~~」
「キング雪だるまああああああああああああっ!」
「……」
等と思わず妄想を呟いたらソレを遮る声がした。
遥か遠方から。
「見たかっ! アレが我らの先兵キング雪だるまだっ!」
「うわ~~」
非常識の塊をみた。
前は食人鬼に極卒や化け狸の世界。
今度は怪人に巨大雪だるまか。
もうお腹一杯です。
「それで?」
体を捻り怪人を見る僕。
「それでとは?」
僕の言葉に首を傾げる怪人。
「あの巨大雪だるまで僕を襲わせないの?」
「え? 巨大雪だるまは、ただ呼び出せるだけで、此方の指示など聞かないが?」
「……命令出来ないのに何で呼んだんだ?」
「当然この辺りの破壊活動を行うためにだが?」
「僕を直接襲わせることは出来ないの? 本当に?」
「そうだが」
「周辺の破壊行動に僕を巻き込むだけの為に?」
「だからそういってるだろうが!」
「はああ~~」
「何だ?」
「馬鹿じゃないの?」
「何だとっ!」
「だってそうだろう? 僕を直接襲わせるなら兎も角、周囲を破壊活動に巻き込むために呼んだなんて」
「その何が悪い」
「全部だ」
「はあ?」
「今までの話の流れを考えろや」
「話?」
「手段と目的が違うだろうが!」
「え~~」
僕の言葉の意味を理解できないみたいだ。
何か難しい事言っているか?
僕。
僕の言葉に首を捻る怪人。
頭痛い。
それ意味ないやん。
「……」
巨大雪だるまが、街を襲う。
「キング雪だるまあああっ!」
「巨大雪だるまが僕の遠くに居て良かったというべきか」
うん。
暴れてる巨大雪だるまを遠くから見る僕。
妖怪と自覚した時から僕は何故か視力が上がっていた。
かなり離れた巨大雪だるまを視認出来るくらい位に。
「キング雪だるまああっ!」
「あ~~はいはい」
何故か不自然な程居ない人間。
奇妙な感覚。
ふと空を見上げた。
昼間なので月は無い。
「夜にならんと分からんか」
都市伝説のテリトリーに入ったか判断したいけど分からん。
月が見える時間では無いので。
でも今の状況は分かる。
ここから離れるが吉。
触らぬ神に祟りなし。
「キング雪だるまああああああああああああっ!」
「おお~~派手だな」
僕は感嘆の声を出す。
気分は観光客だ。
破棄に次ぐ破壊。
街は壊滅状態だ。
「キング雪だるまああああああああああああっ!」
「大きいな~~」
そう言いながら巨大雪だるまが僕の方に来ないかを観察する。
此方にくる可能性を考え、逃走方法を思案している時の事だった。
「おい」
「はい?」
背後にいる怪人に声をかけられる。
「何です?」
「何故貴様は巨大雪だるまを恐れない?」
「遠くに居れば安全だから」
「……」
唖然とする怪人。
何言ってんだか。
僕個人に襲わせるなら兎も角。
これだけ離れれば害はない。
飛んできた瓦礫は怖いが。
まあ~~良いか~~この程度なら。




