第十九話 異変 2
またもや眩暈僕を襲った。
あれ?
さっき一度聞いたのに、また留守電の通知が残っている。
どうなってんだ?
「まあいいか……せめて速攻クビにされた理由だけでも聞いて……あれ?」
なに、会社からの留守電通知の一番新しい日付が一年前だと?
しかも立ち眩み前にはなかったはずの留守電が数回残っている。
内容は『早急に当方へ連絡するように』だ。
どゆこと?
目眩する前と明らかに留守電の内容が違う。
「ふむ、電話して直接聞いてみるか」
会社側の説明によると、僕は一年前に長期の無断欠勤でクビになったらしい。
会社から何度も連絡しても音沙汰無し。
それでも二ヶ月は様子をみてたらしい。
そして音沙汰無しとして解雇決定になったらしい。
一年前だと?
おかしすぎるんだが。
僕は無断欠勤は数日もしていない。
明らかに何かがおかしい。
うん。
何でなんだ?
……。
相手側の嘘による不当解雇と言う訳ではない。
向こうの言い分は筋が通っていて、矛盾や虚偽の匂いは感じ無い。
「まいったな~~]
訳が分からん。
とはいえ悩んでいても仕方ないので新しい仕事でも探す事に切り替えるか。
でないと生活ができん。
この不可解な現象は分からんし考えても解決しない。
あ~~。
その前に当面の生活費を銀行から卸すか。
金庫から通帳を取り出して残高を見る。
残金は……あれ?
五百万?
貯金は五十万程度だったはずだけど……。
何で桁が増えてる?
「おかしい」
本当におかしい。
「僕の記憶とこの現実との食い違いが酷すぎる」
……。
分からん。
何が僕に起こったかさっぱり分らん。
まあいいや。
良くはないが。
今は考えるだけ無駄。
そう。
焦るだけ無駄。
こんな事があると飯を作るのすら、辛く面倒いので弁当でも買うか。
そう思い立ち、僕は外出した。
それだけの筈だった。
しかしまた強烈な眩暈が僕を再度襲った。
唐突に。
そして次の瞬間、目に飛び込んてきたの、唐突な目眩に負けない位の異常事態だった。
「貴様……どこから現れた?」
「は?」
いや。
いやいや。
待て待て。
「答えろっ! そこの人間っ!」
「ひっ!」
僕の目の前に怪人がいきなり立って居た。
怪人。
誰が見ても明らかに人ではない。
獅子の様な髪。
赤き瞳。
斑模様の皮膚。
鋭い牙と爪。
そこには派手な鎧を着た怪人佇んでいた。
ザシュッ!
「痛いいいいいいいいっ!」
僕の首筋に痛みが走る!
うん?
あれ?
「痛くない」
なんか物凄い衝撃は確かに有った。
酷い衝撃だけは。
その衝撃を僕は切り裂かれた痛みと思ったんだ。
そう。
でも思っただけだった。
実際は錯覚。
思い込み。
ただの思い込みだった。
何だったんだ?
「貴様……」
「へ?」
「何故あれをくらって生きている?」
ピンピンした僕の様子に心底驚く怪人。
「我が鋼鉄すら切り裂く爪の直撃を受け何故生きているんだ?」
ワナワナと震えている怪人。
「あ~~」
ビクッとする怪人。
なんか滑稽だ。
「何かごめんね?」
「は?」
僕の言葉に唖然とする怪人。
というか此の怪人は作り物だ。
爪とか牙とか見るからに作り物みたいだし。
素材は安っぽいプラスチックで出来ているようにしか見えん。
よく怪人もどきを観察すると……。
コスプレか。
これはただのコスプレですね。
それに先程の僕への一撃で爪が曲がってる。
「その爪曲がったみたいだよ?」
「は?」
唖然とする怪人。
茫然自失。
暫く互いに空白の時間が経った。
コスプレ怪人側はどうも現実逃避してたみたいだ。
「貴様っ! 殺してやるうううううっ!」
怪人が手を交差させる。
「来いっ! 雪だるまあんんんんんんんっ!」
同時に怪人は僕に良く聞き取れない何かを叫んだような気がする。
その時だ。異変が起きた。
僕の視界が暗転。
青空は赤い空に。
白い雲は暗雲に。
世界の色彩が変わる。
変わる。変わる。変わる。
暗雲は一か所に集い、雪だるまの人形に収束した。
「雪だるまっ!」
ゴミ捨て場に捨てられた季節外れの雪だるま人形みたいだ。
「雪~~」
雪だるまの人形の顔が凶悪な顔に変化した。
「雪雪~~」
雪だるまの人形が大きくなる。
大きく大きくなる。
途轍もなく大きくなる。
大きく。
大きく。
異形の巨人に。
手足が生え口から牙が生える。
「キョダイ雪だるまああああああああああああっ!」
巨大化。
まさかアニメの様な現象を現実で見るなんて……。
うん。
これは夢の続きだな。
家に戻り僕は再び寝ようと思った。
それはただの現実逃避の妄想なんだけど。
まあ、しかし僕の視界の現実はそんなに甘くないようだが。




