勝利の代償
「これは一体…」
「先生…?」
先生が来たのか…?
それじゃあ今すぐヴィゲ達は助かるのか?
「先生、先生ですよね!良かった!今すぐヴィゲ達を──」
「近づくな!」
「え?」
「聞こえなかったか!これ以上近づくな!」
そういうと、先生は小さな水晶、ビー玉のようなものを懐から取り出した。
「な、なんで…」
「もしもし。聞こえるか?応援を頼む」
「了解」
「どう言う──」
俺がそう言い終える前に先生の後ろの空間が光る。
あれは恐らく
「何があったのじゃ」
転移魔法か!
そしてその声は…
「これはどういう…」
「先生…?」
レジテンス先生…だよな…?
「うっ」
苦しい…
魔力切れか…
〜〜
ここは…?
確か、俺はやつと戦って勝って…
「ヴィゲ達は?」
「無事です」
「あ、はい」
「…」
俺が目を覚ましたことを確認すると、その人は黙り込んだ
まるで何かを待っているかのようだ
それよりここはなんだ?
壁は硬い石で一部は鉄格子でできてる割に明るいなあ。
まるで明るい牢屋だな
トコ、トコ
足音が聞こえる。
遠いようで、それは確実にこっちに向かってきていた。
「お前は、誰だ?」
この人確かどこかで…
「誰だと言われても…」
「御託はいい。名前は?」
「僕の名前はアフラです」
「そうか。そんな緊張しないで。さ、肩の力を抜いて。すぐ終わるよ」
「わかりました」
「それじゃあこっちに寄って。これをジーッと数秒間見てくれるか?」
そう言って先生はネックレスのようなものを取り出してその宝石を見るように促した
この人、あの時学校の名前やルールを説明してた人か!
「は、はい」
「もっとも、君に拒否権など存在しないのだがね」
〜〜
「よくできたね。それじゃあ最後に一つ、質問をしてもいいかな?君、ほんとに3歳?」
「はいと言えば嘘になり、いいえと言っても嘘になります」
「…」
(つまり、3歳だけど、3歳じゃないと言うことか?)
そういうと校長先生はしばらく俺の顔を見つめた
そして、小さく笑った。
「ははっ」
「え?」
「いや、なんでもない。とりあえず、君には残念なお知らせといいお知らせがある。どっちから聞きたい?」
いきなりだな。
突然きてネックレスを見せて、質問して、お知らせが2つあるとか展開早すぎやしないか?
「じゃあ残念なお知らせから」
「残念なお知らせと言うのは君、退学ね」
「え?」
「いいお知らせというのは…」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!なんで退学になるんですか!?」
「それは校内での決闘が校則に違反しているからだよ」
「で、でもあれは正当防衛ですよ!相手が戦いを仕掛けてきたから…」
「あれ?マレは違うことを言ってたんだけどね。『あいつが煽って決闘になった』って言ってたよ。でもね、もしそれが本当でも校則違反は校則違反だよ」
あいつ…
どこまでも…!
「で、でも3歳ですよ!?やりすぎじゃ…」
「やりすぎ?悪いことをしたら罰を与えないとここが無法地帯になってしまうだろう?」
正当防衛でも退学?
正気かよ…
「でもヴィゲ達はどうなるんですか…?」
「もし、ヴィゲ君達も決闘をしたならもちろん退学さ」
待てよ!ヴィゲ達は…
俺は前世の知識があるからまだ生きていけるかもしれない、でもヴィゲ達は…
「ちょっと待ってください!ヴィゲ達は俺とアイツの決闘を止めようとして巻き込まれただけなんです!」
「それは本当かい?」
「本当です!」
「絶対か?」
「はい」
「でも、それが本当なら君の退学は確実なものになるよ?」
「構いません。事実を言っただけですから」
もちろん嘘に決まっている。
それで、ヴィゲ達を、ヴィゲ達を…
「それが本当ならヴィゲ君たちの退学は取り消してあげよう。それで、いいニュースというのは…」
いいニュースというのは…なんだ?
「君には知識が必要だろう?だから特別に図書館を誰も使わない時間帯、夜に使うことを許可する」
「ただし条件がある。もし誰かが来たらすぐ隠れることだ。これは例外中の例外だからね」
「まるで極秘情報扱いですね。わかりました」
(やっぱりこの子は潔いね。3歳とは思えない。歳をとる魔術でも自分にかけたのかな?そんなわけないか)
「それじゃ早速君を退学処分にするね。出てきておいで」
そう言うと校長先生は魔術で鉄格子を曲げて俺を出してくれた。
校長先生って見た目の割に脳筋だったりする?
「なんかとても失礼なこと考えてなかった?」
「いいえ、何も?」
「それならいいけど。さあこんなところで油売ってないで早く行くよ」
この校長先生もレジテンス先生と同じように翼がないんだよな。
なんならツノもないし。肌は流石に赤みのあるけど
これがデフォなのかな?
「ここら辺でいいかな?君の母の名前は確か…リーメスだったかな?」
「そうなんですか?実は自分、母の名前を知らなくて」
「そうか。君の母は名前を教えてくれなかったんだね」
「そうなんです。それが普通だと思ってました」
俺は聞き逃さなかった『あの事件が原因か?』と校長先生が呟いていたのを
なんの事件だろう?いつか母に聞いてみよう
「ああ、あとその服は君にあげるから返さなくていいよ。その制服には特別な力があるんだ。絶対に無くさないでね」
「はい」
そう言えばこの制服はシャワーが1週間に1回でも臭くならなかったな。
それにしてもこの学校のシャワーは冷たかったな… まるでプール上がりの地獄のシャワーのようだった
いつか暖かい風呂に入りたいものだね
そんなことを考えていると、校長先生の足が止まる。
ここは、この学校の入口か…
ここで転移陣を使うのか。
先生は卒業後、家に送るときに使うって教えられたが、こんな使い道もあったのか
「それじゃあ最後に誰かと挨拶するかい?」
「ヴィ─」
待て、ヴィゲ達はまだ幼い。この事件がいつかヴィゲ達の傷になるかもしれないんだ。
責任感がヴィゲ達の未来を押し潰すようなことになって欲しくない。
「いや、やめておきます。最後に先生と、挨拶してもよろしいでしょうか?」
「…レジテンス・パウペルタス先生はね。忙しいから挨拶はできないんだ。ごめんね」
「そう…ですか… もし、先生の仕事が終わったら伝えてくれますか?『ありがとうございました』って」
「わかった。君も、これから大変だろうけど頑張ってね」
校長先生は俺を退学にしたが、もしかしたらそこまで鬼じゃないのかもな。
これがこの世界の基本なら、俺は甘んじて受け入れるしかない
「はい!ありがとうございます」
転移陣が起動する
視界が転移陣の光で埋め尽くされる。
ああ、やっと実感したよ。俺の学校生活は、終わったのか…
ポタリ、と足元で小さな水滴が弾けた。
あれ?なんで、床が濡れて…
-レジテンス・パウペルタス視点




