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日陰姫の陰謀論  作者: 蜜柑
番外編
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番外編・関係者各位事情聴取結果

ディルがユーシェの部屋に行く前のお話です。

 第一聴取。後宮最高責任者女官長より。


「ユーシェ様が後宮入りをする際に、身体チェックをいたしました。その際とてもお痩せになっていたことが気になり、宮医に報告をしました。それから、右肩に矢傷と思われる傷跡があり、女性なのになんとお辛いことかと思わず涙をこぼしてしまいました。ご実家から侍女の一人も連れていらっしゃらなかったということで、王宮侍女を手配しようとしたのですが、身の回りのことはご自身でできるとお断りになられました。養女になったとはいえ、孤児であったことに変わりはないので、そのようなものに付きたい者もいないのではとおっしゃられました。一人もつけないわけにはいきませんので、なんとか言い含めて身分の低い者を一人つけることができましたが、それ以上は頑なに拒否されています。ご自身のご身分と、お身体のことを気にされてのことだと思います。庶民であっても、養女となって後宮に居られる方はユーシェ様だけではないことも、その方たちが侍女を最低でも5人はつけているとお伝えしたのですが、やはり納得いただけなくて…。護衛も最低限しかつけてくださいません。外を出歩くことはしないから不要だとおっしゃるのです。こちらに来られてからもお食事もあまり摂っていないようですし、とにかく心配なのです。ご実家からも面会も便りもございません。こちらに捨て置かれたのも同然でございます。なんとか、なんとかなりませんか」




 第二聴取。食事係より。


「そもそも後宮のお姫さん達は食事量が少ないんだ。太るのが嫌だとか言って食べないから、下働きの者達よりも少ない量を出すことになっている。もちろん増やすように言われれば増やすさ。茶会のたびに菓子も出しているからお姫さん達も満足しているんだろう。しかし、あの新しいお姫さんは、それより更に半分にして欲しいと言って来た。確かに、あのお姫さんは食事を残す量が多かった。てっきり好き嫌いが激しいのかと思ったら、食べられなくて心苦しいから最初から減らして欲しいと、直筆の手紙を侍女殿が持って来たんだ。そんなことするお姫さんは初めてだ。それに茶菓子も不要だという。侍女殿曰く、そのお姫さんは痩せっぽちで、今にも倒れそうだっていうじゃねぇか。この後宮で、俺たちの料理を食べながら弱っていくなんて、冗談じゃねぇ!なんとかなんないのかよ、えぇ!?」




 第三聴取。護衛騎士より。


「ユーシェ様はほとんど居室スペースからお出になられません。外部と接触するなど不可能です。図書室の本も手間になるからと侍女に取りに行かせ、お部屋で過ごされます。居室スペースのお庭に出られることはありますが、我々を連れて庭園を散歩したりしようとはなさいません。仕事を増やしたくないと言うのです。扉の前に立っているのも疲れるだろうから、人の気配がなければ座っていてもいいのだとも言ってくださいます。えぇ、もちろん座ったりはしていません。我々を油断させようとしているのではなく、労ってくださるのです。自分のような外れに付かせてしまってごめんなさいと謝られるのです。他の、もっと陛下と親しくなれそうな令嬢の護衛につけるように口添えするとも言って頂きました。この後宮で、ご令嬢にそんなことを言われたのは初めてです。嘘をついているかどうかなど、あの方の目を見ればすぐに分かります。あの方は本心でそう言っておられるのです。ですから、それが不憫で仕方がなくて…。陛下がいらっしゃってくださった時は、あの方が救われると思って喜んでしまいました。あの方は疑わしいことなど何もなさっておりません。ただ、我々はあの方をこんな日陰の部屋ではなく、もっと明るい場所へお連れしたいだけなのです」




 第四聴取。洗濯場侍女より。


「何度も何度もお洗濯はこちらでするのでお渡しするようにとお願いしたのです。ですが、自分でできるし、手を煩わせるのは申し訳ないから大丈夫だというのです。たしかに、ご自分でなされているところを拝見しましたが、問題ありませんでした。…え?衣服に特におかしな点はございませんでしたよ。お付きの侍女さんが干すところをお手伝いしたので間違いありません。それでも最近はお洗濯物を任せてくださるようになって、ホッとしているんですよ。今までよりも上質なものをいただいたから、自分で洗濯をして傷めてしまったら困るからとおっしゃっておりました。何か…不手際がございましたか?」





 第五聴取。侍女ティナより。


「ユーシェ様が侍女を増やそうとしないのは、ご自身が孤児であることをお気にされているのが大きいのですが、何よりお身体を見られたくないのだと思います。ユーシェ様は、お召し変えの際に私を使ったことがありません。湯殿も手伝いは不要とおっしゃいます。お仕えし始めたばかりの頃にお身体を拝見した際、私が顔を顰めてしまったのを気になさっているのです。もちろん、不快な思いをさせようと思ったわけではございません。完全に私の不手際です。ですが、あまりにお痩せになっていて、一体今までどんな生活をされていたのかと、ユーシェ様の置かれた環境に憤ったのです。ですが、ユーシェ様は今もそのことを覚えていて、新たに侍女が増えて、嫌な思いをさせてしまったら申し訳ないとお考えなのです。近頃は陛下のおかげでお食事の量も増えて、少しずつふっくらしてきているので安心しています。陛下は初めてユーシェ様をご覧になった際に、病ではないかと心配されておいででしたが、私共もずっと心配していたのです。ですから、陛下がいらっしゃるようになって、本当に感謝しております。ユーシェ様は、後宮で衣食住を保証してもらっているだけでありがたいとおっしゃっておりました。裏表のない方です。陰謀など、ありえません」




 以上。聴取付添人、ディル。




 なんだこれ。全然陰謀論じゃねぇ。陰謀のかけらも感じられねぇ。それどころか、人望厚い令嬢じゃねぇか。なんだ、これ。


 アレクに言われて陳情書を読み直して聴取して見た結果がこれだ。陰謀なんてもうどうでもいいな、これは。

 それよりも、我が主人は日陰姫にたいそうご執心だということだし、本人を調べに行ってみた方が面白そうだな。聴取の報告は後にして、日陰姫を見に行くか。







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