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48.収納できない魔人

「は、話せる奴らかどうかって、どう判断するんですか?」

 俺は、イフリートと名乗る魔人に聞いてみる。

 ロバート君の方から、少しでも気を反らせたら御の字だ。


「フッ、戦う姿勢なのか、話し合う姿勢なのか、判断は簡単だと思うが」


 魔人の言葉を聞いて、俺は構えていた盾を降ろす。

「お、俺は、話し合いで解決できるなら、話し合いたいぞ」


「そうか、それでは、先ほどそこの女が言ったように……」

 そう言うと、俺の方に炎の魔法を放って来た。

「ワシは炎で語ろう」


「う、ウワァー」

 俺は避けようとしたが、避けきれない。

 だが、俺の手前で炎は弾けて消える。

 イノリが、俺の前に魔法の防壁を張ってくれていたようだ。


 同時に、もう一発炎の魔法が放たれた。

 そちらは、リサとロバート君の方に飛んでいた。

 動けないロバート君をリサが押し倒して、すんでの所で魔法の直撃を避けていた。

「先輩、面目ないっス」


「へっ、この腰抜けがっ。

 まあ、守ってやるけど、腑抜けた戦いをしてやがったら、結婚してやんねえぞ」


「そ、それは困るっス」


 勇気を振り絞って立ち上がろうとするロバート君たちに、もう一発かまそうと魔人が構える。

「そうは、させるか。

 格納インプット、俺の魔人イフリート」


 魔人は目の前から姿を消した。


「さすがブクちゃんナリー。

 47階のラスボスも、一撃ナリ」

 ソラが嬉しそうに褒めたたえてくれる。



 だが、喜んだのは束の間だった。

 また、魔人が俺たちの前に姿を現した。

「空間転移の魔法を使うとは驚いた。

 だが、ワシも地獄の魔王の番人。

 この程度の転移で、封じ込められると思うなよ」


 ゲゲッ、俺の収納魔法が通じない。

 でも、瞬間移動が出来る魔人なら、元いた場所に戻ってくる位はどうってこと無いのか。

「お、俺の存在価値が、地に落ちたな」


 俺の自分を卑下した言葉を、即座にリサが否定する。

「ブク、バカヤロー。

 てめえのお陰で、アタイたちは立て直す時間が生まれたよ」

 言うが早いが、魔人イフリートに斬りかかる。

 魔人は、燃える腕でリサの剣を受ける。


 ザクッ


 腕に切れ込む音がするが、魔人は意に介さない。

 リサの持つ剣が、みるみる赤くなっていく。

 リサの手から、白い煙が上がるが、リサは手を緩めない。

「アタイは、昔と違って魔法防御の魔道具を持っているんだ。

 そんな程度の炎で怯んだりしないぜ」


 いやいや、煙が上がる程の熱だ。

 絶対両手は、大やけどしているだろう。


 そこへ、ロバート君も槍の切っ先で斬りかかる。


 ズバッ


 怯んでいたロバート君からの攻撃は想定していなかったのか、魔人の腕が斬られて飛んだ。

 リサの剣も、もう片腕をそのまま切り落とした。

「ハッ、助かったぜ。ロバ」


 だが、切り落とされた両腕は、炎のように燃え尽きて消えてしまう。

 そして、魔人の本体の腕は元通り再生されている。


「確かに、貴様らの剣の言葉、しかと聞いたぞ。

 では、次はワシの炎の言葉を……」


「氷魔法、超氷結エクストラフリージング

 ソラの魔法で、魔人の片側が凍り付く。

 だが、数秒でその氷も溶けて元の炎の魔人に戻ってしまう。


「なるほど、強力な魔法だ。

 伊達に、ここまで来れていないわけだ」


 魔人が、また炎の魔法を発しようと構える。

格納インプット、俺の魔人イフリート」

 また、魔人が消える。


「ブクちゃん。炎の魔人なんか収納したら、また色々燃やされて、氷を溶かされたりするんじゃない?

 そしたら、ミノタウロスの肉とかが腐っちゃうんじゃない?」

 ソラに言われて、確かにそうかもと思った俺は、直ぐに出す。


搬出アウトプット、俺の魔人イフリート」


 何だか魔人の様子がおかしい。

「グッ、まさかあんな毒を食らうとは……」


 一体、俺の収納魔法の行き先は、どうなっているんだ?


「氷魔法、超氷結エクストラフリージング


 ピシピシッ


 今度は、効いているみたいだ。

 同じように氷は溶けるが、炎の勢いが弱って見える。

 だが、簡単に勝たせてはくれない。


 炎の魔人の周りにランダムに火の玉が発生し、俺たちに向かって飛んでくる。

 俺も必死で避けるが、避けた尻から次が来る。

 さらに、床や壁に当たると爆発する。


 直撃は避けたが、床で爆発した爆風で、俺はふっ飛ばされて地面にもんどりうって倒れ込んだ。

 背中を強打して、息が出来ない。


 そこへ、吹き飛ばされたイノリが圧し掛かってきた。

 俺の顔の上に、イノリの豊満な胸が乗っかる。

「んほっ、最高のポジション」

 あれっ、いつの間にか息が出来ている。


「ブクローさん。こんな時に、何を言ってるんですか」

 真っ赤になっているイノリが可愛い。とか言ってる場合じゃない。


格納インプット、俺の魔人イフリート」

 視界の端に捉えていた魔人が消える。


「フウーッ。ブクのお陰で、一息付けるぜ」

 言うが早いが、再び現れた魔人にリサが斬りつける。

 横からロバート君も、槍をぶっ刺す。


「氷魔法、超氷結エクストラフリージング

 魔人の背中を、ソラの魔法が凍らせていく。


 俺の上から飛び退いたイノリも詠唱する。

「水魔法、干天の慈雨(ウエルカムレイン)

 霧雨が円形の大広間全体にサラサラと降り注ぐ。


 雨は弱った魔人の火を消していき、熱のこもったボスフロアの温度を下げていく。

 リサは、斬って斬って斬りまくる。

 ロバート君も槍を刺しては抜きを繰り返す。

 イノリの降らせた雨は、イノリが祈り続けるせいで降り続ける。


 そして、ソラの氷結魔法も2度3度と魔人を凍らせる。

 4度目、5度目で、ついに魔人は凍り付いて動かなくなった。

 そこへ、リサがクルクルと2回転しながらの強烈な回し蹴りを叩きこむ。


 ガシャーン


 凍り付いた魔人は、バラバラに砕け散った。


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