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49.ダンジョン攻略は正しい道なのか?

 恐らく、47階のボスを倒した。

 確認するために、フロアの出口の扉を開けてみる。開く。



「イノリ、滅茶苦茶手が痛い。

 早く治療してくれ!」

 リサが両手をイノリの方に出す。


「まあ、これは酷い。

 よくこんな手で剣を握って、敵を斬りまくれましたね」

 イノリが感心している。


 イノリの魔法による治療の後、俺は包帯に回復ポーションを染み込ませてリサの両手に巻いた。

「イテテテ。ブク、もっと丁寧に巻けよ」


「いや、丁寧に巻いているよ。

 怪我が、ひどすぎるんだ」

 リサは、この怪我をものともせずに剣を振るっていたんだから、恐れ入る。




 翌日、王子たちのパーティーが、また追いついてきた。


 丁度、お昼ご飯を食べている所だった。

 リサは両手が使えないから、ロバート君に食べさせてもらっている。

 和気あいあいだ。


「47階のボスは、46階のボスよりさらに強力だったはずだ。

 それにもかかわらず、全員元気そうに見えるんだが」

 王子が少し呆れたように、しかし信じられないという様子で聞いてくる。


「今回の炎の魔人は、さすがに手ごわくて、リサが両手を火傷してしまいました」


 俺の説明を聞いて、王子は何だか安心したように見える。

「そうか、さすがの君たちも負傷者が出たか。

 それで、回復に何日くらいかかりそうだ?」


「ブクは大げさなんですよ。

 こんなのケガの内に入りません。

 アタイは、いつでもOKです」

 リサの答えを聞いて、王子は驚きが隠せない。


「そ、そうか。じゃあ、すぐに出発で良いのか」

 王子の答えを聞いて、『プリンス・プディング』のメンバーの元気が落ち込んだ気がした。


「お、おい、リサ。

 大事を取って、もう一日休んでもらうぞ」

 俺の言葉にリサが反発する。

「何言ってんだ、ブク。アタイは大丈夫だって言ってんだろ」


「いえ、ここは一日延ばしましょうよ。急ぐ必要は無いんですから」

 ロバート君の一言で、リサも引いた。

 『プリンス・プディング』のメンバーも少しホッとしている様子が、うかがえた。


 大丈夫なんだろうか?

 もう戦いたくない、進みたくないという雰囲気が感じられた。



 翌日、俺は妖精の石(フェアリーストーン)を使った報告を行う。

「こちら、ブクローパーティーです。

 出発してから31日目です。

 47階のボスを倒して、『プリンス・プディング』のメンバーとの合流も果たしました。

 47階のボス戦での犠牲者は、ゼロです。

 今日はこのまま合同でキャンプを張り、明日ヘンリー王子たちが出発、その翌日我々が出発の予定です。

 プラムにも俺の無事を伝えてもらえたら、嬉しいです。

 妖精フェアリーさん、ここまで伝言お願いします」

 石から現れた精霊が、ダンジョンの天井に消えていく。


「アタイも49階は、槍にするよ」

 リサが槍をブンブン振り回して、すっかり良くなったことをアピールする。


「なんなら、もう一日出発を延ばしますか?」

 俺が王子に聞いてみると、彼も厭戦えんせん気分に気付いているようだ。

「いや、これ以上休んだら、俺たちの戦力はダウンしてしまう。

 戦う意志が残っているうちに、進むことにする」




 王子の言葉通り、『プリンス・プディング』の戦える7人は次の日に出発した。

 片腕を失ったシメオネさん、一命はとりとめたものの自力では立つことも出来ない魔法使いの人の二人は、我々と一緒にもう一日ここでキャンプだ。


「シメオネさん。王子のパーティーのみんな、かなり疲れているんじゃ無いですか?

 あのまま戦ったら、ヤバい気がするんですけど」


 シメオネさんは、一息ついてから俺の質問に答える。

「そうか。もはや隠せないレベルになってしまったか。

 実は、今回のダンジョン攻略の始まりから、不協和音があったんだ。

 俺やスアレスが戦意をかなり失っていることや、補充の騎士団の兵士たちが、死にに行くような任務に行きたくないという意思表示をしていることを、軍の参謀たちは知っていた。

 だから、シフト攻略と言いながら、君たちの負荷が大きくなるような配分をしたんだ」


「えっ? 私たちの実力を認めてのことだと、師匠はおっしゃっていましたが」

 イノリが、疑問点を口にする。


「聖女カマラ様は、俺たちの不満を受け止めて下さっていた。

 前回の攻略でも、35階以降に意気込んでいたのは、ヘンリー王子だけだった。

 カマラ様は、俺たちに全力で戦わなくて良いとまでおっしゃって下さったんだ」


「全力で戦わなくて良いって、それじゃあ厳しいダンジョンは攻略できませんよ」

 イノリが、信じられないという表情だ。


「そうだ。ダンジョンを攻略する必要は無い。

 ダンジョン攻略が出来なくても、人類が滅亡することは無い。

 滅亡するのは王家だけだと、おっしゃっていたんだ」


 シメオネさんの言葉に俺は驚く。

「200年前に大魔王が復活した時は、人類の90%が死んでしまったと聞きましたよ。

 そんな事態が起きて、良いわけが無いと思うんだが」


「200年前の記録は、王家の資料だ。

 100年前にダンジョン攻略したけれど、犠牲が多くて戦乱の世になった。

 カマラさんが言うには、戦乱の世で昔の書物は王家の図書館にあるもの以外は散逸してしまったらしいんだ。

 つまり、人類の90%が死んでしまったというのは、王家のでっち上げという話なんだ」


 イノリが、その話を否定する。

「でも、私がその話を聞いたのは、王家からではなく、権力から距離を置いた教会からですよ」


「権力から距離を置いているから、真実を伝えるという訳じゃ無い。

 教会の上層部は王家と癒着している。

 100年に一度大魔王が生まれるが、それは王家から権力を奪い取るだけで、人類の滅亡を目的とはしていない。

 瘴気によって生まれた魔族は、自分たちの生存を主張しているだけだ。

 それが、カマラさんからお聞きしたダンジョンと魔王発生のあらましだ」


「なるほど、ダンジョン放置派っていう人たちの考えは、そういう事だったのか」

 俺は、何となく理解した。


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