狂神に捧げる戦い 06-18
エンシエントロード内では、加速は行われず慣性航行となる。よって人工重力は発生しないはずであるが、居住ブロックは船外に放出され船の周りを回転することで人工的な重力を発生させていた。
グスタフは、その人工重力のおかげでシートに深々と座っていられる。
シートに埋まり込んだグスタフは、いかつい顔を不機嫌そうにしかめつつヴァーチュアルコンソールに向き合っていた。
そこは、娯楽室を兼ねたメスデッキである。
しかめっつらのグスタフは、自分の目の前に座っているケンに目を向けた。
ケンは、コークを飲みながら古い娯楽映像を眺めている。珍しく、気楽そうな笑みが口元に浮かんでいた。
グスタフは、少し唸る。
パルシファルが今航行しているエンシエントロードは、通常空間では圧縮されている高次元を伸長して造られた超空間トンネルというべきものだ。船の外は宇宙の外だといってもよく、通常の物理法則が通用しない。よって、そこで戦闘するのは不可能といわれている。
だからエンシエントロードは、ある意味とても安全な場所だともいえた。
そのため、彼ら戦闘要員はいつもより緩やかなローテーションを組まれる。
だが、それで暇になるかというと、そうではない。キルケゴール戦闘班長はシミュレーション訓練メニューを組み上げ、空き時間にびっしりと戦闘フォーメーション訓練を埋め込んだからだ。
まあそれくらいなら、どんな班長でもやることだといえる。
しかし、キルケゴール班長はさらに戦闘時のレポート提出を要求していた。
戦闘中に自分が何を考えどう行動すべきと思ったかを記述して提出するように、グスタフたちは指示されている。
グスタフの提出したレポートはキルケゴールが満足するものではなかったらしく、リジェクトされた。
再提出版もリジェクトされ、今グスタフは三回目の提出に向けて頭を絞っている。
グスタフは、暢気そうにみえるケンに向かってため息をつく。
「ブラックソード隊長は、レポートの提示終わったんですか?」
ケンは、娯楽映像から目をはずしグスタフに向けてにやりと笑う。
「ああ。キルケゴール班長には、受け取ってもらえたよ」
うーんと、グスタフはうなる。
「どんなレポート、書いたんですかね」
ケンは手元にヴァーチャルコンソールを起動すると、テキストをグスタフに向かって送信した。
グスタフは、目をむく。
それはとても簡潔な、テキストだった。多分文字数は四百字に満たない。
「これで、リジェクトされなかったんですか?」
「ああ、そうだな」
平然というケンに、グスタフはため息をつき首をふる。
「おれは、千二百字でリジェクト二回というのに」
ケンは、片方の眉をあげる。
「戦闘時の記録なんて、バトルレコーダーに記録されているものをみたほうがはやい。むしろ、戦況をどう判断して、どう行動しようとしたかが知りたいんだよ、班長は」
グスタフは、苦笑する。
「戦闘中なんて、夢中でやってますからね。考える前に、動いてる」
ケンは、肩をすくめた。
「まあ、そこをなんとかしろと班長はいってるんだろうな」
グスタフは腕を組み、むうと唸った。
そして、またケンのほうを向く。
「それにしても、ブラックソード隊長。あれについては、詳しい説明を求められなかったんですか?」
ケンは、驚いた顔をする。
「あれ、ってなんだ?」




