狂神に捧げる戦い 06-06
ワルターは刺すように強い眼差しを、ユーリに向ける。
「ノヴァーリス航海士、進路を連邦艦隊へ向けろ。第一戦闘速度まで、加速」
ユーリはごくりと息をのむと、操舵レバーを掴み声をあげる。
「対消滅リアクターエンジンの出力を、全開へ。進路、Y3、X2、第一戦闘速度まで加速、ヨーソロー」
ユーリの声を受け、トーマスもコンソールの操作をする。
「対消滅リアクターエンジン出力百パーセント、フライホイール十次元ケイデンス限界域へ上昇、冷却システムの出力を上限まであげます」
ワルターは、報告に頷き今度はダーナのほうを向く。
「姫殿下、全戦闘システム起動、戦闘態勢をとりグングニルのチェンバーゲートをオープン」
ダーナはコンソールを操作し、ヴェルザンディに眼差しをなげる。
「ヴェルザンディ。セーフティロックを解除し、超空間十次元リンクのキャパシティを最大に」
ヴェルザンディはおじぎをすると、次々とウインドウを立ち上げていく。
ダーナは、獲物を狙う虎のような笑みを浮かべている。
突然、戦闘艦橋に警告音が響く。
赤いアラーム表示が、全天周スクリーンに流れる。
スクルドが、声をあげた。
「連邦のドローンに、ロックオンされたわ」
ダーナは、嘲るような笑みを浮かべる。
「あら、連邦の皆さん、やる気をみせてくれるの? メインビーム砲でも撃つつもりかしら」
ワルターは不機嫌な顔で、鼻をならす。
「それはなかろう、連中は先の戦いでパルシファルのバリアを崩せないことは判っているからな」
ヴェルザンディが、ワルターに問いを投げる。
「ロックオンに対して、ジャミング展開と回避行動を行いますか?」
ワルターは目を細め、首を振る。
「いや、このまま攻撃プロセスを継続だ。姫殿下、グングニル発射準備に入れ」
ダーナは、にぃっと笑う。
「ラジャーよ、艦長。連邦の攻撃ごと、グングニルで消し飛ばしてあげるわ」
苦笑気味の笑みを浮かべたトーマスが、声をあげる。
「対消滅リアクターエンジン出力、百七十パーセントまで上昇」
ヴェルザンディの声が、そこに被さってゆく。
「ビーム砲十次元チェンバーへのエネルギー充填、限界値に達します」
ダーナは、ごちそうを目の前にしたように楽しげな笑みを浮かべている。
「ターゲットスコープ、オープン。メインビームシステム、グングニル発射準備よろし」
ダーナは舌なめずりしながら、銃把型コントローラを握っている。
その瞬間、スクルドが声をあげた。
「敵、ヴリトラクラス、対艦ミサイルを発射したよ。数八。本艦への到達予想時刻は百七十秒後」
全天周スクリーンの天頂部に、八つの星が出現している。
ワルターは、不機嫌そうに呟く。
「反応弾を、炸裂させるつもりか? この距離では、なんの意味もない」
「まあいいよ、艦長。グングニルで、まとめて吹き飛ばすから」
コントローラを握ったダーナは、上機嫌な調子でいう。
グングニルの追尾システムは、八機のミサイルも捕らえた。
ダーナは獲物を目の前にした猫の笑みで、舌なめずりする。
「グングニル、自動追尾プログラムエクスキュート完了」
ワルターは困惑したように、眉を顰める。しかし、意を決したように目を見開くとダーナに向かって吼えるような声をだす。
「よし、グングニルを発射だ!」
「対消滅リアクターエンジン、出力二百パーセント」
トーマスの声に、ダーナが頷く。
「全砲口の、シールド解除。総員、対衝撃防御」
ダーナがトリッガーを引こうとしたその瞬間、ヴェルザンディが声をあげる。
「敵、対艦ミサイル、炸裂します」
全天周スクリーンは目映い新星の輝きに支配され、ホワイトアウトする。
視界は失われたが、グングニルの追尾システムは生きていた。
ダーナはかまわず、トリッガーを引く。
「グングニル、発射!」




