狂神に捧げる戦い 06-02
凍てついた冬の夜空で輝く星の輝きを宿した瞳で、キルケゴールはシュレーゲルを見つめる。
そして、問いを発した。
「確か連邦艦隊には、ネームドであろうパイロットがいたはず」
少し渋い顔を、シュレーゲルはキルケゴールに投げた。
「ブラックソードの、戦闘記録を確認しました。彼が手こずった相手は、多分ネームドですね。ホワイトファングというコードネームがついたパイロットである可能性が、高いです」
フッサールが、うなる。
「ケンの小僧が手こずるたぁ、尋常じゃあないな」
シュレーゲルは、頷く。
「もし本当にホワイトファングであるなら、単機で戦艦二隻をトゥールーズ軌道上で撃沈したパイロットです」
フッサールは、感嘆の声をあげた。
「ケンの小僧と、同等の戦績というわけか」
キルケゴールが冷静な表情を保って、シュレーゲルをみた。
「それが本当なら、ホワイトファングにパルシファルが墜とされかねないけれど。シュレーゲル参謀、あなたは当然対策を考えているのでしょう?」
シュレーゲルは、苦い笑みを浮かべて頷く。
「サーシャ整備班長、あれの進捗はどうですか」
シュレーゲルの問いに、サーシャが笑みを浮かべて答える。
「ブラックソード専用機なら、とっくに組み上がってハンガーデッキで待機してる」
サーシャは、口を歪めて笑う。
「今すぐ出すことだって、できるよ」
キルケゴールは、薄く笑う。
「特別な機体で、ブラックソードをホワイトファングにぶつけるつもりなのだね、参謀殿」
シュレーゲルは、申し訳なさそうに目を伏せる。
「そのとおりです」
キルケゴールは、シュレーゲルに頷きかける。
「別にかまわないのだけれど、わたしの部下をそういうふうに使うのなら、ひとこと欲しかったな」
シュレーゲルは、深く頭を下げた。
「お詫びします、キルケゴール戦闘班長。以後、気をつけます」
キルケゴールは、少し笑う。
「以後が我々にあるといいね、参謀殿」
シュレーゲルは、苦い顔のまま頷く。
ティークが、少し呆れ気味の声を出す。
「それでは、本艦の運命は十七歳の子供に託されるわけだな」
隣に座るロキが、豪快な笑みを浮かべて口を挟む。
「本艦の運命ではない、テラ人類の運命が託されるというべきだな。しかし、シュレーゲル君の作戦に、ひとつ気に入らないところがある」
シュレーゲルが驚いた顔をして、ロキをみる。
「何でしょうか、陛下」
ロキは、楽しげに言葉を発する。
「それはもちろん、ホワイトファングの相手をするのがこのおれではないというところだよ」
シュレーゲルは蒼くなり、そして赤くなった。
「王陛下、冗談じゃあないです。それではあまりに、でたらめだ」
「まあ、そうはいっても」
ロキは、シュレーゲルの抗議を無視して語る。
「若者が栄光を手にするチャンスを、おとなが邪魔をしてはいかんよな。今回は、ブラックソードに譲ろう」
全員が思わず失笑を浮かべたが、ただワルターだけは表情を崩さなかった。
ワルターは、いつものように凶悪な面相でロキに頷きかける。
「全員、作戦を理解したな。では、本時刻より作戦を発動する。各自自分の持ち場で、作戦行動を開始するように」
一同がワルターのほうをむき、ワルターは一同を見渡す。
その瞳は険しく、しかし強固な意志の力が漲っていた。
「では諸君、かかるぞ」




