表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球よ、永遠に  作者: ヒルナギ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/97

聖愚者の旅立ち 04-25

「インドラクラスから、ビーム砲の砲撃がきます」


 ヴェルザンディのあげた報告の声とほぼ同時に、全天周スクリーンの天頂付近が七色の光を放つ。

 無数の虹が砕かれまき散らされたような光の乱舞が、パルシファルのブリッジを満たした。

 ウルズが、落ち着いて報告の声をあげる。


「連邦のビーム砲は、パルシファルを覆っているカイザー・ヒューゲルの破片に阻害されて威力が50%くらいになってるよ。これじゃあ、有効打は無理だろうね」


 フランツは、うなずく。

 ロキは、怪訝な顔をして言った。


「それは、こちらの攻撃も無理ということなのか?」


 フランツは、にっこりと笑った。


「パルシファルのメインビームシステムが放つビーム砲のパワーであれば、たかが隕石群くらいは問題になりませんよ」


 ロキは驚きを顔に浮かべたが、何も言わなかった。

 フランツの両手は、相変わらず忙しく動いている。


「パルシファルの対消滅リアクターエンジンのエネルギーレベルは、もう十分メインビームシステムが撃てるところまできてるよ」


 ウルズの言葉に、フランツは不機嫌そうに頷く。


「判ってるよ」


 フランツは、思わず口を歪める。

 全くこの船は、あくまでもまともに言うことをきかないつもりなのかと、こころ中で毒づく。


「メインビームシステムの、エネルギー転送用超空間十次元リンクが不安定です。各ビーム砲へ、十分なエネルギー供給ができていません」


 ヴェルザンディは、穏やかに報告の声をあげた。

 フランツは、ため息をつきながら応える。


「それも判ってる。次元波動の波形を、変えてみた。これで、どうだ」


 パルシファルのブリッジに立て続けにウィンドウが起動してゆき、甲高いエンジンの駆動音と振動が響く。

 それは一瞬、クライマックスを迎えるように高まりをみせたが、すぐに静まってしまう。


「一度エネルギーレベルが百パーセント近くまできましたが、十パーセント台まで落ちてます。これは、まるで」


 ヴェルザンディが何かを言おうとして、言いよどんだ。

 フランツは、深い思考の井戸にはまりこんだものの瞳でヴェルザンディをみる。


「かまわないから、言ってみるといい。ヴェルザンディ」


 フランツに促され、ヴェルザンディは声をあげる。


「まるで、この船は戸惑っているようにみえます」


 フランツは珍しくその美貌を、困惑で曇らせていた。


「まあ何千年もの時をへて地中から掘り出され、無理矢理改造されてはじめて宇宙に飛び出したんだ。無理もないか」


 フランツは、ため息をつく。

 やはり本来は、時間をかけて慣らし運転をするべきなのだろう。

 だが敵艦隊を目の前にして、そうも言ってられない状況ではある。

 ふと、フランツはロキのほうをみて問いを発した。


「王陛下、何かいいましたか?」


 ロキは、深い物思いから現実に戻ったように目をあげる。


「いや、何も」


 ロキの珍しい反応に、フランツは一瞬何か言おうとしたがすぐに思い直し自分のコンソールに向き直った。

 ロキは、目の前にいるものにこころを奪われている。

 それはどうやらロキにしか見えていないらしいので、幻覚だといえた。

 しかし、ロキはブリッジに降臨した天使の姿をもつそれが、ただの幻覚ではないという確信がある。

 十二枚の翼を持つその天使は、パルシファルそのもだとロキは思った。


「で、君はどう思ってるんだね、ゲニウィス・ロキ」


 天使の姿をしたパルシファルの化身は、こころの中に直接語りかけてくる。


「わたしは君たちに、絶大な力を与えることになる。ある意味、この銀河を破壊できるほどの力だ。君たちは、それを持つことをどう思うんだね」


 ロキは、試されているのだろうかと思う。

 そして、こころの中でパルシファルへ返答する。


「おれたちの為すべきことは、決まっている。そして、そこには銀河を破壊することは含まれない」


 パルシファルは、光り輝く金色の髪に彩られた美貌にそっと笑みを浮かべる。


「まあ、そうなんだろうけれどね。でも、その力を誰が手に入れることになるか、君にも判るまい。ゲニウィス・ロキ」


 ロキは、精悍な顔に太々しい笑みを浮かべる。


「あんたは、恐れているのか? 天より落ちし、輝けるものよ。それとも、おれたちに恐れるべきだというつもりかね」


 天使は古代の彫像のようにバランスがとれ美しい姿で、そっと首を傾げる。


「どうかなあ。まあ、正直恐れているのは僕なんだろうね。あるいはこの宇宙を終わらせるかもしれぬものを、ひとの子に委ねるということに」


 ロキの瞳は夜明けの太陽がごとき輝きをもち、燃えさかる焔を思わせる笑みを浮かべた。


「気にするな、パルシファル。我らはそれが宇宙を滅ぼすことであれ、為すべきことを為すだけだ。あんたが悩むことでは、ない。おれと、おれの子供たちに委ねるがいい」


 天使は、そっと肩を竦める。


「まあ、結局はそうするしかないんだろうな」


 天使はそう言い終えると、爆発するような光に包まれ消えていった。

 ロキは一瞬瞬きをして、天使の消えたブリッジをみる。

 ふと、フランツが怪訝な顔をしてこちらを見ていることにきがつく。


「何笑ってんですか、王陛下」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ