聖愚者の旅立ち 04-04
フライアの全天周型スクリーンは、三つの光を天頂に映し出している。
デコイのバリアは、インドラクラスの主砲直撃に辛うじて耐えたようだ。光は、やがて沈静化していく。バリアの放つ逆位相のエネルギーが、インドラクラスが放ったビームのエネルギーを無効化したためだ。
オペレータが、切迫した声をだす。
「二撃目が、きます!」
再び、輝く花が宇宙に咲くように、デコイのバリアが激しい光を放つ。
その輝きは一撃目よりも凶悪な強さを、持っている。一撃目のダメージからシステムを回復させる前に二撃目を受けたため、逆位相のエネルギー展開が不十分なのだ。
無効化されきれないエネルギーが拡散され、バリアの放つ光が狂乱の宴を繰り広げた。オーロラが破壊され砕かれ、まき散らされたかのようだ。
シュレーゲルはそれを見ながら、少し不機嫌そうなうなり声をあげる。
インドラクラスが放つ主砲の威力は、想定以上だ。
デコイは、次で破壊される。
「三撃目、きます!」
オペレータが、もう一度叫ぶ。
次にまき起こった輝きは、先程と少し違うものであった。破壊されたデコイの放つ、爆炎を含んだものとなる。それは、どす黒い死と落日の赤を含んだ輝きであった。
ただの無人のダミー艦とはいえ、デコイはワルキューレクラスの砲撃に耐えられるバリアを展開していたはずである。インドラクラスは、それをあっさり一斉射で破壊してみせた。
「デコイ三機、全壊です。随伴する砲撃ドローンも、三機とも破壊されました」
シュレーゲルは、頷く。
「各砲撃ドローンの、攻撃を開始。目標、敵インドラクラス」
「砲撃ドローン、攻撃を開始します。目標、敵インドラクラス」
オペレータの復唱が終わると、全天周型スクリーンの天頂付近で光があがる。それは、あまり強力な輝きではなく直撃はしていないものと思われた。それでもそれは、夜空を切り裂く稲妻の鋭さを持つ。
「砲撃ドローン全機斉射を終えました、敵艦への直撃はありません」
「かまわないから、続けてください」
シュレーゲルは、オペレータに攻撃続行を指示する。ドローンの砲撃は、敵にこちらが攻撃する意図がないことを悟らせないためのものだ。ただ、それがどこまで通用するかは怪しいものだとシュレーゲルは、思う。
「一斉射で、こちらのデコイを破壊してくれるとはなあ。デコイは、全部でいくつだったかな?」
ティークの緊張感がない台詞に、シュレーゲル呆れ顔で応える。
「全部で、八機です」
ティークは、眉間に皺をよせた。
「ふむ。五分足らずで三機やられるということは、十五分でドローンは全滅か」
シュレーゲルは、多少辛抱強くティークの相手をする。
「四十五分、我が艦隊が逃げ回ればいい。できますよ。そうすれば、勝てるんでしょう?」
ティークは、頷く。
「王陛下がパルシファルを、一刻もはやく起動してくれるのを祈るばかりだな」
ティークの言葉に被せるように、オペレータが声をあげる。
「敵インドラクラスのエネルギーレベルが、上がっています。次の攻撃が、きます。予想時間は、百秒後」
再び、インドラクラスの砲口が凶悪な光を放ちはじめる。
時折こちらの砲撃ドローンのビームが敵艦に命中し、バリアが極彩色に輝くがインドラクラスの砲口はそれを打ち消すほど強く輝いた。それは不吉を運ぶ、凶星の輝きである。
「敵主砲、発射されます!」
オペレータの叫びと同時に、フライアの全天周型スクリーンが眩い光に覆われた。今度の砲撃も、的確にデコイを直撃している。
シュレーゲルは、少し呻く。
時間稼ぎではあったが、もう少しもってくれなければいけないはずだ。丸裸にされたテラ艦隊が、どれだけもつのか。
シュレーゲルには明るい見通しが、浮かんでこない。




