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地球よ、永遠に  作者: ヒルナギ


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最初の接触 02-18

 ワルターは、呆然としながら動きを止めた敵ヴリトラクラスを見ていた。

 でたらめだと、思う。

 でたらめなのは、あのスレイプニルなのか。

 あるいは、それを操るダーナ・ロキ王女がでたらめなのかもしれない。

 ワルターは、首をふる。

 おそらく両方とも、規格はずれなのだと思う。常識の枠で考えては、いけないということか。


「敵ヴリトラクラスから、入電しました」


 ヴェルザンディの声に、ワルターは頷く。


「回線を、開け」


 全天周スクリーンにウインドウが開き、猛禽のように目つきが鋭く餓狼のように痩せた初老のおとこが映し出される。


「故あって、所属を名乗るのは控えさせてもらう。本艦はラジェンドラ。わたしは、ラジェンドラ艦長クロード・メイヤースだ。我々は、貴艦に降伏を申し出る」


 ワルターは、重々しく頷く。


「わたしは、ソル星系テラ所属の練習艦ブリュンヒルド艦長、ブルーノ・ワルターだ。貴艦の申し出を受諾する」

「感謝する」


 メイヤースは、頭をさげる。

 ワルターは、ため息をつく。本当なら、自分がああするはずであったのだと思う。


「よければ、貴艦のパイロットたちを回収するのを手伝おうか?」


 ワルターは、儀礼的な申し出を行う。

 撃墜されたミリタリーモジュールのパイロットはジェルに包まれ仮死状態になって、フェアリーと共に宇宙空間へ排出される。

 このあと、ラジェンドラはパイロットの回収におわれることとなるはずだ。

 艦の修復処置と平行で行うには、大変な手間になる作業だった。

 メイヤースは、首を振る。


「それには、及ばない。貴艦は、はやくこの宙域を離脱したほうがいい」


 メイヤースは、冷たく光る目をワルターに向けている。


「今は判らないだろうが、君たちは間違いなく後悔することになる。帝国を、信じるべきではない」


 ワルターは、失笑した。


「おいおい、まるでおれが今後悔してないと思ってるかのような言いぐさだな」


 メイヤースは、薄く笑った。


「貴艦の航海が、幸運とともにあらんことを祈る」


 ワルターは、頷くと応えた。


「ああ、貴艦にも幸運があらんことを」


 回線は断たれ、ウインドウが消えた。

 ヴェルザンディが、また報告の声をあげた。


「ケン・ブラックソードの部隊と、ダーナ王女のスレイプニルが帰艦しました。それと、帝国の船が接舷許可を申請しています」


 ワルターは、幾度めになるかもうわかたないため息をつく。

 放蕩息子と疫病神がそろってやってきた、というわけだ。


「帝国の船に、接舷許可を。舷側の接舷ポートを開いてやれ」


 スクリーンに帝国の汎用型巡洋艦が、映し出される。

 可動デッキが接続されていく帝国船のボディは、かなり傷を負っていた。

 幾発かの対スペースミサイルの直撃を受けたようで、エンジンの出力が相当低下しているようにみえる。

 帝国船は間一髪のところで、助かったようだ。

 おそらく外宇宙の航海どころか、ソル系内を航行するのも無理にみえる。

 ワルターは、もう一度ため息をついた。


「帝国船の調査局長に、こちらへ移動するように伝えてくれ。あの船は、ここに捨てていくしかなさそうだ」

「ラジャーです」


 ヴェルザンディはお辞儀をして、操作を行う。

 やがて可動デッキが切り離され、無人となったらしい帝国船は離れてゆく。

 ワルターは、ヴェルザンディに声をかける。


「ブラックソードと姫さま、それに帝国の調査局長を作戦室に集めてくれ」


 ヴェルザンディは、お辞儀をする。


「ラジャーです、ワルター艦長」


 ワルターは、どこかそわそわしているように見えるアグネス・ルンゲ少尉に声をかけた。


「アグネス・ルンゲ少尉、すまないが帝国の調査官を作戦室に案内してくれないか。本来は、姫さまの役なんだろうが」


 アグネスは飛び上がるように立ち上がると、敬礼する。


「ラジャーです、ワルター艦長。もちろんこれを、近衛に対する参謀局の借りだなんて思いませんよ」


(いや、そういうのいいから)というダーナ王女の声が聞こえたような気がして、ワルターは苦笑する。

 そして、自身も作戦室へ向かうため立ち上がった。艦長席から立ち上がった状態で、ワルターはユーリ・ノヴァーリスに声をかける。


「ノヴァーリス航海班長、おれは作戦室へゆく。おまえはここで、テラへの帰還プログラムの準備をはじめろ。ヴェルザンディ、ノヴァーリスをサポートしてくれ」


 ユーリ・ノヴァーリスは作戦室で行われることが気になるようではあったが、敬礼をしてみせる。


「ラジャーです、艦長。帰還プログラムの準備を開始します」

「お任せください、ワルター艦長」


 ヴェルザンディがぺこりとお辞儀を知るのを視界の端で見ながら、ワルターはブリッジをでようとする。

ふと、思い出したようにワルターは振りかえりユーリをみた。


「ユーリ・ノヴァーリス航海班長」

「は、はい」


 ユーリは、緊張した顔でワルターに視線を返す。ワルターは珍しく目に穏やかな光を、宿している。


「おまえは、よくやったよ。初陣としては、上出来だ」


 ユーリは頬を染めると、敬礼をする。

 ワルターは振り向くと、軽く手をあげブリッジを後にした。



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