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地球よ、永遠に  作者: ヒルナギ


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19/97

最初の接触 02-16

 宇宙戦艦同士の戦闘で近接戦までもちこまれた場合、砲撃戦で勝敗が決まることは希である。

 普通は双方が対艦装備を装着したミリタリーモジュールを使い、敵艦を攻撃するからだ。

 しかし、今回はブリュンヒルドもヴリトラクラスも双方が帝国の船を巡る攻防にミリタリーモジュールを投入してるいので、砲撃戦となっている。

 とはいえ投入しているのは対艦装備であり、防御用のファイター装備はブリュンヒルドもヴリトラクラスも温存させていた。

 ヴリトラクラスは温存し待機させていたファイター装備のミリタリーモジュールを、全部出撃させてきたようだ。

 こちらが一機だけだなのだから、大盤振る舞いである。

 前方で、閃光が放たれた。

 ダーナのかまえたシールドに、敵機の撃ったAPHE弾(徹甲榴弾)が命中する。

 シールドの表面でAPHE弾が炸裂し、爆煙と閃光がスレイプニルを覆う。

 機体に衝撃が走るが、シールドが破られることはなく機体は無傷だ。機体が大きいため、着弾の衝撃は案外軽い。スレイプニルの軌道がぶれることも、無かった。

 ダーナは、獰猛な笑みを浮かべる。


「フギン、AEEHE(対電子兵装榴弾)を搭載した対スペースミサイルを二機、発射!」


 黒髪の少女は頷き、スレイプニルのウエポンベイゲートが開き、二機の対スペースミサイルが発射された。

 時限信管が作動しスレイプニルの発したミサイルは連邦のミリタリーモジュールとの中間点で、炸裂する。


「十次元振動、きます!」


 フギンが声をあげると同時に、その姿が消えた。

 同時に網膜投影型ディスプレイの映像も消え去り、ダーナは闇の中にほうりだされる。

 ダーナは、猫科の野獣を思わせる笑みを浮かべたまま、センサーすら死んだ闇の中を慣性駆動システムを使って敵編隊のただ中へと突入した。

 システムが再起動し視界が蘇った瞬間、ダーナは目の間に敵ミリタリーモジュールがいることを知る。

 フギンも、蘇ってきた。

 ダーナは六機の可動式バーニアを使って、強引にスレイプニルの軌道を変える。

 敵機は、ハンドキャノンを撃ってくるが、スレイプニルの動きについてこれるほどシステムが回復していないようだ。


「はい、一機。いただきぃ」


 ダーナは、ミョルニルを振るった。

 ハンマーのバーニアが点火し、ぐんとスレイプニルごと敵機に向かう。

 正面にいる敵機は、慌ててシールドをかまえる。

 スペースハンマーは、バーニアで加速して敵ミリタリーモジュールのシールドに食い込んだ。

 それと同時にハンマーについたビーム砲が発射され、シールドと本体の正面装甲を食い破り敵ミリタリーモジュールを破壊する。

 爆煙と閃光が、あたりを覆う。

 そこへ、敵ミリタリーモジュール二機が突撃をかけてきた。

 スレイプニルは背後からハンドキャノンの攻撃を、くらう。

 ダーナは可変式バーニアを使い、強引にスレイプニルを反転させる。

 ダーナは反転する勢いを利用して、そのままミョルニルを振るった。

 ハンマーのバーニアが、宇宙の闇に死神の鎌がごとき弧を描く。

 ハンマーは敵機に激突するが、ダーナはさらにそのハンマーを振り抜いた。

 強引な操作に、スレイプニルのアクチュエーターが悲鳴をあげる。

 ハンマーに激突した敵機は、自分の僚機に激突した。


「まとめて、ふっとべ!」


 ダーナは、叫びながらビーム砲を発射する。

 ハンマーに装備されたビーム砲が、二機のミリタリーモジュールを粉砕した。

 閃光と爆煙が、スレイプニルを覆う。

 さらに残りの五機が、スレイプニルを包囲するように襲いかかってくる。

 ダーナはシールド内に装備されたグレネードランチャーを使い、四発のAEEグレネードを発射した。

 敵編隊がつくる包囲網の中で、AEEグレネードが爆発する。

 十次元振動が炸裂し、再びダーナは闇の中に放り出された。

 その状態で、強引に慣性駆動システムを動作させると敵編隊の包囲から脱出する。

 網膜投影型ディスプレイに視界が蘇ってきたとき、ヴリトラクラスは目の前に浮かび上がった。

 敵艦の白銀に輝く装甲が、巨壁のように目前へ迫る。

 敵編隊は、背後から追ってくるが六機のバーニアを使うスレイプニルには追いつけない。

 ダーナは、ヴリトラクラスのメインブラストがある艦体後尾へと向かった。

 スレイプニルは、ヴリトラクラスの装甲すれすれを飛行する。

 そして、メインブラスト少し手前で可動式バーニアを前に向けて噴射し、速度を落とす。

 急減速によるGがダーナの身体を押しつぶし、ダーナは目の前が暗くなった。

 その状態でダーナは強引にスレイプニルを操作し、白銀の装甲板上に立ち上がる。

 スレイプニルの全関節が悲鳴をあげ、機体が軋む。

 ダーナは、ミョルニルを高く振りかぶる。


「宇宙の果てまで、ふっとべ!」


 ダーナは叫ぶと、スペースハンマーを振り下ろす。

 宇宙の闇を裂く落雷のように、ハンマーのバーニアが噴射される。

 真っ直ぐハンマーが落ちて、艦体の装甲に食い込んだ。

 衝撃がスレイプニルを揺さぶり、アクチュエーターが軋みながら悲鳴をあげる。

 ダーナは、ハンマーのビーム砲をヴリトラクラスの機関部に向かってはなつ。

 ハンマーの食い込んだ部分の装甲が、地獄の業火を浴びたように輝く。

 船体の奥で、ごおぉっという振動が起きる。

 そしてダーナは、メインブラストの火が消えるの見た。

 船体の心臓部であるリアクターエンジンの制御装置めがけて、電磁パルスを直撃させたのだ。

 ダーナは、自分のしたことながら、結果が恐ろしいと思う。

 フュージョンリアクターエンジンの制御機構はフェイルセーフになっているはずなので、損傷を受けても暴走はしない。

 はず、である。

 ダーナは、ファイター装備のミリタリーモジュールが群がってくるのをみて、慌ててミョルニルを引き抜くと離脱をはじめた。

 六機のバーニアを、全開にして加速する。

 スレイプニルの機体は悲鳴を上げダーナも気が遠くなるが、敵ミリタリーモジュールはファイター装備の機体なのでついてこれない。

 ダーナは、視界下方に遠ざかっていくヴリトラクラスをちらりとみた。

 完全に機能を停止したらしく、砲撃の閃光は消えている。

 敵編隊を振りきったことを確信し、ダーナは加速を止めた。

 ダーナは、獲物を食い終えた肉食獣の笑みを、にんまりと浮かべる。

 それを見た、黒髪のフェアリーは澄ました顔でいう。


「滅茶苦茶ですね」


 ダーナは、思いもよらぬフェアリー・フギンの突っ込みにえっ、となった。


「そ、そうかな」

「機体の装甲が、かなり痛んでます。機関部にも、損傷があり運動機能が三十パーセント低下してます。姫さま、扱いが荒いですよ」

「ま、まあ、支援のない単独の突撃だし」


 フギンの突っ込みは、容赦ない。


「いえ、敵攻撃よりも、強引にミョルニルを振り回したことによる損傷が、大きいですね。これ、きっとサーシャが鬼のように怒りますよ」

「あはは」


 ダーナは、力なく笑う。


「スレイプニルは全ての部品が特別なので、修復に普通のミリタリーモジュール三機造れるくらいの費用がいりますね」


 ダーナの笑顔が、ひきつってくる。


「姫さま、敵艦を沈めたのに何で説教されるんだと、思ったでしょ。そういうところですよ」

「い、いやぁ」

「いいですか、わたしは姫さまのパーソナルデータに基づいて造られた人工人格ですから、この説教臭さは姫さま由来なんですよね」

「もう、やめてぇー」


 ダーナの悲鳴が、スレイプニルの中に響く。



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