最初の接触 02-15
ダーナはギャラリーデッキに飛び込むと、叫ぶ。
「サーシャ、スレイプニルを出すよ!」
赤毛にそばかすの少女が、ハンガーデッキから入ってきた。
「姫さま、準備できてるよ。十秒で、出撃できる」
パワードギアを装着し、二メートル近くの身長となったダーナはにっこりとサーシャに微笑みかける。
「いつもながら、流石ねえ。じゃあ、ひとつぶちかましてくるわ」
ハンガーデッキに向かうダーナの背中に、サーシャが叫ぶ。
「姫さま、スレイプニルを、お願いですから壊さないでくださいよ。あの子、本当に特別なんですから!」
ダーナは少し、苦笑した。
ダーナは密閉型ヘルメットを被り、了解したしるしに手をあげる。
スレイプニルは五メートルの巨体を、すでに磁気カタパルトに乗せられていた。
金色に真紅のストライプが入った装甲に覆われている、実に派手でよく目立つ機体だ。
前面装甲には、心臓に十字架が組み合わさった、王家の紋章が描かれていた。
スレイプニルの背中には五メートルはある、バトルスラスタユニットが装着されている。
そのバトルスラスタユニットは、六機の可動式バーニアを持ちそれを装着することでスレイプニルは八本足のケンタウロスに見えた。
開かれた前面装甲から、ダーナは中に入り込む。
元々、二メートルの身長である国王、ゲニウィス・ロキ用に造られているためダーナが乗り込むにはパワードギアの装着が必要になる。
パワードギアごしにパワードアーマーを操作するのは奇妙な感覚ではあるが、何度も操ったことがあるダーナにとっては手慣れた操作であった。
ダーナは傍らにあるスペースハンマー、ミョルニルを手に取る。
ケン・ブラックソードの操っていたヒートアックスと同じ仕組みであるが、ミョルニルのほうが倍以上に大きい。ハンマー部分は直径一メートル長さ二メートルはあり、装備されたビーム砲もバーニアも桁違いの大きさだ。
ダーナは、ミョルニルを肩に担ぐと空いた手でシールドをとりマニュピレータに装着する。
グレネードランチャーやハンドキャノンの装備された、巨大なシールドをかまえた。
機体内は、既に衝撃吸収用ジェルで満たされている。
ブラストディフレクターが立ち上がり、バトルスラスタユニットのバーニアが発する噴射を受けはじめていた。
「ダーナ・ロキ、いってきまぁーす!」
ダーナの声に応えるように、ゲートが開く。
電磁カタパルトが動作し、強烈な加速でダーナの視界が一瞬暗くなる。
それは一瞬のことで、すぐにスレイプニルは宇宙の戦場にほうりだされた。
連邦のヴリトラクラスは、目視できるところにいる。
宇宙の闇を切り裂き、白銀の装甲を持つ鋼の船が航行していた。
目に見えるサイズ的には、ロングナイフ程度といったところか。
砲撃を連続して行っており、船体のあちこちが光を放つ。
スペースキャノンの砲撃が発する閃光とは別に、船体に火災が発生しているらしい輝きが見えた。
ブリュンヒルドの砲弾が、命中したらしい。
ダーナは、にんまりと笑う。
「アグネス、本気だしたみたいね」
ダーナは、スレイプニルの進路をヴリトラクラスへ向ける。
ミサイルで狙い撃たれないように、AEEP(対電子兵装粒子)で機体を覆う。
ダーナは、視界の片隅に漆黒の翼を持つ小さな黒髪の少女が出現したのをみる。
ダーナのフェアリーである、フギンであった。
「フギン、起動しました。よろしく、姫さま」
フギンはぺこりとおじぎをすると、前方を指さす。
「ヴリトラクラスから、ファイター装備を持つミリタリーモジュールが発艦しました。数は、八機です」
ダーナは、ふふっと笑う。
「さあ、パーティをはじめましょうか」




