第四章:リーベルクーン王宮
リーベルクーン王宮に到着したヒノト達は、警備兵による検門を受けた。だがここでも、ヒノトがジュセノス王だと証明されると、警備兵は簡単にヒノトを中へ通した。
門をくぐると、一人の侍従がヒノト達を出迎えた。
「ようこそおいでくださいました。ジュセノス国王、ヒノト王様。そして家臣の方々。我が国王、リックイ王の元へご案内いたします。どうぞこちらへ…」
案内役の侍従からは少し距離をとって、ヒノト達はその後に続いた。
無事に王宮の中へと入り、ヒノトはほっと息をついていた。
「久しぶりに訪問したジュセノス国王をどう扱うのか、不安もあったが、好意的な対応で良かったな」
だがキベイは不満そうだ。
「しかし…。ジュセノス国王が訪問にきたというのに、大臣一人の出迎えもないとは…。何と我が国を軽んじた態度でしょう」
「そう熱くなるな、キベイ。俺は、この程度の扱いでいいと思っている。ツェキータ王国と親密に付き合うつもりはないからな…。この国にもし重要視されたいというのなら、それなりのことをしなければならない。多額の貢物をしてご機嫌をとるか。もしくは、ツェキータ王国に脅威を感じさせるほどの大国となって、警戒されるか…。そのどちらも、俺は望まない。ツェキータ王国とはこうして、時々やりとりをするだけの関係でいい。ツェキータ王国が、世界の中心で繁栄し続けることを望むのならば、ジュセノス王国は、中心とは離れた場所で、ひっそりと、静かに平和を楽しむ国であればいい」
ヒノトが目指すジュセノス王国の姿を聞いて、キベイは思わずオタジを振り向いていた。オタジはにやにやと笑っている。ヒノトの言葉が、いかにもヒノトらしいものだったからだ。
キベイは恭しく、ガイリに頭を下げた。
「…失礼いたしました。つまらぬことを申しました。どうか、ヒノト様の思うようになさってください。私は全力で、サポートいたします」
キベイの言葉に、ヒノトは嬉しそうに微笑んだ。
ヒノトは視線を宮殿に巡らせた。
「それにしても…。すごい宮殿だなぁ…」
確かに、リーベルクーンの宮殿の造りは素晴らしかった。
王宮の門を抜けると、広大な庭がヒノト達を出迎えた。煌びやかな噴水が配置され、その周りには色とりどりの花が咲き誇り、庭を歩く者の目を楽しませている。歩道の脇には緑の鮮やかな木々が立ち、歩く者に心地良い日陰を作っている。
庭の向こうに見えるのは、リーベルクーン王宮の中央にそびえ立つ塔だ。その高さは、五十メートルはあるだろうか。世界でも有数の高層建築物であることは間違いない。その塔の周りに、幾つもの巨大な建造物がひしめき合っている。それはまさに、巨大な山のようだった。
あの塔のてっぺんに立って、そこから見える景色を眺める人物こそ、ツェキータ王、リックイなのだろう。
人類が造り得る最高峰の建造物の頂上に立って、世界第一の都市を見下ろすのは、どんな気分なのだろう。
ヒノトは、これから会うことになるリックイ王に思いを馳せた。自分よりも年若い王は、世界一の大国、ツェキータの王として、立派にその任務を果たしているという。
ツェキータ国王であるということが、どんなに大変なことか。国内の政務や、諸外国との付き合いをしていればいいだけではない。それ以外にもう一つ、とても重要な役目があることを、ヒノトは知っていた。
ヒノトがユノアをこの国に連れてこようとした理由も、リックイのその重要な役目と関係しているのだが…。
ともかく、ツェキータ王として国を治めているというだけで、リックイが偉大な人物だと分かる。偉大な王と、これから会うのだ。粗相をしないようにしなければと、ヒノトは自分に気合を入れた。