第三章:貞操の危機
ユノア達五人は、必死に走り続けていた。だが、王宮の前には平原が広がっていて、身を隠す場所が見当たらない。
ヒュンっと唸りをあげて、ユノアの後方から赤く輝くものが前方へと落ちていった。
「火矢だ!」
誰かが叫んだ。
ユノアが後ろを振り向くと、追ってくる騎馬から、次々と火矢が射かけられている。平原に何十と突き刺さった火矢は、辺りを明るく照らし出した。
「まずい。俺達の姿が丸見えだ!」
「とにかく走れ!あの森に逃げ込むんだ!」
平原の向こうには、鬱蒼とした森が見える。確かにあそこに逃げ込むことが出来れば、逃げおおせることも可能かもしれないが、あまりに森は遠かった。
その間にも、火矢は途切れることなく襲いかかってくる。
遂に、最悪の事態が起きた。仲間の一人が、矢に打たれたのだ。
叫び声を上げて兵士は倒れた。先頭を走っていたユノアも止まって、倒れた兵士の元へ駆け寄った。
「大丈夫?しっかりして!」
「…いいから。俺のことは放っておいて、早く逃げろ!」
だがもう遅すぎた。止まったユノア達に、あっという間に追手が追い付いてくる。
騎馬がユノア達を取り囲んだ。咄嗟にユノア達は剣を構えたが、次々に到着する追手の数は、数十に及んだ。とても太刀打ちできる数ではない。
ユノアは、馬上からこちらを見下ろしているリャンを睨んだ。リャンは険しい表情で、ユノアを睨み返した。
リャンが馬から降り立った。何も言わずユノアに近づいていった。
ジュセノス兵達がリャンに立ち向かおうとしたが、すぐに護衛兵に取り押さえられてしまった。
仲間の首元に剣が突き付けられるのを横目で見ながら、ユノアは恐怖に顔を引きつらせて、近づいてくるリャンを見上げた。
リャンは無言のまま、ユノアを睨みつけている。ユノアが憎いのか…。それともまだ愛しいのか。それはリャン自身にも分からなかった。
ただ、ユノアを滅茶苦茶にしてやりたい。制御できない感情が、心に吹き荒れていた。
突然、身体を抱えあげられて、ユノアは仰天した。
「離して!離してぇっ!」
リャンの身体を叩いて激しく暴れたが、リャンの身体は揺るがなかった。
冷たい声で、リャンは言い放った。
「…大人しくしろ。仲間がどうなってもいいのか」
ユノアはぴたりと暴れるのを止めた。恐る恐る視線を送った先で、ジュセノス兵達の首元には、いまだ剣が突き付けられたままだ。矢を受けた兵士は、息も絶え絶えの状態だ。
それを見たユノアはもう、リャンから逃れるために暴れることは出来なくなってしまった。
動きを止めたユノアを肩に抱えて、リャンは暗闇の中へと消えていった。
誰の目も届かない場所まで来て、リャンはユノアを草原に放り投げた。
突然放り出されて驚くユノアが身構える隙もなく、リャンはユノアの上に覆いかぶさってくる。
リャンは荒々しく、ユノアの服を引き裂き始めた。ユノアが悲鳴をあげて拒んだが、リャンは力を緩める気配さえなかった。
ユノアは泣きながら叫んだ。
「止めて!嫌ぁぁーー!」
必至にリャンから逃れようとするが、リャンの身体は巨大な岩のように重く、ユノアの上からぴくりとも動かせない。
リャンの手が、ユノアの全身をまさぐる。胸、腹、そして、秘所へと伸びていく。
ユノアは抵抗を止めなかった。このままでは、リャンに犯されてしまう。何度か、リャンに抱かれることを覚悟したこともあったが、やっぱり駄目だ。身体が、心が、リャンを完全に拒絶している。
だが、ユノアの抵抗は、リャンの前では全くの無力だった。
リャンの手は、更にユノアの深部へと入っていく。
抵抗するのに疲れたユノアの身体から、力が抜けおちていった。