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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第六章 覇権国のさらなる発展

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304話 自然に広まる日本

実際、世界の変化は目に見える形で始まった


日本が世界最大の国家として認識され始めてから、その影響は外交だけに留まらなかった。


人々の生活。


学問。


交易。


行政。


それらの基盤そのものが、少しずつ日本を中心に動き始めていた。


最初は一部の学者や外交官だけの変化だった。


しかし、数年も経たないうちに、その波は各国の社会へ静かに広がっていった。


1. SI単位の普及


最も大きな変化の一つが、日本式SI単位の普及だった。


最初に受け入れたのは、すでに研究者たちが日本式単位を採用していた科学を重視する国々である。


オランダ。


フランス。


そして神聖ローマ帝国の諸邦。


各国の市民たちは、日本の持ち込んだ測定体系に驚いた。


長さ。


重さ。


容積。


面積。


それらが統一され、しかも誰が使っても同じ結果になる。


従来のように、都市ごとに尺度が違うこともない。


領主ごとに基準が異なることもない。


学者たちは口々に言った。


「これなら実験結果を共有できる。」


「測量の誤差が大幅に減る。」


「建築や天文学にも利用できる。」


やがて、学問の世界だけでは終わらなかった。


商人たちも変化に気づく。


三国の交易では、既にSI単位が標準となっている。


同じ重さ。


同じ長さ。


同じ容量。


記録も計算も容易になる。


「こちらの方が便利だ。」


「計算違いが減る。」


「契約が明確になる。」


そうして、商人たちも次第に計量を日本式へ変えていった。


港では、新しい秤が使われるようになった。


倉庫では、日本式の単位で帳簿が書かれ始めた。


そして、国家の行政機関もまた、日本式単位の導入を検討するようになっていく。


メートル法は、まるで静かな潮のように、世界へ広がり始めていた。


2. 日本語学校の設立


次に起きた変化は、言葉だった。


各国に設置された日本大使館には、付属施設として「日本語教育課」が設けられた。


当初の目的は、外交官や通訳の育成である。


しかし、予想以上の希望者が集まった。


最初に学び始めたのは、貴族の子弟だった。


日本語を習得すれば、日本との外交に携われる。


最新技術の資料を読める。


将来の出世につながる。


そう考えたのである。


やがて、官僚候補生も集まり始めた。


さらに、学者たちも参加する。


大使館の教室では、毎日のように授業が行われた。


読み。


書き。


会話。


基礎的な漢字。


そして、日本語による専門用語。


若者たちは、真剣な表情で筆を動かしていた。


フランスの若い貴族が、懸命に日本語の文章を書き写している。


スウェーデンの学者が、漢字で実験記録を残している。


神聖ローマ帝国の官僚候補生が、日本語による会話練習を行っている。


数年前には、誰一人想像できなかった光景だった。


3. 日本語で書かれた教科書が輸入される


教育の広がりとともに、本の需要も急増した。


各国の大使館には、日本から次々と書籍が届けられる。


数学。


測量。


建築。


化学。


基礎的な科学技術をまとめた教科書である。


内容は、日本語と現地語を併記する形式になっていた。


左側に日本語。


右側に現地語。


専門用語も、すべて二つの言語で書かれている。


そのため、学習者たちは自然に日本語へ慣れていった。


学者たちは競うように本を求めた。


官僚たちも購入する。


裕福な商人は、子供の教育のために買い求めた。


日本語の本を持っていること自体が、一種の教養の象徴になり始めていた。


「この本は日本から届いた。」


「日本で使われている教科書らしい。」


「最新の測量法が書かれている。」


そんな会話が、欧州各地の学問所で交わされるようになった。


大使館は世界の日本化の中心となった


こうして、新しく建てられた日本大使館は、単なる外交機関ではなくなっていく。


そこは、世界中の若い官僚や学者にとって、憧れの場所となっていた。


大使館には、毎日のように人が訪れる。


日本語を学びたい。


日本の本を読みたい。


最新の技術を知りたい。


その熱気は、年々強くなっていった。


いつしか、各国にはある空気が生まれる。


「日本語を話せると出世しやすい。」


「日本式単位が使えないと交易ができない。」


「日本で学んだ科学技術は権威がある。」


誰かが命令したわけではない。


しかし、皆が自然とそう考えるようになっていく。


大使館は、知識と技術の窓口になっていた。


そして同時に、日本の文化や制度が広がる中心地にもなっていた。


武力で支配するのではない。


言語。


尺度。


技術。


それらを通じて、世界が少しずつ共通の基盤を持ち始める。


明賢が思い描いていた戦略は、静かに、しかし確実に実を結び始めていた。


世界に広がる「日本語ブーム」


スペインとの戦争が終結し、日本が世界最強の座を明確に示した瞬間から、世界の空気そのものが変わった。


日本の技術。


日本の軍事力。


日本の規律。


そして、圧倒的な科学水準。


それらすべてが、欧州、中東、アジア諸国の貴族、官僚、学者の心を強く惹きつけていた。


人々は気づき始める。


「日本語が話せれば、外交に参加できる。」


「日本語の科学書が読めれば、最新技術を学べる。」


「日本語で書かれた測量法を使えば、土地測量が正確になる。」


「日本語を理解できれば、日本と直接交渉できる。」


それは、単なる流行ではなかった。


明確な利益がある。


知識がある。


出世の道がある。


だからこそ、各国の若者たちは競うように日本語を学び始めた。


そして、世界には次第に一つの風潮が生まれていく。


日本語を学ばない者は、時代に取り残される。


その認識は、まだ静かなものだった。


しかし確実に、世界の価値観を変え始めていたのである。

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