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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第三章 外部拡張主義

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205/220

205話 自ら考えるもの

電脈の守人たち — 行政・軍用コンピュータ群の誕生


晶鋼殿区の工場で集積回路が次々に生まれる一方、明賢は新たな命令を下した。

「我らの国家機構と軍を結ぶ頭脳を自前で作れ」


それは単なる装置の生産命令ではなく、国家の記憶と意思を守るための誓いであった。


その言葉が発せられた日から、工廠の空気はわずかに変わった。


これまで作られてきたのは、電気を流す装置、情報を運ぶ装置、すなわち神経であった。


だがこれから作られるのは、判断し、記録し、命令を下すもの。

頭脳そのものだった。


1. 概要 — 何を、なぜ作るのか


日本は次のものを独自開発・配備する。

それぞれは独立しているようでいて、一体となって国家の意思を形成する。


•行政・軍用ワークステーション(以降「端末」)

各省庁・軍司令部に配備される専用機。

民間には一切流通せず、閉じた体系の中でのみ動作する。

•部局別サーバ群

内務、国防、財務、通信、厚生

それぞれの部局ごとに、独立した記憶領域を持つ。

•中央統合データセンター

国家の全記録が収束する場所。

過去を保存し、現在を解析し、未来を予測する中枢。

•管理ネットワーク

光ファイバーの上に築かれた、見えない層の網。

情報は分類され、許可された経路でのみ流れる。


目的は明確だった。


速さ。

秘匿。

そして、壊れないこと。


国家がどれほど巨大であろうと、命令が届かなければ意味はない。


どれほど精密であろうと、情報が漏れれば意味はない。


どれほど進歩しても、一度の破壊で全てが消えるなら意味はない。


だからこそ、彼らは「壊れない頭脳」を作ろうとした。


2. 端末の姿 — ハードとソフトの約束


夜の工廠。

灯りの下で、技師が静かに木箱を閉じる。


その中に収められているのは、一台の端末だった。


外装は無骨で、飾り気がない。

だがそのすべてが意味を持っている。


防塵。防湿。耐振動。

艦橋でも、砂漠でも、山中でも動くための設計。


モニターは光を反射せず、どんな環境でも視認できるよう調整されていた。


電源を入れると、わずかな音とともに画面が立ち上がる。


そこには、装飾も無駄もない表示。


ただ、必要な情報だけが整然と並んでいる。


•CPU:国産プロセッサ

•メモリ:4MB

•ストレージ:40GB(完全暗号化)

•通信:有線


だが、その本質は数値にはなかった。


すべてが「制御されている」こと。


起動には認証が必要。

許可されないコードは実行されない。

記録はすべて残り、改変は検出される。


それは機械でありながら、規律を持っていた。


工場では、端末が完成するたびに最後の工程が行われる。


署名。


それは単なる印ではない。

その機体が国家に属することを示す証。


この工程を経た端末だけが、ネットワークに接続される資格を持つ。


それ以外は、ただの箱に過ぎない。


3. サーバ群とデータ運用 — 分離・再現・復旧


端末が手ならば、サーバは記憶である。


各部局に設けられたサーバ群は、それぞれが独立した領域を持っていた。


内務の記録は内務へ。

軍の情報は軍へ。

財務の数値は財務へ。


交わることはない。

許可されない限り、決して。


だが同時に、それらは完全に孤立しているわけではなかった。


必要な時、必要な形で、情報は橋を渡る。


その橋は厳重に管理され、通過するすべてが記録される。


誰が、いつ、何に触れたのか。


すべてが残る。


さらに、その記憶は一箇所には置かれない。


同じデータが、複数の地へと送られる。


遠く離れた施設。

異なる電源。

異なる土地。


どこか一つが失われても、他が残るように。


技師たちはそれを「多重の記憶」と呼んだ。


中央統合データセンター。


そこは、静寂の中にあった。


無数の装置が並び、わずかな振動と低い音を立てている。


光が走り、データが流れ、記録が積み重なる。


ここには、国家のすべてがある。


命令。履歴。計画。失敗。成功。


それらが消えることは許されない。


だからこそ、さらにその外にも、同じものが存在する。


もう一つ。さらにもう一つ。


どこかで火が起きても。

どこかで破壊が起きても。


記憶は残る。


「データは国家の記憶。

二つ、三つ、四つの場所に複写してこそ守れる。

けれど鍵はひとつにまとめてはならない」


その言葉は、すべての工廠、すべての技師に共有された。


こうして、日本はついに考え続ける国家を手に入れた。


光が神経となり、電波が感覚となり、そしてこのコンピュータ群が思考となる。


電脈は完成しつつあった。


その中心で、静かに動き続けるもの。


それこそが、電子の守人たちであった。

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