第72話 異世界人への意趣返し
翌日、変態から手ほどきを受けたらしいジルベルトは一度、竜王国へと帰る事にしたらしい。
「急にすまないね。
あと、その生暖かい眼をやめてくれないかな?」
「いや、そういうことになったのかなって」
「なるわけ無いだろう……相手は神様だよ?」
性別が問題なわけではないことに若干衝撃を受けた。
ま、まぁ性癖は人それぞれだよね。
「色々ね、あのバカ夫婦に確認したいことが出来たんだ。
でも、ガイドボイスについては僕も気になるからすぐこっちに戻ってくるよ。
そうだ、何か欲しいものはないかい?
お世話になったし、お礼の意味を込めて送らせてもらうよ♪」
ちょっと考えて、塩や植物油、香油、精油、さらには苗木に手芸用の道具など、思うがままに羅列してみた。
「……ホント、こういうときの異世界人って遠慮しないよね」
「というよりあれですね。
竜王国に何があるのか分からないもので」
「あぁ、そういうことか。
なるほど……そうだね、今言ったものは大抵あるし用意も出来るよ。
ただ、香油と精油は難しいかも」
「やっぱり高いんですか?」
「そうだね。
異世界人が作った村からの輸入に頼ってる状態だから高いんだよ」
何でも高品質なものを周辺諸国に安定供給しているらしい。
自分達でも作ればいいのでは、と尋ねてみたら、
「やり方がわからないんだよね。
魔法じゃどうもうまくいかなくて」
どうやら器具を作って使うという発想がないらしい。
「見ます?」
「え?」
俺は答えを待たずに精油の精製法を賢者の杖で呼び出した。
お馴染みの水蒸気蒸留法と圧搾法だ。
ついでに品質に影響を与えると考えられている、収穫方法と適性温度、蒸留時間等々……結構色んな情報が出てきた。
「ちょッ!?」
いきなり情報を出されたジルベルトは急いで羊皮紙を取り出すと、その情報のメモを取り始める。
ちょうどいいので俺も羊皮紙を貰い、再度欲しいものを重要度別に書き出すことにする。
ジルベルトが、うめいているような気がするけど気にしないことにしよう。
「ヴェルさんは何か欲しいものある?」
綺麗に梳かされた髪をずっと弄っているヴェルさんは少し考えると首を横に振った。
「特にはないな、農業というのが良く分からなかったくらいか……」
「うーん……櫛とか毛並みを良くするヘアパックとかは?」
「櫛はスズキがくれたであろう?
ま、まさか、返せというのではあるまいなっ?!」
「いやいや、そんなことは無いけど。
もっと目の細かい奴や同じ奴でも国で買ったものの方が可愛いだろうし品質も良いだろうムギュッ」
そこまでいうとヴェルさんに掌で顔をサンドされた。
「あまり自分を卑下するな、スズキ。
これは我輩の宝物、貴様でもそれを馬鹿にするのは許さんぞ?」
「あ、あぃ……ぶびまべん」
「分かれば良い。
しかし毛並みを良くするヘアパックなるものは気になるな。
そんなものがあるのか?」
「ふぅ……俺の世界でも昔からあったから、この世界でもあるかなって。
主に髪の保湿や艶を保つためのものなんだ。
無くても材料さえあれば自然素材で代替品を手作り出来るとおもうよ」
あ、さらに記憶の紐付けで思い出してきたぞ。
「あと、毛並みは肌環境に左右されるはずだから魚や鶏も頼もう。
亜麻仁油に菜種油も良かったはずだよ」
「ぬっ……そんなに我輩の毛並みは悪いのか……?」
「まさかっ!」
そんなことあるはずがない!
今でもツヤッツヤでさわり心地抜群なヴェルさんの毛並みが悪い訳がない!
しかし……だがしかし!
「今でも極上の毛並みなのに、ケアしたらどれくらい綺麗になるんだろうと思わずにはいられないんです!」
俺の態度にちょっと引き気味のヴェルさんだったが、顎に手を当てて考え出した。
「なるほど……なるほど良いかもしれんな」
今一瞬、ヘニャってレア顔をしたヴェルさんを心に深く刻みつつ、思い付く限りの物を羊皮紙に書き込んだ。
ジルベルトに見せたら、かなり葛藤していたけど納得してくれたようだ。
……ごめん。
「いやいや、良く考えたらこれを使えばあいつらに意趣返しできるね。
むしろ良く注文してくれたよ!
フフフ、待っていろお義兄様~っ!」
と、多少テンション高めに颯爽と帰っていった。
なんか変な事になったような……気にしない事にしよう、うんそうしよう。
本日、この小説をネット小説大賞に応募するためにタグを少々いじりました。
(とはいえ、ギャグタグと交換しただけですが)
あと誤字報告という項目もあったので受付を○にしておきました。
出来るだけ気を付けてはおりますが、誤字等ありましたらお気軽にご指摘いただければ幸いです。
(∩ˊ꒳ˋ∩)・*




