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第35話 死の危険を感じるとテンションがおかしくなる男、サトウスズキ

思い返してみればこの砂浜、変なところは色々あった。


浅瀬に魚が殆どいない。

ここは見る限りなだらかな海岸線。

適度な岩場も見えて海へ出るのも簡単そうなこの立地で小舟ひとつ見かけない。

むしろ海岸動物や鳥すら見かけない。


なるほどである。

この蟹達が全て食っていたのだ。

まさにこの世は弱肉強食。

弱ければ食われ、強ければ生き残る。

正しく食物連鎖。


そして今、食物連鎖の頂点に、


「大漁、大漁!」


ヴェルさんがサクッと立っていた。


ヴェルさんは凄かった。

魔法で粉砕、殴って玉砕、揺れるおっぱいに俺大喝采。


……うん、まだテンションがおかしな俺。


とりあえず、彼女の戦う姿を見て、また俺の中でヴェルさんへの依存度がひとつ上がりましたよ。

もう気にしても仕方がないんじゃないかなぁこれ。


あと俺の膀胱よ、よく持ってくれた。

心の中で鉄の膀胱の栄誉勲章を送っておこう。


とにかく折角の獲物。

初めは貝殻を鍋代わりにと考えていた俺だったがこの大きさの蟹の甲羅、利用しない手はない。

海の幸よありがとう。


俺は数十ある蟹の死骸の中から胴体が比較的無事なものを探してヴェルさんを呼んだ。


「む、スズキこいつまだ息があるぞ」


拳を振り上げるヴェルさんを慌てて制止する。


「背中の甲羅がちょうど良いからそこを割らずにおなしゃス!」


なるほどと頷いたヴェルさんが蟹をサクッと絞める。

憐れ、蟹の化け物は死んでしまった。


まぁ、残念ながら屠殺は出来ずとも魚は捌ける私、佐藤須々岐に思うところはない。


さて、と蟹の臀部(?)あたりにナイフを入れる。やはりというか固い外骨格じゃなければ刃物は通るようだ。

とはいえ固くて切りにくくはあるので慎重にナイフを動かしながらヴェルさんに解説する。


「さっき言った通り蟹は旨いんだけど

、生で食べるのはなるべく避けた方がいいんだ」


「むっ、生では食えんのか?」


「絶対だめってわけじゃないけど、寄生虫というのがいる場合が多くてね……それが身体に入ると大変なことになる」


「……た、たいへんなこと?」


「最悪な話をすると、寄生虫の種類によっては頭の中が食われたりする」


「ひぇっ」


ヴェルさんから短い悲鳴があがる。

おや?


「いやまだ食べてないのにそんなに怖がらなくても……あっ」


思い出す。

そうでした、ヴェルさんは味見がてら前に食べてましたね。


「ス、スズキィ……」


これは……やってしまいましたな。


「心配しなくても少しくらいなら直ちに影響はないよ。食べたの結構前でしょ?」


「そ、そうなのか?確かに100年以上は前だと思うが……」


「なら大丈夫。それに」


「それに?」


ジビエにも寄生虫はいるから……とは言わない。

今回みたいに無駄に怖がらせても仕方ないし。

というか良く考えてみれば、生でずっと食べてきたんならヴェルさんは大丈夫なのではなかろうか?


「気になるようだったら癒しの権兵衛さんにお願いしてみよう」


「そ、そうだな!」


ヴェルさんが豪快に笑う。

口は災いの元。

不用意な発言は今度から控えようと心に誓った。

海岸に来て嚢虫症の話をするアホウ(サトウスズキ)。


大半の寄生虫は熱、凍結に弱いので、生で食べなければさほど気にする必要も無かったりはしますが、

調べている最中、現実世界は本当に安心安全なんだなって思いました(小並感)。


刺身や寿司などで使われている魚は寄生虫の可能性が少ないものを選りすぐって残ったメニューとのことで、先人の蓄積された知識や知恵にも脱帽してしまいます。

( ꒪⌓꒪)

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