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よんじゅう 『おかね』と『かみ』

 『なぁ、ダンナ。あんたはとっても残酷で、とっても冷徹で…とってもかわいそうな人だね。


 あんたの話に乗ったのは自分だけどさ。


 時々思う。



 あんたはもっと違う生き方ができたんじゃないか?』



『守銭奴』がゲームの中で誰かに言ったセリフだ。正直、場所も誰に向かってそんなことを言ったのかも分からない。だけど、あれはたしか、セカンドの途中だったと思う。フィアレインに向けてだったのか、他の誰かに向けてだったのか、分からないけれど、『守銭奴』にとって、その人は、金ももらっていないのに別の生き方を勧める価値のある人だったということだ。


 金のために生きて、金の亡者としか言えない『守銭奴』は金を貰わない限り、誰かに助言なんかしない。誰かに同情もしない。誰かに心を見せることさえ皆無だ。


 そんな『守銭奴』が心底、残念そうな声音で自分の心の内を語る。


 正直、世界の終わりかと思う程度には衝撃的な事件だ。


 (え?今の『守銭奴』?!!と思いましたよ!その時はね)


 『守銭奴』のことを説明するなら、表は陽気で人情味のある商売人、裏を見れば冷酷非情な殺人鬼。


 表は、ほぼ善意の人だ。優しい笑顔と人当りのいい性格。ちょっとせこいところはあるが、それを許されるキャラを出している。


 (言うなれば、大阪の商人的なノリのキャラ)


 一方の裏は、黒も黒の、真っ黒くろだ。金のために生きて金のためにどんなに人間を殺しても何とも思わない。むしろ、どんなに親しくなった人間でも、金さえ積めば平気で殺す。金のためなら普段の100%以上の力を発揮できる。


 人間を裏切ることも、例え家族であろうと、金のためなら殺すことさえ笑顔でする。


 まごうことなき異常者。


 

 それが、『守銭奴』。


 ファーストの犯人の一人であり、もう一人の犯人『狂信者』と、ルートによって、どちらかがフィアレインに切り捨てられる。



 (『守銭奴』は、確かに異常者だよね。あの独特な思想は、ドン引きしたよ!『狂信者』よりはまマシだけど)


 ちなみに『狂信者』はかつてフィアレインが夢でいろいろ見せてくれちゃったときの人物だ。はっきり言って、こちらは会うのを躊躇うほどの人物だ。異常?そんな言葉では生温いほどの『狂った聖者』。フィアレインを神と崇め、神の言うことに間違いはない。神が白と言えば黒いものも白くなる。フィアレインが恐らくは、『殺人』と『解剖』を正道と説き、それを教義と信じて疑わない。


 (名前も知らない『神』をなんであんなに信仰できるんだ…。


 もっと言うと、2人以外の犯人もいることはいるんだよね)


 その中に『鏡面者』がいる。


 だけど、彼ら・・はファーストでは捕まらない犯人。


 (『研究者』だけはセカンドで捕まる犯人の1人だけど)


 正体が分かっているのは、ファーストで捕まる『守銭奴』と『狂信者』、それにセカンドで犯人候補にプラスされる『研究者』だけだ。他の人は正体不明の人物だった。


 ちなみに『鏡面者』にファーストでの出番はない。『鏡面者』がシャルドなのはわかったが、他の人物の正体は、フィアレインから見ても、今の段階では誰なのかまでは予測ができない。


 もしかしたら、という候補はいるが、あくまでゲームでのキャラしか分からないため、現実に誰がフィアレイン側に来るのか不明だ。


 (と言うか…。フィアレイン的性格だと、ファーストで切り捨てた『守銭奴』や『狂信者』を助けるはずはないんだけど…。


 なぜ、ファーストで捕まったはずの人間がセカンドでも犯人役で出てくるんだか。


 逃げたのか?!逃げたんだろうなぁ)


 『狂信者』はともかく、『守銭奴』は根っからの商売人なのに。信用が第一の商売人たる彼が、一度逃げ出した後に何故またフィアレインの元に戻ってるの?!


 『守銭奴』がフィアレインの味方でいる理由は、金だろう。それ以外の理由はない。


 『守銭奴』が名前を暴露した時、彼にもフィアレインにも『フィアレイン・レグド・ガーナード』は絶対的に捕まらない自信があった。


 そして、セカンドが続く理由が、それだ。


 ファーストで名が暴露されてもなお、フィアレインは次の連続殺人を犯している。それはつまり、ファーストで捕まっていないということだ。


 フィアレインにとって、名前を出されようが、姿をさらされようが、どうでもいいことだから。


 つかまるはずがない。


 だって…フィアレインは、その時すでに…。



 (となると、フィアレインが『死ぬ』のは…恐らく、ここ。今だ)






 ちらりと後ろを歩くシャルドを見やる。


 シャルドは眠そうに眼をこすりながら歩いている。


 地下に戻ったら、さっさと部屋から追い出して寝させよう。深夜までこんな子どもに働かせるなんて!労働基準監督署も真っ青の違反っぷりだ。まぁ、労働基準が存在する世界に絶対王政はないと思う。いや、逆か。絶対王政がある世界に労働基準はないと思う。


 (我ながら、フィアレインにしては優しく取り扱っていると思うよ!こんなに気を使うなんて!悪魔のようなフィアレインじゃあ、ありえなぃ…)


 …いや、止めておこう。余計なことを考えると、また嫌な夢を見そうだ。と言うか、確実に悪夢を小出しにされる!なんせ、悪魔だからね!


 (はっ!すいません!!謝ります!謝るから、悪夢を小出しにしないでください!!)


 え?小出しじゃなければいいのかって?


 …聞くまでもなく、止めてください。お願いします。


 


 ま、まぁ、地下に来たあの人物。アレが釣れるまでは、シャルドにはいい餌になってもらおう。


 アレが釣れたら、自動的に『守銭奴』に会うことになるだろう。…となると、非常に!非常に気が進まなすぎるけど、『狂信者』にも会うことになる。


 (あの2人!あの2人が意外にも仲が悪くないなんて…)


 ゲーム内では、あの2人には接点なんかなかった。だけど、現実で、あの2人の性格を知ってしまっていると、多分、仲は悪くないと思うし、今はどうか知らないけどゲーム時点での接点はあるだろう。


 信仰する対象が違うだけで、あの2人はとても似すぎている。


 『お金』と『神』。


 たったそれだけの違いしかない。

 

 (あぁ、嫌だ。…変態と話が合わない人間に会うこと程憂鬱なことはないよ)


 どっちがどっちとは言わん!!



 あんな人間に会うのに…フィアレインは楽しそうにしている所を見ると…。


 

 はぁ。



 (フィアレイン…心広すぎる…)


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