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にじゅうろく こあい!こあいよ―――!

 すぐそこに敵わない敵がいるかもしれない恐怖。


 これは思ったよりも精神的にくる。フィアレインのおかげで割と冷静だったけれど、じんわりと嫌な感じはしていた。なんというか、生理的に受け付けない何かを相手にしているような…。


 それに、敵は何をしに、わざわざ扉越しとは言え接触してきたのだろう?


 (なに?!わざわざ、きっとくる~!状態を演出してくれちゃったわけ?!)


 いつもの相手とは違う。


 毒を仕込んだり、外に出た瞬間に襲ってくるような短絡的な相手とは…。

 嫌な感じがする。何を狙ってのことなのか、読めなさ過ぎて。扉を睨みつけたまま動くこともできない。


 そんな恐怖の只中にいた私を更なる恐怖と戦慄の中にたたき落としてくれたのが、この従者だ。


 正直、扉をめちゃくちゃに叩かれた瞬間、物理的に飛び上がった。


 動くこともできなかった私の心臓はその瞬間に止まるかと思った。あっという間に補正が働いて、冷静な思考に戻されたけど!戦闘準備とばかりに親指と中指をこすり合わせ摩擦熱から、火を起こそうとしたとき!


「フィアレインさま!」


 扉の向こうからシャルドの声が聞こえた時、がくっと力が抜けた。そして、安堵と怒りがふつふつと沸いてきた。


 (お前!!私を殺す気か――――!!)


 と怒りのまま扉を開けたところ…。




 うん、まぁ、一気に上がったボルテージは瞬間冷却された。



 (フィアレインが…フィアレインがいつも以上に、冷めていた!!)



 絶対凍土。氷点下。まるで、潰しちゃった虫を見るような心境だった。そして、ゲームのシャルドの設定を思い出すという現実逃避をしていた。



 (こあい!こあいよ―――!う~。ぶるぶる!)



 心の中が、マイナス零度以下になるのは、想像以上に怖いことです。





 部屋の中に入れて、私はソファに座り、シャルドは立ったままにさせる。


「…で?扉を阿呆みたいに叩きまくった言い訳はなんだ?」



 おぅふ!言葉が冷たすぎる!!ついでに土下座に至った理由もな!



「俺…教会に行ったんだ」


「何をしに?」


「それ…は」


 おや?フィアレインのきっつい言葉にも地獄の大魔王のような目つきにも動じなくなったな。


 そんな事も気にならないほどに気にしていることがあると言うことか。


 (……あ、いや。大魔王じゃないってば!そんな風によばないで!)





 で、結局、しどろもどろに言い訳を開始してくれたわけだが…。


 話があっちこっちに飛んで、要領を得ない。


 (でも、フィアレインはイライラしてない。心が狭いのか、広いのか分からないやつだな!)


 結局、要約すると…。


 メイドのこと。私が言っていた通りだったのでショックを受けたと。リレイも信じられるのか分からなくなったと。そこで、『姫』の導きを得たくて、教会に行ってきたと。その教会で金髪のかわいい子に会ったと。その子に貴族の名前について聞かされたと。それを聞いて、名前を呼びまくって私を傷つけたと思ったと。


 そこからの土下座。


 なんつう短絡的、単純な。こいつ、大丈夫か?とか思わず、頭を抱えそうになったよ。


 (ちょっと考えれば分かるじゃん?!私、名前呼ばれて、そんなに苛立ったことなかったよね?!)


 父上が付けた名前を恥じていると思っているのか。


 目の前で恐縮しっぱなしの従者を見て、呆れるよりも、おもしろいと思ってしまう。


 思わず、口角が上がってしまう。


 単純。だからこそ使い道もあると言うことか。どんな形でもいい。こいつを確実に駒にするには…。




 そうだな。ちょうど、使い道のありそうなものが、さっき挨拶に来てくれたじゃないか。




 







 (あいつはのいい道具になりそうだ)










 しかし、金髪のかわいい女の子か…。


 まさか、ストーカー女?いや、金髪なんてその辺りにはいて捨てるほどいるか。かわいいコだって、たぶんその辺りにごろごろいるだろう?だってここは乙女ゲームの世界なんだから!!シャルドが言う、見たことないくらいかわいい女の子だって…。確かに、ストーカー女は喋らなければ美少jy…。いやいや!きっとごろごろいるって!!


 だけど、私のためになると言うような女の子が他にいるとも思えないんですけど――――!


 (ききき気のせいだ。そうに違いない)


 まさか、北に旅立っているはずのストーカー女がまだここにいるだなんて、あるはずがない!!



「あ!」


 思考の中にいた私はその声に引き戻された。


「あの…これをリレイさまから預かっていました」


 シャルドが懐から封書を出して、私に差し出す。一目で高級品だと分かる。薄い紫に染められた紙。


 (…嫌な予感しかしない!この高級感とこの色!!)


 嫌な予感を気のせいだと思い込んで手紙を受け取る。その手紙の封蝋を見た瞬間に……思わず固まった。





 



 

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