じゅういち はわぁぁぁぁ! ~リューナ~
「はわぁぁぁぁぁ!!!なんっっっって、キレイなのかしらぁぁぁ!」
今日もキレイなの!美しいの!!
「完璧に芸術!!神さまが嫉妬してしまうくらい!!」
今日はお風呂に入られる日なのね!さっき、綺麗に掃除しておいてよかった~!!
地下の扉が開いたと思ったから、慌てて隠れたけど、見つかったかしら??
あぁ!それにしても!!あいかわらず、綺麗なお顔!!
出会ったころから、とびっきり美しい方!
初めて、運命的な出会いをした日のことを今でも鮮明に思い出せる。あれは絶対、運命なの!!出会うべくして出会った運命!!
私、リューナ・アブヒラドールが、あの方に出会ったのは、2年前のこと。私はその時、8歳でした。あの方と同い年っていうのも、運命よね?!
私は2年前、首都の近くにあるということで、この街に引っ越してきたの。私は、色々あって、よく誘拐されそうになったり、命まで狙われそうになったりするのよね。だから、私は考えに考えて、いい方法を見つけたの!!
それは、「隠れること」。言っておくけれど、ただ隠れるんじゃないの。見つからないように、自分の気配?存在?みたいなものを、希薄にするの!これが結構、難しかったんだけど、かなり上手になったのよ!
同じ部屋にいるのに、誰も気付かないくらいには!!普段はそんなことしないから、すぐに見つかっちゃうんだけど、危ないかな?て思ったら、すぐに、うす~くうす~くなるの。そうしたら、ほとんどの人は気付かない!
でも、プロの暗殺者みたいな人は、気配に敏感だし、殺気?みたいな怖い空気だから、私の気配がうまく消せないのよね。
あの日は、街を歩いていたら、そんな殺し屋みたいな人に見つかってしまって、路地裏でクビにナイフを突きつけられていたの。敵って思われたのかしら?
そこにあの方が、現れたの!!
「…おい!そこをどけろ」
殺し屋が声のした方に目線だけを向ける。逃げるチャンスなんてない。首のナイフはぴったりとくっついたままだし、動けばすぐに切られるって思うから動けない!私は殺し屋の方を向いたまま、その声の持ち主を見ることもできない。
「…命が惜しくば去れ」
殺し屋はぽつりと呟くように言う。
「いいから、どけろと言っている」
「…お前には関係ない」
殺し屋がそう言った瞬間、周りの気温が下がった気がしたわ。
ぞくぅぅぅ!!
なに?なに?!
殺し屋が思わず、反射的に私の首にあてていたナイフを声の方向に投擲するくらいに、寒気がしたわ。目の前の殺し屋が放っていた殺気なんて、子犬の威嚇みたいに思えるくらいの殺気。
今思い出しても、ぞくぞくしちゃう!!
隙だらけになった殺し屋の右腕を掴んで、右わきに身体を滑り込ませる。おっと!足を引っかけるのを忘れるところだったわ!ぐっと屈みこんで、背中から投げ飛ばす。これ、東の国の体術の技で、「セオイナゲ」って言うらしいわ。私に技を教えてくれた人が、大の東の国好きで…ってこんな話どうでもいいわね。
とにかく、そんな技をかけたら、殺し屋は足からごきって音をさせて、伸びちゃった。
あら、「ウケミ」も取れないのね。
「…おい」
改めて、声の方を見ると、私と同じくらいの子どもが立っていたの。でも、顔がほとんど隠れるようなフード付きのローブをまとっていたから、顔はよく見えないんだけど…。
背は私よりも低くて、声もキレイな鈴の音のよう…。女の子?
そう思っていたら…。
「終わったのなら、そのゴミを持ってどこかに失せろ!そこは私の家だ」
指をさしたのは、私と伸びた男がいる真ん前の家。
あら?人様の家の前で、こんな戯れをしていたのね。失敗失敗。
「ごめんなさい!今、去ります」
ずりずりと伸びた男を引きずって歩く。足を持って引っ張っているから、どご!ごん!ごきょ!と変な音がするけれど、あまり気にしないわ。
さっきの殺気はこの子かな?そんなわけないか…。どうかんがえても、あんな仄暗く陰湿な殺気は子どもが出すものじゃないよね。そう思って、しばらく行って、振り返るとあの子がフードを取るところだった。
「はわぁぁぁぁ!今思い出しても、初めてお顔を見た、あの衝撃は忘れられません!!」
思わず、もだえてしまう!
あの日、初めて会った日から、私はこの方のことを調べまくった!
名前も身分もお年も全部調べた!
あの方は寛容だから、私にこの家の合鍵を作らせてくれた!
毎日、通うことを許してくれた!!
しかも、週に一度、私にいつも贈り物をくれる!
お家に上がって、お部屋を掃除したら怒られちゃったけど、お風呂とキッチンとトイレは掃除することを許してくれた!
あぁ!なんっっっって優しい方なのかしら!!
まだあの日から一度も会話をしたことはないけれど、私はとっても幸せだわ!!
だって、あの方を愛しているんですもの!!全ては、愛のなせる業よね!!
そう言えば…。
今、お風呂なのよね…??………ごくり。
「…ちょっとくらい…お風呂覗いてもいいかしら?」




