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孤独死したおっさん、高校時代へタイムスリップ  作者: 雪だるま
橘彩音ルート

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35 拗ねる相沢真里

 冬。


 放課後。


 チャイム。


「終わったぁ〜〜〜」


「寒っ!」


「早く帰ろ!」


 教室が一気に騒がしくなる。


「…………」


 その中で。


 相沢真里は机に頬杖をついていた。


「…………」


 不機嫌。


 かなり不機嫌。


「真里?」


 女子が首を傾げる。


「どうしたの?」


「別に」


 だが。


 完全にわかりやすい。


「…………」


 最近。


 橘彩音が。


 彼氏の田中レイと帰ることが増えた。


 つまり。


 真里と帰る回数が減った。


「…………」


 寂しい。


 だが。


 それを認めるのも癪。


「のだっ♡」


 その時。


 教室後方。


 レイの声。


「彩音!帰るのだぁ♡」


「ちょっと待って」


「のだっ♡」


 最近のレイ。


 完全に彼氏。


 距離感が自然すぎる。


「…………」


 真里はじっと見ていた。


「…………」


 彩音が普通に笑っている。


 前までなら。


「ちょっと距離近い!」


 とか言っていたのに。


 最近はもう慣れている。


「…………」


 真里、さらに不機嫌。


「相沢、顔怖い」


「怖くない」


「絶対怖い」


 だが。


 その時。


 彩音が真里の方を見た。


「真里」


「何」


「今日、一緒に帰る?」


「…………」


 真里、停止。


「…………」


「…………」


「え」


「レイ、今日原稿持ち込み行くから」


「のだぁ!編集部なのだぁ!」


「だから今日は別」


「…………」


 真里は数秒黙った。


 そして。


「……別にいいけど」


「ふふっ」


 彩音が笑う。


「何」


「いや」


 彩音、完全にわかっていた。


 真里が拗ねていること。


「最近あんまり一緒に帰ってなかったもんね」


「そ、それは」


 真里が視線を逸らす。


「彼氏できたら仕方ないし」


「うん」


「別に気にしてないし」


「うんうん」


「…………」


 彩音は笑いを堪えていた。


「何その顔!」


「ごめんごめん」


「絶対バカにしてる!」


「してないって」


 だが。


 彩音はちょっと嬉しかった。


 真里は昔からこうだ。


 強気。


 口悪い。


 でも。


 身内には妙に寂しがり。


「のだぁ♡」


 その時。


 レイが近づいてきた。


「彩音〜♡」


「何」


「帰りにキスして良いのだぁ?」


「真里いるから駄目」


「のだぁ!?」


 真里、吹き出す。


「お前らほんとそれ普通に言うようになったな」


「愛なのだっ♡」


「うるさい」


 だが。


 真里はちょっと安心していた。


 彩音。


 最近めちゃくちゃ幸せそうなのだ。


「…………」


 前まで。


 彩音は割と“ちゃんとしなきゃ”タイプだった。


 でも。


 最近は。


 よく笑う。


 よく困る。


 よく赤くなる。


「…………」


 恋愛ってすごいな。


 真里はちょっと思った。


「うむ!」


 レイはカバンを持ち直した。


「では吾輩、未来の大作家になるために旅立つのだぁ♡」


「頑張って」


「彩音ぇぇぇ……」


「だからその呼び方やめてって前も言ったでしょ」


「のだぁ!?」


 真里が爆笑。


「何その怒られ方!」


「最近厳しいのだぁ……」


「当たり前」


 彩音は少し笑いながらレイのマフラーを直した。


「寒いからちゃんと巻いて」


「のだっ♡」


 レイ、嬉しそう。


「彼女優しいのだぁ♡」


「はいはい」


 そのまま。


 レイは手を振りながら去っていった。


「のだぁ〜〜〜♪」


 妙に機嫌が良い。


「…………」


 真里はその背中を見ながら言った。


「ほんと変わったよね、田中君」


「うん」


「前もっと暗かったのに」


「…………」


 彩音は少し黙った。


「最近、毎日楽しそう」


「うん」


「なんか別人みたい」


「…………」


 彩音は少しだけ笑った。


「でも、あれが今の田中君なんだと思う」


「…………」


 真里は少し不思議だった。


 人って。


 こんなに変わるんだなと。


「じゃ、帰ろっか」


「うん」


 冬の夕方。


 二人は並んで歩き始めた。


「…………」


 しばらく歩いて。


 真里がぼそっと言う。


「最近ちょっと寂しかった」


「…………」


 彩音は吹き出しそうになった。


「やっぱり」


「笑うな!!」


「ごめんって!」


「だって最近ずっと彼氏彼氏なんだもん!」


「そんなことないって」


「ある!」


 真里は本気で拗ねていた。


「昼休みもイチャイチャしてるし!」


「してない!」


「してる!」


「してないってば!」


 だが。


 彩音は笑っていた。


 なんだかんだ。


 こうやって真里と帰る時間も好きなのだ。


「…………」


 真里も少し安心していた。


 彼氏ができても。


 彩音はちゃんと彩音のままだった。

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